AI(人工知能)モデルは、過去のデータに基づいてパターンを認識し、その結果を予測・判断・解釈などに活用できます。通常、AI モデルはさまざまな機械学習アルゴリズムを基に構築されますが、Zoho Creator では、これらのアルゴリズムを直感的な操作画面に統合し、その複雑さを完全に隠すことでプロセスを簡素化しています。これにより、ローコード開発者は、仕組みを意識することなく機械学習を活用できます。
Zoho Creator に AI モデルを適用することで、将来の結果を予測したり、本来は人手が必要な処理を自動化したりして、業務プロセスを最適化できます。たとえば、Zoho Creator 上で構築した CRM アプリケーションでは、現在および過去のデータに基づいて見込み客が成約に至る可能性を AI で予測できます。この分析結果を基に、営業チームは最適なアプローチ方法を検討できます。また、Zoho Creator 上のアンケートアプリケーションでは、AI を使ってフィードバックに含まれる感情を自動的に分析できます。
Zoho Creator では、 5 種類 の、業務アプリケーションで効率的に動作する一般的な機械学習モデルを利用できます。これらのモデルの一部はあらかじめ構築済みで、すぐにアプリケーションへ導入できます。一方、その他のモデルは要件に応じてカスタマイズ可能です。いずれも、機械学習やコーディングの事前知識がなくても利用できます。構築方法に基づき、モデルは次のように分類されます。
Zoho Creator でサポートされているモデルタイプは次のとおりです。
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カテゴリ |
モデルタイプ |
説明 |
入力データタイプ |
ユースケース |
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すぐに使える |
入力から単語やフレーズなどの主要な要素を抽出します |
テキスト |
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入力された文の態度が、ポジティブ・ネガティブ・ニュートラルのいずれかを判定します |
テキスト |
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画像内のすべてのテキストを抽出し、デジタルデータに変換します |
ファイル(画像) |
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入力画像内のあらかじめ定義された要素を検出します |
ファイル(画像) |
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カスタム |
過去データ内のさまざまなパターンを分析し、将来のイベントや結果を予測します |
構造化データ |
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画像内の特定のテキストを抽出し、デジタルデータに変換します |
ファイル(画像) |
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入力画像内の要素を検出します |
ファイル(画像) |
一般的に、AIモデルをデプロイするには、適切な機械学習アルゴリズムに基づいてモデルを構築し、十分な量と品質のデータセットを与えて学習させ、パターンを認識できるようにし、結果の精度を確認するテストを行う必要があります。すぐに使えるAIモデルでは、これらすべての手順が適切に実装されており、Zoho Creatorアプリケーション内でフィールドとしてフォームで利用できます。
しかし、シナリオによっては、特定の要件に合わせてAIモデルを個別に作成する必要があります。このようなニーズに対応するために、Zoho Creator の AI Modeler を使用して、目的に合ったカスタムAIモデルを構築できます。これは、ディープラーニングの概念を直接扱うことなく、簡単にAIモデルを作成できるビルダーと考えることができます。
たとえば、印刷されたレシートの画像がアップロードされたときに、その内容をすべて取得してメールテンプレートに差し込みたいとします。このシナリオでは、特別なカスタマイズは不要で、画像から利用可能なテキストをすべて抽出するだけなので、すぐに使えるOCRモデルを利用できます。次に、毎回同じ形式のレシート画像がアップロードされ、そのうちレシートIDだけを抽出して同じフォームの「Receipt ID」項目に自動入力したいケースを考えます。この場合は、特定のレシートテンプレートに対してモデルを学習させる必要があるため、カスタムOCRモデルを使用することで、この目的を達成できます。
ここでは、AI Modeler が役立ついくつかのビジネスシーンを見ていきます。
ジルカーという配送パートナー企業は、Zoho Creator を使ってチケッティングアプリケーションを構築しています。このアプリケーションを使用して、受信したチケットを追跡し、完璧な カスタマーサービスを提供しています。チケットを受信するたびに、その内容に応じてカテゴリ分けを行い、問い合わせの種類に基づいてタグを追加します。これにより、その分野の担当者が内容を確認し、対応しやすくなります。
Creator のキーワード抽出AIモデルを使うことで、このプロセスを自動化できます。たとえば、チケットに「faulty」「spoiled」「damaged」「defective」「refund」といった単語が含まれている場合、そのチケットに「Return & Refund」というタグを自動で付与できます。同様に、「delayed」「missing」「rude」などの語が含まれている場合は、「Delivery Agent」というタグを付けることができます。これにより、適切なカスタマーサポート担当者をチケットに割り当てられるようになり、チケットのカテゴリ分けにかかる手作業を大幅に削減できます。
ジルカーのデリバリー会社は最近、複数の地域で10分以内の食料品配達サービスを開始しました。このサービスの認知度や、顧客がどのように感じているかを把握するため、Zoho Creator を使って作成したアンケートフォームを配布しました。
アンケート結果が大量に集まった場合、センチメント分析 AI モデルを使うことで、新サービスに対する顧客の意見を全体的に素早く把握できます。たとえば:
ジルカーという加工食品メーカーは、Zoho Creator アプリケーションを使用して社内プロセスを管理しています。研究チームは常に新しいレシピの開発に取り組み、商品化が承認されたレシピの仕様をフォームに更新しています。マーケティングチームはそこから引き継ぎ、市場調査に基づいて販売価格を決定する必要があります。このような場合、カスタム AI 予測モデルを利用することで、類似する競合商品の市場価格、重量、原材料、パッケージ形態などのさまざまな要因に基づいて概算価格を提案させ、価格設定業務を効率化できます。
ジルカーの加工食品メーカーは、Zoho Creator で構築した受注管理アプリケーションを使用して注文を管理しています。同社は多くのバイヤーに商品を一括で納品しており、その証跡として自動生成された受注書を送付しています。すべての受注書は、注文 ID やバイヤー名などの必須情報とともにフォームで管理されています。
受注書の記録を残すこと自体は有効なプロセスですが、手作業で行うと単調で非効率的です。このような場合、カスタム OCR モデルをトレーニングして、ジルカーが発行する受注書のレイアウト専用に動作させることができます。ジルカーの受注書をアップロードすると、注文 ID やバイヤー名などのレイアウト固有の情報を自動的に抽出し、同じフォーム内に保存できるため、時間と手作業を削減できます。
自動車の中古販売会社であるジルカーは、中古車のオンライン売買を行っています。売り手が売却したい車両の情報と画像を入力できるよう、Zoho Creator フォームを自社 Webサイト に埋め込んでいます。本格的な査定を行う前に、カスタム物体検出 AI モデルを使用して、車両の損傷レベルに基づいて申込内容にタグ付けし、カテゴリ分けすることができます。たとえば、へこみが多い車両には「重大な損傷」、へこみが少ない車両には「中程度の損傷」といったタグを自動で付与できます。
アプリケーションで既成のモデルを利用する場合、特別なセットアップは不要です。ただし、 カスタムモデル を追加する場合は、フォームのフィールド としてアプリケーションに追加できるように、次の手順に従う必要があります。
Microservices セクションで、アプリケーションに実装したいカスタムモデルの種類を選択します。選択した AI モデルを、ビジネスニーズに合わせた独自のインテリジェンスで作成できる、シンプルなビルダーが用意されています。
次に、トレーニングデータをアップロードしてモデルをトレーニングします。トレーニングデータとは、モデルにパターンを学習させ、予測や所定のタスクを実行できるようにするために最初に与えるデータセットです。優れた AI モデルの前提は、十分で関連性が高く、高品質なデータを収集してトレーニングに使用することです。データサイエンスで古くから使われている「garbage in, garbage out(入力が粗悪なら出力も粗悪)」というフレーズを念頭に置いてください。低品質なトレーニングデータは、モデルの結果精度を損ないます。トレーニングデータの品質を確保するためのポイントは次のとおりです。
データセットの準備ができたら、アップロードしてモデルをトレーニングします。トレーニングには、モデルサイズやキューにあるモデル数などの要因に応じて時間がかかりますが、その間に別の画面へ移動し、トレーニング完了後に戻ってくることもできます。
トレーニングが正常に完了すると、モデルは実際にデプロイできる状態になります。ただし、その前にモデルのパフォーマンスと品質を評価することが重要です。サンプル入力を与えてモデルをテストし、結果が期待どおりでない場合は、モデルが過学習または学習不足になっている可能性があります。
学習用データに対する精度が低い場合、そのモデルは アンダーフィッティング を起こしています。これは、モデルが入力変数と出力変数の関係性を十分に学習できていないためです。一方、学習用データでは高い精度を示すものの、テストデータでは誤った結果を出力する場合、そのモデルは オーバーフィッティング を起こしています。これは、モデルが学習時に見たデータを暗記してしまい、未知のデータに対して汎用的に対応できていないためです。
言い換えると、アンダーフィットしているモデルは、データのパターンではなく学習データ内のばらつきだけを学習しており、オーバーフィットしているモデルは学習データを丸暗記してしまっているため、他の入力データではうまく機能しません。
オーバーフィッティングとアンダーフィッティングはいずれも、新しいデータに対して精度の低い結果をもたらす原因となります。これを防ぐ鍵は、学習データを適切に正則化することです。つまり、学習データには過度なばらつきがあってもいけませんし、期待される結果にあまりにも近い値ばかりであってもいけません。
各カスタムモデルタイプの精度を向上させる方法については、以下を参照してください。
AI モデルの設定における次の最終ステップは、モデルを公開することです。この時点までは、モデルにアクセスできるのは管理者のみです。モデルの内容に問題がなければ、公開してすべてのユーザーが利用できるようにします。これにより、そのモデルを Zoho Creator アプリケーションに実装できる状態になります。
一度設定した カスタム AI モデル は、いつでも編集、名前の変更、再学習、削除が可能です。 優れた AI モデルは、構築し、高品質なデータを与え、デプロイする必要があります。 しかし、それで終わりではありません。AI モデルの品質を維持することは継続的なプロセスです。時間の経過とともに、ビジネス環境やデータが変化することで、AI モデルには必然的に モデルドリフト が発生します。つまり、モデルの精度が徐々に低下し始めます。たとえば、ある企業の売上は、コロナ禍前とコロナ禍後では異なります。売上予測用に構築された AI モデルは、コロナ禍の影響も考慮して学習させる必要があります。
このため、AI モデルは、トレンドに明らかな変化が見られたとき、または定期的に、最新データを用いてテストおよび再学習することが重要です。 編集、名前の変更、再学習 、および 削除 するためのオプションは、モデル詳細ページに用意されています。このページでは、バージョン情報や、そのモデルがデプロイされているアプリケーションの一覧なども確認できます。
Zoho Creator アプリケーションで AI モデルを利用するには、次のいずれかの方法を使用します。
メモ: 環境が有効になっているアプリケーションでは、本番環境で少なくとも 1 つのバージョンが公開されている場合にのみ、カスタム AI モデルを使用できます。
添付ファイルで提供しているサンプルデータを使用して、カスタム AI モデルの作成を開始しましょう。