営業データは多くの場合、相互に関連しています。Zoho CRMでこのようなデータを管理する場合、複数選択ルックアップ項目を使用すると、データ同士を適切かつ柔軟に関連付けて管理できます。
複数選択ルックアップ項目は、エンタープライズプラン以上で利用できます。
Zoho CRMのルックアップ項目には、通常のルックアップ項目(単一選択ルックアップ項目)と複数選択ルックアップ項目の2種類があります。通常のルックアップ項目では、一対一または一対多のデータの関連付けが可能です。たとえば、1件の取引先を1件の連絡先に関連付ける場合、Zoho CRMの連絡先タブに標準で用意されている[取引先名]のルックアップ項目を使用すれば、簡単に関連付けることができます。
また、1件の取引先を複数の連絡先に関連付ける場合でも同様に、標準の[取引先名]のルックアップ項目を通じて関連付けが可能です。関連付けるすべての連絡先のデータにおいて、[取引先名]のルックアップ項目で同じ取引先を選択すれば、該当の1件の取引先に対してすべての連絡先が関連付けられます。これにより、一対多の関連付けを設定できます。
ただし、通常のルックアップ項目で選択可能な値は1件のみのため、要件を満たせない場合があります。
ここで、ある連絡先が、2件の取引先に所属している場合を見てみましょう(たとえば、副業などで複数の企業で勤務している場合など)。この場合、1件の連絡先に対して、2件の取引先を関連付ける必要があります。ところが、標準の[取引先名]のルックアップ項目では、値を1件しか選択できません。1件の連絡先に対して関連付けることができる取引先は1件のみであり、要件を満たすことができません。
そこで、複数選択ルックアップ項目が役立ちます。複数選択ルックアップ項目では、1つのルックアップ項目の中で複数の値を選択できます。上記の例では、連絡先タブにおいて、取引先を関連付けるための複数選択ルックアップ項目を追加すると、1件の連絡先に対して複数の取引先を選択して関連付けることが可能になります。逆も同様に可能なため、多対多の関連付けを設定できます。
項目の種類
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選択可能な値の数
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関連付けの種類
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ルックアップ項目 (単一選択ルックアップ項目)
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1件
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一対多
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複数選択ルックアップ項目
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複数
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多対多
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以下は、多対多のタブの関連付けの設定が必要となる利用例です。
- ある教育機関では、Zoho CRMで[受講者]と[コース]のデータを管理しています。
1人の受講者が、複数のコースを受講します。また、1つのコースを、複数の受講者が受講する場合があります。
- ある保険会社では、Zoho CRMで[保険の種類]と[保険の契約者]のデータを管理しています。
1つの種類の保険について、複数の契約者がいます。また、1人の契約者が、複数の種類の保険を契約している場合があります。
- ある不動産会社では、Zoho CRMで[見込み客]と[物件]のデータを管理しています。
1人の見込み客が、複数の物件に興味を持っている可能性があります。また、1件の物件に、複数の見込み客が興味を持っている場合があります。
