Zoho CRMでCPQ(見積支援ツール)を利用すると、Zoho CRMでの見積書作成業務に自動処理を取り入れ、業務を効率化できます。「Zylkerファッション」という衣料品販売会社を例に見てみましょう。この会社では、顧客管理ツールとしてZoho CRMを利用しています。見積書の作成時に細かな条件を適切に反映できるようにする他、毎年恒例の在庫一掃セールでの値引きやプレゼントキャンペーンなどの特別なイベントの際にも見積書をすばやく正確に作成できるように、Zoho CRMのCPQ機能を利用することにしました。 この会社では、CPQの機能を活用して、以下のような処理を実行します。
たとえば、ある時計販売店では、20,000円の壁掛け時計を購入した顧客に対し、2,000円の腕時計を無料でプレゼントしています。そのため、CPQの価格設定で、見積書に対象の壁掛け時計を追加すると対象の腕時計が0円の商品として自動で追加されるよう設定することにしました(対象の腕時計は単品で販売する場合、2,000円の商品として処理されます)。この場合の設定手順は以下のとおりです。
手順3:[この商品を無料に設定する]を選択し、値を「0」または「無料」に設定する項目を選択します。
手順4:[完了する]をクリックし、設定を保存します。
メモ:
1. 無料に設定する商品に対して、商品設定に加えて価格ルールも適用されている場合には、商品設定は価格ルールによって上書きされ、商品が無料として処理されない可能性があります。上記の例の場合、対象の腕時計に対して腕時計1個を1,800円とする価格ルールが設定されている場合、商品設定は価格ルールによって上書きされ、腕時計は無料ではなく1,800円の商品として処理されます。
2. 商品を無料にするための設定画面には、処理の設定欄で[付属商品を追加する]をクリックする他、[見積商品の項目の更新]をクリックすることによってもアクセス可能です。
付属商品の自動追加
見積支援ツールでは、ある商品(基準商品)が見積書に追加されたら、その商品に付随する別の商品(付属商品)を自動で追加するよう設定できます。たとえば、ノートPC1台に対して、付属のスタンド1台を必ず一緒に販売しているとします。
この場合、付属商品の自動追加を設定しておくと、見積書にノートPC(基準商品)10台を追加すると、スタンド(付属商品)10台も自動で追加されます。
このように、付属商品の自動追加機能では、見積書に基準商品が追加されたら、設定した数の付属商品を自動で追加することが可能です。
この際、付属商品をいくつ追加するかはあらかじめ指定可能です。たとえば、基準商品がいくつであっても付属商品は1個のみ追加する、あるいは、基準商品1個ごとに付属商品を2個追加する、といった設定が可能です。
付属商品が自動で追加されるようにするには、設定アイコン→[Zoho CPQ]→[商品設定]に移動し、[商品設定を作成]をクリックします。
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商品設定の作成ページで基準商品を選択します(例:ノートPC スリムブラック)
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[処理を設定]をクリックし、付属商品を追加するためのメニューを選択します。表示された画面で付属商品を選択します(例:ノートPC用スタンド S405)。
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[次へ]をクリックします。
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値の設定
ページで左辺の選択リストから
[数量]
を選択します。
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数量としては、固定値または見積商品に応じた動的な値のいずれかを適用できます。
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固定値を指定すると、基準商品がいくつ追加されたとしても、付属商品は指定した数だけ追加されます(例:固定値を「1」として設定すると、基準商品が1個であっても10個であっても付属商品は1個のみ追加されます)。
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基準商品に応じて付属商品の数量を動的に変更したい場合、
[見積商品から]
を選択し、
[設定する]
をクリックします。計算式の設定画面で、[基準商品]を選択し、[数量]を選択します。[*](乗算記号)の右側では、基準商品の数量の何倍の数の付属商品を追加するかを設定します。[固定]を選択すると固定値を、[項目]を選択すると項目に保存されている値を掛けることができます。設定が完了したら、
[完了する]
をクリックします。
上の例(画像)では、「ノートPCの数量×1(固定値)」という式を設定することにより、ノートPC1台に対して1台のスタンドが追加されるようにしています。この場合、ノートPCが10台追加されたら、スタンドも10台追加されます。ノートPC1台ごとに2台のスタンドを追加したい場合は、値を「2」として設定します。この場合、ノートPCが10台追加されると、スタンドは20台追加されます。このようにして、基準商品の数量に付属商品の数量を比例させることができます。なお、式の演算記号としては[*](乗算記号)の他、[+](加算記号)や[/](除算記号)を指定することもできます。
