AI(Zia)を通じた目標達成要因分析:過去のデータをもとにした目標達成につながる要因の分析
概要
営業活動は、目標から始まります。目標を立てることで、営業活動の内容や組織の方向性を定めることができます。しかし、目標を達成することは簡単なことではありません。
売上、商談受注率、問い合わせの完了率など、部署や目的によってさまざまな目標がありますが、計画した目標を達成できないことも実際には多々あります。
目標を達成できない原因はさまざまですが、主な原因として、目標の計画と目標への取り組みとの相違が挙げられます。
英国の『
The Economist
』の調査によると、計画した目標を達成できなかった原因について、目標への取り組み方に原因があったと認識している経営者は、全体の90%にもおよぶことが明らかになりました。
では、目標の計画と目標への取り組みとの相違はどうして生まれるのでしょうか。通常、目標を設定するのは経営者やマネージャーといった人たちです。それに対して、目標に取り組むのは営業担当者や現場担当者などの人たちです。これらの人たちの間で業務内容や方針に関して認識に相違がある場合、目標の計画と目標への取り組みにも相違が生じてしまいます。このため、目標を達成するためには、この相違をなくす必要があります。
そこで重要となるのが、
データ
です。
たとえば、商談の受注件数に関する目標を設定したいとします。この場合、商談を受注するために対応すべき見込み客数、各チーム/担当者が対応すべき見込み客数、商談の規模に応じた優先度など、実際の業務に基づいたデータが重要になります。
実際の業務に関する過去のデータに基づいて目標の妥当性を確認することで、営業チームや担当者と認識をすり合わせながら目標を設定することができます。設定された目標と実際の取り組みとの乖離を少なくし、目標を達成しやすくすることが可能です。
このような場合に、目標達成要因分析の機能が役立ちます。
AI(Zia)を通じた目標達成要因分析
Zoho CRMの
目標達成要因分析
の機能では、目標に関するさまざまな分析データをダッシュボード上で確認することができます。分析データは、ZohoのAIアシスタント機能である「Zia」を通じて過去のデータをもとに出力されます。分析データをもとに多角的に目標を設定することで、目標の妥当性を高め、目標を達成しやすくすることが可能です。
目標達成要因分析の機能を利用するメリットは、以下のとおりです。
-
目標達成のために必要な活動と実際の活動との乖離を少なくすることができます。
-
算出されるデータをもとに、営業チームや担当者と共通認識を形成しながら目標を設定できます。
-
目標の達成状況に影響を与える要因を特定できます。
-
ZohoのAIアシスタント機能である「Zia」を通じて、過去のデータをもとにして今後の見通しを立てることができます。
-
目標達成に必要な業務や取り組みについて、Ziaによる提案を確認できます。
-
要件に合わせて目標達成要因分析の設定をカスタマイズできます。
-
予実差異(目標と実績の間に生じた差異、目標に対する不足分)を日次、週次で把握し、原因を分析できます。
-
長期的な目標を見据えた上での日ごとの目標や実績、修正が必要な部分などを確認できます。
目標達成要因分析の設定後、過去のデータをもとに目標に関する分析データが出力されます。これらのデータをもとに、目標達成に向けた取り組み内容について計画することが可能です。
利用条件
Ziaを通じた目標達成要因分析は、エンタープライズプランまたはアルティメットプランを利用中であり、かつ20人分を超えるユーザーライセンスを購入している組織でのみ利用できます。
Ziaを通じた目標達成要因分析と売上予測との違い
Zoho CRMの売上予測は、[商談]タブのデータをもとに売上に関する目標を設定し、達成度の把握や予測を行う機能です。組織全体の売上目標を分解して、役職や担当者(ユーザー)ごとに売上目標を割り当てることができます。売上予測は、売上目標の管理に特化した機能です。また、対象期間については、手動で設定する必要があります。売上予測に関する詳細については、
こちら
をご参照ください。
一方、Ziaを通じた目標達成要因分析は、さまざまな種類のデータにおける目標の分析/予測を行う機能です。売上に関する目標の分析/予測だけでなく、見込み客の獲得、納品や請求の完了率、顧客の解約率など、さまざまなデータに関する目標を分析/予測することも可能です。これらの目標の分析/予測データは、Zoho CRMに保存されているデータをもとに算出されます。
そのため、売上目標の管理を主に行う場合は売上予測機能を利用し、さまざまなデータに関する目標を分析/予測する場合は目標達成要因分析の機能を利用することをおすすめします。
目標達成要因分析の利用例
上記のとおり、Zia目標達成要因分析では、さまざまな種類のデータにおける目標の分析/予測を行うことができます。以下では、目標達成要因分析の利用例について説明します。
四半期ごとの営業売上の予測/対応