上記のような場合に、複数選択ルックアップ項目を利用すると、データの関連付けを適切に管理できます。3つ目の利用例を詳しく見てみましょう。
利用例
ある不動産会社では、賃貸物件を管理しています。同社のZoho CRMには、[物件]と[見込み客]の2つのタブがあります。
- 見込み客の1人である谷村様は、3件の物件(物件番号:C-807、B-196、H-786)の内見に興味を持っています。
- 谷村様のほかに、3人の見込み客(梅原様、笠井様、西沢様)が、同じ物件(C-807)の内見に興味を持っています。
上記の情報をZoho CRMで管理するには、谷村様の見込み客データの作成時に、興味を持っている物件として、3件の物件の値を選択する必要があります。また、物件データ「C-807」には、4人の見込み客を関連付ける必要があります。したがって、ルックアップ項目で複数の値を選択する必要があります。しかし、通常のルックアップ項目では、1件の値しか選択できません。
解決策:
このような場合に、複数選択ルックアップ項目が役立ちます。以下で、作成手順を見てみましょう。
複数選択ルックアップ項目の作成方法
複数選択ルックアップ項目を作成するには
- [設定]→[カスタマイズ]→[タブと項目]の順に移動します。
- タブの一覧から対象のタブ(上記の例の場合は[見込み客])をクリックし、レイアウトの一覧から対象のレイアウトを選択します。
- レイアウトの編集画面で、左側の[新しい項目]の一覧から[複数選択ルックアップ]項目を選択し、ドラッグ&ドロップでレイアウトに追加します。
タブごとに最大2件の複数選択ルックアップ項目を追加できます。
- 複数選択ルックアップの詳細画面で、下図のように詳細を入力します(項目名、参照先のタブ、参照先のタブでの項目名など)。
なお、自己参照の複数選択ルックアップ項目を作成する場合は、[参照先のタブを選択]で同じタブ(この例では[見込み客])を選択します(関連項目:自己参照の複数選択ルックアップ項目)。
- データの関連付けに関する付随情報や詳細情報を管理するための関連付けタブが必要な場合は、[関連付け情報を保存するタブを作成する]チェックボックスを有効にして、関連付けタブ名を入力します(この例では「見込み客と物件」など)。
- [完了する]をクリックします。
- レイアウトを保存します。
これで、複数選択ルックアップ項目が作成されます。上記の例では、見込み客タブに、[興味のある物件]という名前の複数選択ルックアップ項目を作成したとします。これにより、見込み客データを作成する際に、複数の物件データを関連付けることができます。
複数選択ルックアップ項目で選択した値は、値に対応するデータに関連付けられ、各データの詳細ページに関連リストに表示されます。
メモ
- [複数選択ルックアップの詳細]画面で、[参照先のタブを選択]の一覧に、選択対象のタブが表示されない場合は、該当のタブに作成した複数選択ルックアップ項目数がすでに上限に達している可能性があります。
- 1つのタブに作成可能な複数選択ルックアップ項目数の上限は、2件です。
- また、参照先のタブに複数のレイアウトがある場合、複数選択ルックアップ項目を追加するレイアウトを選択するよう求められます。
関連付けタブの概要
関連付けタブとは
関連付けタブは、複数選択ルックアップ項目を使用する際に、データ間の関連付け情報を保存するタブです。関連付けタブの作成は必須ではなく、作成するかどうかは、複数選択ルックアップ項目の作成時に選択できます。単にデータ同士の関連付けだけを管理すればよい場合は不要ですが、関連付けに付随するさまざまな情報を管理したい場合に便利です。関連付けタブには、カスタム項目を追加することができ、関連付けに関する情報を詳細に管理できます。
上記の不動産会社の例を見てみましょう。見込み客として登録されている谷村様のデータには、複数選択ルックアップ項目を通じて、興味のある物件データが3件関連付けられていました。ここで、賃料交渉が行われ、物件ごとの交渉後の賃料が異なるとします。この場合、賃料に関する情報はどのように管理すべきでしょうか?