なお、関数によって金額の出力値を整えることができます。[Ceil(上限)]は値の小数点以下を切り上げ、[Floor(下限)]は切り下げます。[Abs(絶対値)]は、値の絶対値を出力します。
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[完了する]
をクリックし、設定を
保存
します。
計算式の設定例
基準商品を壁掛け時計、付属商品を乾電池とする場合の計算式を考えてみましょう。
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[基準商品]を選択します。例:[壁掛け時計]
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基準商品の右側にある選択リストで、基準商品のどの項目の数値に対して演算を行うかを選択します。例:[数量]
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演算記号を選択します。例:[*](乗算記号)
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乗算の場合は掛ける数、加算の場合は足す数、除算の場合は割る数を指定します。
例:すべての壁掛け時計に乾電池が2個必要である場合、演算記号は[*](乗算記号)、掛ける数としては固定値「2」を指定します。この場合、壁掛け時計を4個追加すると、乾電池は8(4×2)個追加されます。
必要な乾電池の数が壁掛け時計ごとに異なる場合、[固定]ではなく、[見積商品から]を選択します。これにより、基準商品のカスタム項目に保存されている値を掛けることができます。たとえば、[見積商品から]を選択し、[使用電池数]というカスタム項目を指定すると、[使用電池数]の値を壁掛け時計の数量に掛けることができます。
以下で、掛ける数に固定値を使用する場合と、カスタム項目の値を使用する場合の違いをより詳しく見てみましょう。
掛ける数(乗数)に固定値を使用する場合:
すべての壁掛け時計に対して乾電池を2個追加したいとします。
この場合、乾電池(付属商品)の数量を計算する式では、[壁掛け時計]の[数量]に、固定値[2]を掛けます。
この場合、壁掛け時計を4個追加すると、乾電池は8個追加されます(壁掛け時計の数量×固定値2=乾電池の個数)。
掛ける数(乗数)にカスタム項目の値を使用する場合:
基準商品ごとに付属商品の数量が異なる場合は、計算にカスタム項目の値を使用します。たとえば、基準商品を腕時計、付属商品を時計ケースとする場合を考えてみます。ほとんどの場合、1つの商品(腕時計)に対して必要な時計ケースは1つです。しかし、カップル向けのペア時計の場合は、1つの商品に対して時計ケースは2つ必要です。また、3本セットの時計の場合、1つの商品に対して時計ケースは3つ必要です。このような場合、基準商品のデータに[1商品あたりのケース数]というカスタム項目を用意しておき、単品の時計なら「1」、ペア時計なら「2」、3本セットの時計なら「3」というように値を保存しておきます。
これにより、基準商品の数量にカスタム項目の値を掛けて、付属商品(ケース)の個数を算出することが可能です。たとえば、3本セットの時計を5セット追加すると、ケースは15個追加されます。この場合の計算式は、5(基準商品の数量)×3(カスタム項目[1商品あたりのケース数]の値)=15(ケースの総数)です。
以上のように、付属商品の数量の計算式は、商品の販売方法などに応じて柔軟に設定することが可能です。
メモ:
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付属商品の自動追加は、商品設定を通じて基準商品の追加処理が行われた場合にも実行されます。
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計算式に使用するカスタム項目の種類は、数値、小数、パーセント(割合)のいずれかである必要があります。
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付属商品の自動追加は、計算式で基準商品を指定しない場合、実行されません。基準商品を指定した場合にのみ処理が正常に実行されます。
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現時点では、同じ基準商品が見積商品の複数の行に追加された場合、付属商品の自動追加は最初の行に対してのみ実行されます。
たとえば、「ジルカー壁掛け時計」という同じ基準商品を3行分追加し、各行の[詳細情報]の欄に[青]、[黒]、[グレー]と入力することで時計の色を区別しているとします。この場合、付属商品の自動追加は最初の行の基準商品に対してのみ実行され、残りの2行では実行されません。
すべての基準商品に対して付属商品の自動追加が必ず実行されるようにするには、同じ基準商品を複数の行に追加しないようにする必要があります。
価格ルール
CPQの価格ルールを使用すると、購入時期や条件によって価格が変動する場合にも柔軟な対応が可能です。たとえば、商品Aの通常価格はX円ですが、従業員からの紹介で購入した場合は10%の割引が適用されるとします。CPQの価格ルールを使用すると、このような値引き処理を自動で行い、見積書に反映できます。
価格計算の基準としては、割引率/割引額/掛け率/販売価格のいずれかを指定します。また、価格計算の基準には、固定値だけでなく、購入数に応じた変動値を適用することも可能です。