過去の経験や実績から売上を大まかに予測すること自体は可能です。しかし、移り変わりが激しい昨今において、それだけでは予測の精度は高まりません。そこで、Ziaを通じた目標達成要因分析の機能を利用することで、過去のデータやAIによる分析をもとに、予測の精度を高めることが可能です。データをもとに多角的に分析したうえで目標を設定することで、目標達成の見込みを高めることが可能です。
以下の画像は、ある四半期における売上目標について、Ziaが算出したデータの例です。このデータを算出するにあたって、Ziaは以下の内容を実施します。
-
売上に関連するすべての要因や項目を抽出します(商談の完了予定日、請求書の期限、請求額、割引額、請求商品など)。
-
現在の状況に応じて、各要因の実績値を参照します。
-
各要因における実績値と期待値を比較します。
予約件数の予測
旅行代理店を例に説明します。旅行代理店の場合、時期によって売上が大きく変化します。そのため、さまざまな要因をもとに予約の動向を予測し、目標を設定することが重要になります。以下の画像は、予約件数に関する目標について、Ziaが算出したデータです。このデータを算出するにあたって、Ziaは以下の内容を実施します。
-
Zoho CRMに登録されている予約データを詳細に分析します。
-
予約に関連する要因をすべて抽出します(現在の予約件数、前年の予約件数、問い合わせ数、仮予約件数など)。
-
各要因における実績値と期待値を比較します。
メモ:
-
目標達成要因分析のダッシュボードは、すべての
標準タブ
、
カスタムタブ
に対応しています。
-
Ziaが目標のデータを分析するには 1年以上の期間にわたるデータが必要です。また、データの件数としては、5,000件以上が必要です。
- 最初の15日間に設定可能な目標達成要因分析は、3件です。その後は、既存の3件の分析を再学習させるか、新たに3件の分析を生成するかを選択できます。組織ごとに最大で6件の目標達成要因分析を設定可能です。なお、再学習は作成から15日経過した後にのみ実施できます。
- 目標達成要因分析をさらに設定したい場合は、
support@zohocrm.com
にお問い合わせください。
目標達成要因分析に関する設定
目標達成要因分析を設定する際には、以下の内容を指定する必要があります。指定された内容をもとにZiaが学習し、目標に関するデータを分析/出力します。
-
タブと指標:
分析対象となるタブ(データの種類)と指標を指定します。たとえば、次のように指定します。
-
商談の件数について分析する場合、[商談]タブを選択し、商談の件数を指標として選択します。この場合、商談の合計額や平均額などの他の指標は、データの分析時に考慮されなくなります。
-
商談の合計額について分析する場合、[商談]タブを選択し、商談の総額を指標として選択します。
-
関連付ける日付項目:
目標に関連する日付のデータが保存されている項目を指定します。たとえば、売上に関する目標のデータを求める場合、商談の完了予定日を指定します。
-
数値の増減の解釈方法
:指標として設定した項目の数値の増減について、プラスの意味を持つかマイナスの意味を持つか(数値が増えることが良いか悪いか)、解釈の方法を指定できます。
目標達成要因分析での分析要素
目標達成要因分析のダッシュボードでは、以下の要素を確認できます。
-
目標達成の要因:
目標達成要因分析のダッシュボードで最も重要な要素です。目標の概要、目標の達成に影響を与える要因、各要因の実績値と期待値が表示されます。
-
異常検出:
こちらには、[目標達成の要因]で識別されたすべての要因について、異常値として検出された値が表示されます。
-
不足(予実差異)の分析:
予測と実績の間に差異が生じた日はいつであったかを確認できます。また、差異が生じた原因を分析できます。
-
対策の検討:
対象期間の目標を達成するために行うべきことを日ごとに確認できます。その日の目標を達成できなかった場合には、生じた差異を埋めるのに役立つ提案を確認し、参考にすることもできます。
-
上位の要因
:こちらには、[目標達成の要因]で識別されたすべての要因のうち、貢献度/関連性の高い上位4件の選択リスト項目が表示されます。
目標達成の要因
こちらでは、目標の達成状況に影響を与える要因や、各要因における実績値と期待値を確認することができます。設定内容に応じて予測された期待値が、要因ごとに表示されます。
こちらで確認可能な内容は、以下のとおりです。
-
予測された目標の概要
:予測された目標の合計値を表します。
-
影響要因
:目標の達成につながる要因を表します。
-
各要因の実績値
:各要因において達成した現在の値を表します。
-
各要因の期待値
:各要因において予測された期待値を表します。
-
期間:
目標の対象期間を表します。
また、こちらには、各要因が目標の達成に向けてどのような影響を与えているかを、アイコンで確認できます(プラスの影響を与えているかマイナスの影響を与えているか)。
-
アイコンが緑で上向きの場合、目標達成に向けて対象の要因がプラス(良い方)に作用していることを表します。
-
アイコンが赤で下向きの場合、目標達成に向けて対象の要因がマイナス(悪い方)に作用していることを表します。
Ziaによる目標の予測方法