- 物件ごとに交渉後の賃料が異なるため、見込み客データ(谷村様)内の項目に登録しても適切に管理できません。
- 一方、それぞれの物件データの項目に登録しても、管理はうまくいきません。他の見込み客との間では、交渉後の賃料が異なる可能性もあり、物件ごとに金額が一定に定まらないためです。
このように、データの関連付けによって変わってくる情報を管理するために、関連付けタブが役立ちます。関連付けタブでは、複数選択ルックアップ項目を通じて設定された関連付けに応じてデータが作成されます。上記の例において、1件の見込み客データに3件の物件データを関連付けると、関連付けタブに3件のデータが作成されます。具体的には、見込み客「谷村」と物件「C-807」、見込み客「谷村」と物件「B-196」、見込み客「谷村」と物件「H-786」という、3つの関連付けのデータが作成されます。それぞれの関連付けデータに対して独自の情報を追加することができ、この例の場合は、交渉後の賃料を登録できます。これにより、交渉後の賃料を、見込み客ごとおよび物件ごとに管理することが可能です。
関連付けタブを作成する手順は、複数選択ルックアップ項目の詳細設定で[関連付け情報を保存するタブを作成する]チェックボックスを有効にして、関連付けタブ名を入力するだけです。カスタムタブの場合と同様に、関連付けタブでもカスタム項目を作成したり、権限や各種設定を管理したりすることが可能です。
メモ
- 複数選択ルックアップ項目は、現在のところ、データの個別作成時にのみ使用できます。インポートを通じてデータを作成する場合は、複数選択ルックアップ項目を使用できません。
- データ一覧(ビュー)の抽出条件や表示項目において、複数ルックアップ項目を使用することはできません(1つの項目に複数の値が登録されているため)。ただし、関連付けタブでは、データ一覧を作成し、その抽出条件に、データの関連付け情報を使用することは可能です。
- 関連付けタブ内のデータに対して、ブループリント、ワークフロールール、承認プロセスなどの自動処理を設定することも可能です。
関連付けタブの管理
関連付けタブを作成すると、タブのカスタマイズ、データの作成、レポートの作成を行うことができます。以下は、関連付けタブに関して可能な操作や設定の一覧です。
- 関連付けタブの関連リストの管理
- 関連付けタブのカスタマイズ
- 関連付けタブのデータに基づくレポートとダッシュボードの作成
- 関連付けタブの削除
- 関連付けタブの詳細設定
関連付けタブの関連リストの管理
複数選択ルックアップ項目を使用して、2つのタブを関連付ける際には、次の留意事項をご確認ください。
- 各タブでは、それぞれのデータの詳細ページに、他方のタブの関連リストが表示されます。
- 複数選択ルックアップ項目の設定で関連付けタブを作成するよう選択した場合、該当の関連リストに、関連付けタブの情報も表示されます。
- 関連リストの列をカスタマイズして、表示する項目を変更できます。
- また、関連リストの名前を変更することも可能です。
- 各データの編集アイコンをクリックすると、関連付けタブのデータを編集できます。
- ただし、編集アイコンではなく、データの名前(リンク)をクリックした場合は、関連付けタブではなく、各データの詳細ページが表示されます。
- 関連リストでは、新しくデータを関連付けたり、既存データの関連付けを編集したりできます。関連リスト上部の割り当て(関連付け)または編集用のリンクをクリックするだけで、各操作を実行できます。
- 関連リスト内のデータの[×]アイコンをクリックすると、関連リストからデータの関連付けを解除できます。
- 関連リストの表示/カスタマイズを行うには、関連する複数選択ルックアップ項目に関する権限が必要です。
- 関連付けタブのデータには、[メモ]以外の関連リストはありません。
関連付けタブのカスタマイズ
関連付けタブは、他のカスタムタブと同様にカスタマイズできます。新しい項目やセクションの追加、項目の詳細(プロパティ)の編集、タブ/項目の権限の設定などを実行できます。
たとえば、上記の例において、関連付けタブとして[見込み客と物件]というタブを作成したとします。このタブには、見込み客と物件ごとの[交渉後の賃料]を管理するための項目を追加できます。
関連付けタブをカスタマイズする際には、次の留意事項をご確認ください。
- タブの並べ替え:
タブのカスタマイズ画面で[タブの並べ替え]機能を利用すると、メニューバーに表示するタブの表示順を変更できます。また、[選択したタブ]の一覧からタブを削除することで、該当のタブを非表示にすることが可能です。