以上の内容をあらためて分かりやすくまとめると、価格計算の方法としては以下のいずれかを選択できます。
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固定
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固定の割引率/割引額
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固定の掛け率/販売価格
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数量基準(変動)
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数量に応じた割引率/割引額
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数量に応じた掛け率/販売価格
以下では、上記の価格計算の各方法について例を用いてご紹介します。ある商品の通常価格が10,000円だった場合、商品の価格は以下のように処理されます。
固定
商品に対して、固定の割引率や割引額を設定できます。また、固定の掛け率や販売価格を設定することも可能です。割引率/割引額/掛け率/販売価格の値には、購入数に関係なく常に一定の固定値が適用されます。
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固定の割引率/割引額:固定の割引率または割引額を設定できます。たとえば、割引率を10%として設定すると、10,000円の商品の価格は9,000円に変更されます。
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固定の掛け率/販売価格:固定の掛け率または販売価格を設定できます。たとえば、固定の掛け率を90%として設定すると、10,000円の商品の価格は9,000円に変更されます。
数量基準(変動)
購入数に基づいて、割引率/割引額/掛け率/販売価格を動的に変更できます。これにより、商品をたくさん購入した顧客に対しては、割引率を引き上げるといった設定が可能です。
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数量に応じた割引率/割引額
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商品を1~10個注文した場合 :10%の割引率が適用され、10,000円の商品の価格は9,000円に変更されます。
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商品を11~20個注文した場合:20%の割引率が適用され、10,000円の商品の価格は8,000円に変更されます。
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商品を21~30個注文した場合:30%の割引率が適用され、10,000円の商品の価格は7,000円に変更されます。
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数量に応じた掛け率/販売価格
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商品を1~10個を注文した場合 :90%の掛け率が適用され、10,000円の商品は9,000円に変更されます。
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商品を11~20個を注文した場合:80%の掛け率が適用され、10,000円の商品は8,000円に変更されます。
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商品を21~30個を注文した場合:70%の掛け率が適用され、10,000円の商品は7,000円に変更されます。
数量に応じた価格計算の例を表にまとめると以下のようになります。左列は購入数、右列はルール適用後の商品の価格を示しています。
1~10個
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9,000円
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11~20個
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8,000円
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21~30個
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7,000円
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なお、数量に応じた価格計算では、計算基準を一律または単位ごとに設定できます。
また、上述のとおり、価格ルールには、割引率/割引額/掛け率/販売価格のいずれかを指定できます。以下では、割引の計算に割引率を指定する場合と割引額を指定する場合の違いについてご説明します。また、販売価格の計算に掛け率を指定する場合と販売価格を直接指定する場合の違いについても、それぞれ例を用いてご説明します。
割引率を指定する場合と割引額を指定する場合の違い
割引率を指定する場合
通常販売価格から何%の値引きを行うかを指定します。たとえば、割引率を10%に指定したとします。