Ziaを通じた目標達成要因分析の設定を行うと、目標の達成に影響を与える各要因が検出され、対象のタブ内における既存のデータの実績値が出力されます。設定内容をもとに各要因の実績値が比較/検証され、最適な目標値が予測されます。さまざまな種類のデータにおける目標の分析/予測を行うことが可能です。
影響要因の識別方法
影響要因とは、目標の達成状況に影響を与える要因を表します。具体的に言えば、目標達成に向けて取り組むにあたって、プラス(良い方)またはマイナス(悪い方)に影響を与える実際の業務や対応を指します。
たとえば、影響要因として「見込み客の変換」(見込み客からの商談化など、次のステップへ進める処理)があり、期待値が「5件」だとします。対象期間において5件以上の見込み客データを変換し、この期待値を達成すると、目標に達成する可能性が高まります。つまり、それぞれの影響要因の期待値を達成するように取り組むことで、結果として目標を達成する可能性を高めることができます。
目標達成要因分析の設定後、分析対象のタブに関連するデータや項目をもとに影響要因が識別され、その期待値が出力されます。出力された期待値と実績値を比較することで、目標の進捗状況を把握することが可能です。
以下、例をもとに説明します。
上記の画像は、Ziaにより出力された1週間における商談の合計額に関する目標のデータです。目標額は「
USD 2,234,583.58
」であり、影響要因の欄には目標の達成につながる要因がすべて表示されています。これらの影響要因は、Zoho CRMに登録されているデータをもとに識別されます。
以下の影響要因を例に、その内訳を説明します。
Count of Deals with Amount in the range $84,351.75 - $99,709.00 and Closing Date is this week(金額の範囲が$84,351.75から$99,709.00の商談件数であり、完了予定日が今週)
メモ
:この目標達成要因分析の設定では、分析対象となるタブは[商談]、項目は[総額]として指定されています。また、数値の増減の解釈方法として、項目の数値が増加するとプラス(良い方)に作用すると解釈するよう指定されています。
この影響要因の内訳は以下のとおりです。
-
商談件数
は、[商談]タブのデータ数です。
-
金額
は、[請求書]タブ内の項目です(種類=通貨)。
-
完了予定日
は、[商談]タブ内の項目です(種類=日付)。
上記の例において、Ziaにより出力された商談の受注件数の期待値は48件です。この期待値を達成すると、商談の合計額に関する目標額(USD 2,234,583.58)に達成する可能性を高めることができます。
同様に、Zoho CRMに登録されているデータをもとにさまざまな影響要因が識別されます。
目標、期待値、要因の調整
目標に関する値を出力するにあたって、Ziaは、Zoho CRMに保存されている過去2年間分のデータを使用します。出力された値を変更したい場合、手動で調整することができます。また、影響要因を手動で選択/選択解除することも可能です。
異常検出
[目標達成の要因]では、目標の達成に影響を与える各種要因が識別されます。それぞれの影響要因の期待値を達成すると、目標を達成する可能性が高まります。影響要因の実績値が期待値を上回る/下回るなどして、実績値が期待値に一致しない場合、これらの影響要因は異常値として分類されます。異常値として分類された影響要因は、[異常検出]から確認することができます。
[異常検出]では、以下の2種類のデータを確認することが可能です。
-
期待値を下回った要因:
実績値が期待値を下回った影響要因が表示されます。
-
期待値を上回った要因:
実績値が期待値を上回った影響要因が表示されます。
異常値として検出された影響要因の一覧には、期待値、実績値、目標への影響などの詳細情報が表示されます。また、フィルターを適用して特定の期間における異常値を確認することもできます。これらのデータをもとに、目標達成の阻害要因を確認したり、期待値を上回った要因を確認したりすることが可能です。
メモ:
指定した期間において、すべての影響要因において実績値が期待値を上回り、かつ目標の合計値を達成した場合、[異常検出]には異常値は表示されません。
不足(予実差異)の分析
予実差異の分析では、特定の日、週、月に予測と実績の間に生じた差異を分析できます。[不足の理由]の欄では、特定の期間に差異が生じた原因についての詳細を確認できます。どのようなタイミングでどのような差異が生じたかを詳細に分析できます。
対策の検討
対策の検討の機能を利用すると、目標に対して予測と実績がどれほどであるかを分析できます。また、日々の目標に対する不足が生じている場合には、最終的な目標を達成するためにどのような修正が必要かを把握することが可能です。
[上位の要因]では、[目標達成の要因]で識別されたすべての要因のうち、貢献度/関連性の高い上位4件の要因(選択リストの項目)を確認できます。各要因の実績値や期待値を確認したり、期間のフィルターを適用したりすることも可能です。目標達成の影響度が大きい要因を把握するのに役立ちます。