Appleのメールプライバシー保護機能によるマーケティングメールへの影響

Appleのメールプライバシー保護機能によるマーケティングメールへの影響

インターネット上のプライバシーは、ますます重要視されるようになってきました。多くの企業がインターネットを使用して業務を進め、クラウド上にデータを保存しています。また個人も日々の活動でインターネットを利用することが多いため、インターネット接続が安全であることはこれまで以上に大切です。しかし、検索履歴などが基にされた関連広告が表示されるなど、インターネット上での個人を特定した追跡(トラッキング)が行われているのが現状です。

Apple製品では、顧客のデータが外部に洩れないような対策が継続的にとられてきました。2021年9月には、ユーザーのIPアドレスが識別されないようにするためのメールプライバシー保護機能が導入されました。

メールプライバシー保護機能とは 

メールプライバシー保護機能により、Appleユーザーは、個人情報へのアクセスを許可するアプリを管理できます。メールプライバシー保護機能が適用されると、メール配信者はメールが開封されたかどうかを知ることができなくなります。

メールプライバシー保護機能の仕組み 

メールプライバシー保護機能は、メールに埋め込まれた画像を利用することで、外部のアプリがユーザー情報を収集することを防ぎます。この機能により、ユーザーのIPアドレスが隠されるため、ユーザーによるメールの開封、検索内容、場所などを特定できなくなります。
この機能を利用するには、ユーザーが自身で有効にする必要があります。有効にする場合、[設定][メール][プライバシー保護]を選択し、設定を有効にします。


[“メール”でのアクティビティを保護]の設定が有効な場合のメール受信処理の流れ 

  1. Appleのデバイスにおいて、メール配信が検知されると、メールをデバイスにダウンロードするための事前処理が開始します。
  2. メールは、Appleのサーバー(プロキシーサーバー)経由で配信されます。Appleのサーバーでは、追跡(トラッキング)用の画像を含むメールの内容が事前に読み込まれます。
  3. その際、Apple側ですべての画像のコピー(キャッシュ)が作成され、保存されます。このとき、実際の受信者の代わりにAppleのサーバーでメールの内容がいったん読み込まれます。これにより、実際の受信者のIPアドレスが送信者側に伝わらなくなります。
  4. 一方、追跡(トラッキング)用の画像は読み込まれるため、メール配信に使用されたサービス側ではメールが開封されたと認識されます。
  5. その後、受信者が実際にメールを開封すると、メールの画像のダウンロードが実行されます。画像は配信者のメールサービスからではなく、Appleに保存されたコピー(キャッシュ)から取得されます。
このように、メールプライバシー保護機能が適用されると、マーケティングメール配信者はいつ、どこで、誰がメールを開封したかが分からなくなります。

Appleのメールプライバシー保護機能がマーケティングメールに与える影響 

上記でも触れた通り、この機能が有効になることで、IPアドレスの情報を正確に取得できなくなり、メールの開封率も分からなくなります。その結果、マーケティングメールの配信者にとって、効果測定の指標として開封率の有効性が低下します。

マーケティングメールに及ぶ主な影響は次の通りです。

➤ 開封率の信頼性の低下:メールが実際に開封されたかどうかを正確に確認することができなくなります。これは、実際に受信者がメールを開封したかどうかにかかわらず、Apple側の処理によりメールが開封されたと認識されてしまうためです。測定上では開封数が実際より多くなってしまうので、メール配信の効果を正確に確認できなくなります。
➤ メール配信効果の測定方法の変化:これまでとは異なり、メールの開封率をもとに対象者を絞ってメールを配信することの効果が低くなります。上記でも触れた通り、メールの開封率の信頼性が低下したためですが、それにより以下の点に影響が及びます。
  1. 受信者(連絡先)の分類:メールの開封/未開封に基づいて受信者(連絡先)を分類する効果が低下します。マーケティングメールが実際に開封されたかどうか分からないため、開封情報をもとに有望な受信者を特定できなくなります。今後、見込みを把握するには、メール内のリンクのクリック数やクリック率を使用する必要が出てきます。
  2. メールの配信テスト:2種類のパターンのメールをランダムに一部のユーザーに配信し、反応が良かった方のメールを残りすべてのユーザーに配信するA/Bテストにおいて、開封率が良かった方を使用する効果が低下します。今後、どちらのメールの方が有効性が高いかを測定するテストには、開封率ではなく、メール内のクリック数やクリック率をもとにする必要が出てきます。
  3. 未開封の受信者へのフォローメール:Zoho Campaignsには、メールの開封を基準としてその後の追加メール(フォローメール)を配信する機能があり、未開封の受信者に対して開封を促すメールを追加的に配信することも有効でした。しかし、Appleのメールプライバシー保護を適用している受信者は、実際にメールを開封しているかどうか分からないため、これらの受信者に対して開封を促すメールを配信することの効果が低くなります。
  4. メールの開封に基づく自動メール配信:開封を条件にした自動メール配信やワークフローなどの機能を使用することの有効性が低下します。
➤ 受信メールを開封した時刻や場所などの情報の識別が困難に:Appleのサーバーでメールの内容がいったん読み込まれるため、受信者の場所や開封日時を正確に識別しづらくなります。そのため、受信者を絞り込むためにこういった情報を収集して使用することの効果が低くなります。
➤ 件名をパーソナライズしたメール配信の有効性の低下:これまでは、件名をパーソナライズして開封を促すメールを配信することは、とても効果が高いやり方でした。しかし、メールプライバシー保護機能が導入されると、この方法は有効ではなくなります。今後は、メール本文のリンクをクリックしてもらうようなパーソナライズしたメールを配信する必要があります。

メールプライバシー保護機能による影響の対処法  


Zoho Campaignsの機能を適切に活用することで、メールプライバシー保護機能がマーケティングメールに及ぼす影響を軽減することができます。
軽減するための対処法は以下の通りです。
  1. クリック率の使用:クリック数やクリック率の信頼性は変わらないため、メールの本文に受信者のクリックを促す内容をできるだけ含めます。
  2. クリックに基づいたフォローメールの配信:受信者がメール内でクリックしたリンクをもとに、リンク先のページ内容に応じて興味を引けるようなメールを続けて配信します。
  3. クリックに基づいたメール配信の自動化:自動でのメール配信の設定においても、メールの開封ではなくメール内のリンクのクリックを基準として使用します。たとえば、一定期間クリック操作をしていない受信者に対して自動でメールが配信されるように設定します。なお、自動配信の設定は、ワークフロー機能を通じて行うことができます。
  4. メール配信の有効性を測定するその他の指標の使用:クリック数やクリック率以外にもメールへの返信や電話による問い合わせなどの反応も指標として使用します。
  5. 配信リストの定期的な整理:配信リストは常に有効な連絡先のみが記載されているよう定期的に整理します。配信リストの整理の重要性や効果についてはこちらをご参照ください。
  6. クリック数に基づいたA/Bテストの実行:メール本文のクリック数に基づいたA/Bテストを実行します(本文をクリックしてもらいやすい最適な件名を作成する方法についてはこちらをご参照ください)。
  7. 配信リストに社内の担当者などの連絡先を含める:配信リストに社内の担当者などの連絡先を含め、実際のマーケティングメールの内容(動画やリンクを含む)をできるだけ早く確認し、必要に応じて調整します。
  8. リンク先の確認:クリック率を高めるため、メールを開封した際の動作などを確認し、リンク先などの問題がないか確認します。
  9. クリック率をレポートやダッシュボードに使用:メール配信の有効性を確認するために普段使用しているレポートやダッシュボードに、クリック率を含めます。 

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