商品価格が10,000円の場合、割引後の価格は9,000円です
(10,000-10,000×0.1=9,000)。
商品価格が50,000円の場合、割引後の価格は45,000円です
(50,000-50,000×0.1=45,000)。
割引額を指定する場合
通常販売価格から値引きしたい額の絶対値を指定します。たとえば、割引額を1,000円に指定したとします。
商品価格が10,000円の場合、割引後の価格は9,000円です(10,000-1,000=9,000)。
商品価格が50,000円の場合、割引後の価格は49,000円です(50,000-1,000=49,000)。
計算基準の数値を割引率として指定する場合と割引額として指定する場合では計算結果が変わります。そのため、計算基準を指定する際は、割引率と割引額のどちらを指定しているかをよく確認する必要があります。
掛け率を指定する場合と販売価格を指定する場合の違い
掛け率を指定する場合
商品の通常販売価格に何%を掛けて価格を計算するかを指定します。たとえば、掛け率を90%として指定したとします。
商品価格が10,000円の場合、計算後の価格は9,000円です(10,000×0.9=9,000)。
商品価格が50,000円の場合、計算後の価格は45,000円です(50,000×0.9=45,000)。
販売価格を指定する場合
販売価格を指定すると、指定した値がそのまま商品の価格として見積書に反映されます。たとえば、通常販売価格が10,000円の商品に対して、販売価格を8,000円として指定した場合、見積書における商品の価格は8,000円となります。
以上が、価格ルールの設定に関する説明です。価格ルールを設定しておくことで、条件に応じてさまざまな価格計算を自動で行うことが可能です。割引率/割引額/掛け率/販売価格を、固定値として、または販売数に応じて変動する値として設定することができます。
カスタムタブ、独自のサブフォームにおけるCPQの設定
商品設定や価格ルールは、Zoho CRMの標準タブや標準サブフォームだけでなく、カスタムタブや独自のサブフォームにおいても設定できます(ただし、タブにサブフォームがあり、かつサブフォームにルックアップ項目がある場合のみ、設定可能です)。 これには、ルールの設定画面で、対象のタブ、サブフォーム、ルックアップ項目を選択します。
例1(標準サブフォーム):
Zoho CRMの標準タブである[見積書]タブで見積書を管理している場合、[見積書]タブ内の標準サブフォーム[見積商品]に対して、商品設定や価格ルールを設定できます。
標準タブ内の標準サブフォームに対して商品設定や価格ルールを設定する場合
例2(独自のサブフォーム):
商品設定や価格ルールは、カスタムタブや標準タブにある独自のサブフォームに対しても設定できます。
a) カスタムタブ内の独自のサブフォーム:
たとえば、「見積書」という名前のカスタムタブで、メインの商品は標準のサブフォーム[見積商品]で管理し、サブの商品(付属品、交換用部品、保証サービスなど)は独自のサブフォーム[関連商品/サービス]で管理しているとします。ここで、独自のサブフォーム[関連商品/サービス]内の商品に対して、商品の自動追加、自動提案、自動値引きなどの処理を適用したい場合、この場合、対象タブを[見積書](カスタムタブ)、対象サブフォームを[関連商品/サービス](独自のサブフォーム)として、商品設定や価格ルールを設定します。
カスタムタブ内の独自のサブフォームに対して商品設定や価格ルールを設定する場合
b) 標準タブ内の独自のサブフォーム:
商談データに、顧客への提案商品の一覧を追加し、この一覧に対してCPQによる商品の自動追加、自動提案、自動値引きなどの処理を適用したいとします。この場合、まず、Zoho CRMの[商談]タブ(標準タブ)に、「提案商品」という名前の独自のサブフォームを追加します。この際、サブフォームではルックアップ項目[商品名]を通じて商品の名前、価格などを登録できるようにしておきます。次に、対象タブを[商談]タブ(標準タブ)、対象サブフォームを[提案商品](独自のサブフォーム)として、商品設定や価格ルールを設定します。
例3(各種書類タブ内の標準サブフォーム/独自のサブフォーム):
[請求書]、[受注書]、[発注書]の各標準タブ内のサブフォーム(標準/独自)に対しても商品設定や価格ルールを設定できます。このような各種書類タブにおいて商品の自動追加、自動提案、自動値引きの処理を適用することで、各種書類の作成業務を効率化できます。
メモ:
- 各種書類タブ(標準タブ)内で標準サブフォーム[見積商品]、[請求商品]、[受注商品]、[発注商品]を使用している場合、商品設定や価格ルールの対象のルックアップ項目としては、システムによってあらかじめ用意されている必須のルックアップ項目[商品名]のみを指定できます。また、これに加えて、以下の条件も満たしている必要があります。
- 設定するユーザーに、[商品]タブへのアクセス権限が許可されている。
- Zoho CRMの組織アカウントにおいて[商品]タブが有効な状態になっている
(タブ内にデータが登録されている状態である)。
- 各種書類タブ(標準タブ)内で独自のサブフォームを使用している場合は、独自のサブフォーム内の任意のルックアップ項目に対して商品設定や価格ルールを設定できます(ただし、必要な権限があり、かつサブフォーム内にルックアップ項目がある場合に限ります)。
CPQの利用例に関する資料
以下のスライド資料では、小売業、製造業、保険業、教育業などの業種についてCPQの利用例をご紹介しています。ぜひご参照ください。