なお、関連付けタブに含まれているタブを非表示にすると、該当の関連付けタブも[選択したタブ]の一覧から削除されます。
これは、関連付けタブに含まれているタブが[選択したタブ]の一覧から削除されると、関連付けタブが適切に機能しなくなるためです。
逆に、一覧にタブを追加しなおすと、関連付けタブも同時に追加されます。
- 必須項目:
関連付けタブでは、関連付け対象のタブのデータを選択するための項目(ルックアップ項目)は、初期設定で必須項目に設定されています。関連付けタブのデータはこれらの項目にもとづいて作成されるため、これらの項目の必須設定を解除することはできません。
- カスタム項目数の上限:
現在のところ、1つの関連付けタブに作成可能な項目数の上限は、100件です。この上限には、カスタム項目の他、システムで使用される標準項目の件数も含まれます。
関連付けタブのデータに基づくレポートとダッシュボードの作成
関連付けタブのデータに基づいて、さまざまな種類のレポートやダッシュボードを作成できます。
上記の例において、[見込み客と物件]の関連付けタブのデータを用いて、[交渉後の賃料]の値が「8万円」を超える物件を表示したいとします。この場合、[見込み客と物件]タブのデータを使用してレポートを作成することで、目的のデータを簡単に抽出できます。
また、各見込み客の[交渉後の賃料]を、引越予定日の月ごとに確認できるレポートを表示したいとします。
この場合、レポートの基準タブとして[見込み客]タブを選択し、関連タブの一覧から[見込み客と物件]を選択します。これにより、[見込み客と物件]の関連付けタブの[交渉後の賃料]の項目の値をレポートに表示できます。なお、関連付けタブを選択した場合、関連付け対象の他方のタブも自動で選択されます(逆の場合も同様です)。
この例では、レポートの種類としては[マトリクスレポート]を選択し、縦軸に見込み客名、横軸に月、データ欄に交渉後の賃料を表示するように設定します。これにより、各見込み客の[交渉後の賃料]を、引越予定日の月ごとにまとめて表示できます。
作成したレポートを元に、グラフやダッシュボードを作成することも可能です(関連情報:レポートとダッシュボード )。
メモ
- レポートの作成時に、複数選択ルックアップ項目を通じて関連付けが行われているいずれかのタブを選択すると、タブの一覧に、関連付けタブが表示されます。
- レポート作成対象として関連付けタブを選択すると、該当の関連付けタブを通じて関連付けられているタブも、自動的に選択されます。この場合、その他のタブを選択してレポートを作成することはできません。
- 関連付けタブに基づいてレポートを作成する場合、組み合わせることができるデータは、関連付けられているタブのデータのみです。
関連付けタブの削除
関連付けタブを直接削除することはできません。また、関連付けタブが存在する限り、その関連付けタブを通じて関連付けが行われているタブを削除することもできません。該当のタブは、関連付けタブが機能するのに必要なためです。
関連付けタブを削除するには、関連付けタブのもとになった複数選択ルックアップ項目を削除する必要があります。複数選択ルックアップ項目を削除すると、該当の関連付けタブは自動的に削除されます。
完全に削除する場合は、必ず他のすべてのレイアウトや[使用していない項目]の一覧からも、該当の複数選択ルックアップ項目を削除してください。
関連付けタブを削除すると、その関連付けタブを通じて関連付けられていたタブも削除できるようになります。
関連付けタブの詳細設定
- レイアウトの編集画面において、複数選択ルックアップ項目を追加すると、その時に編集中のレイアウトに追加されます。ただし、複数のレイアウトがある場合、必要に応じて他のレイアウトにも追加するよう選択できます。
- レイアウトから複数選択ルックアップ項目を削除しても、[使用していない項目]セクションに移動したまま残ります。複数選択ルックアップ項目を完全に削除する場合は、すべてのレイアウトから該当の複数選択ルックアップ項目を削除し、さらに[使用していない項目]の一覧からも削除する必要があります。完全に削除すると、元に戻すことはできませんので十分にご注意ください。複数選択ルックアップ項目を削除すると、関連付けタブも同時に削除されます。
- 複数選択ルックアップ項目を使用して関連付けが設定されているデータを削除すると、対応する関連付けタブのデータも同時に削除され、ごみ箱に移動します。該当のデータを復元すると、すべての関連付け設定とともに、データが復元されます。
- データのエクスポート機能では、複数選択ルックアップ項目と関連付けタブは対象外です。