プロセス管理の概要
一般的な組織では、顧客に対して商品やサービスを提供し、売上を最大化するために、組織の戦略目標を設定します。その上で、戦略目標を達成できるように、部門を配置し、各部門の役割を定めます。各部門では、それぞれの責任をしっかりと果たせるようにするために、体系的な業務プロセスを作成して従う必要があります。
たとえば、ある組織の営業部門では、上司からの割引承認を得るために、レビュープロセスに従う必要があります。また、法務部門では、契約書の作成から承認までの工程で契約書管理プロセスに従い、マーケティング部門では、販促イベントの企画から実施までの工程でキャンペーン管理プロセスに従って業務を進めます。このように、組織内の各部門では、期待される成果を上げるために、各業務についての業務プロセスが確立され、実行されています。ただし、業務プロセスは、常にモニタリングし、業務量や人員の変化などのさまざまな要因をもとに改善する必要があります。
実際の業務プロセスの実行状況をよく確認してみると、どのような業務プロセスにもそれなりの課題があることが分かります。たとえば、以下のような課題です。
- 膨大な量の顧客データを処理しつつ、確実に保護しなければならないという負担
- 定型業務や手続き業務における繰り返し作業の単調さや退屈さ
- 部門間の連携不足や重複作業の解消のための共同作業や情報共有の必要性
- 継続的な人員の育成とコンプライアンス遵守の徹底の必要性(一方で、顧客対応など、本来の生産的業務に費やすことのできる時間の減少)
上記のような課題を考えると、業務プロセスはビジネスの目標達成に欠かせないものですが、よく検討、吟味した上で実施しなければ逆効果になってしまう可能性があります。非効率的な業務プロセスを実行することで、不必要な周辺業務、つまり本来の業務を行うための別の作業が発生する恐れがあります。
たとえば、タスク管理シート、工数管理シートのほか、いくつもの種類の表計算シートで業務を記録、管理している場合、生産的な業務よりも表計算シートの記入に費やされる時間が多くなります。このような業務プロセスは、効率的であるとは言えません。周辺業務に時間を浪費している間に、日が暮れてしまいます。
そのため、戦略目標と体系的な業務プロセスに加え、業務プロセスを実行に移すための効果的なソフトウェアが必要です。
業務用ソフトウェアを利用すると、業務プロセスを効率化し、時間を有効活用できます。業務プロセスの効果を高め、時間を節約できるだけでなく、業務プロセスを最適化するためのヒントを得ることもできます。
Zohoサービスには、プロセス管理上のさまざまな要件に対応できる幅広いアプリと機能が揃っています。特に、Zoho CRMのプロセス管理機能を利用すると、以下を実現できます。
- データのセキュリティ保護
- 自動処理とデータ検証
- コンプライアンス遵守
- 共同作業と人員育成の効率化
上記の実現により、業務プロセスをスムーズに進めることができるようになります。
以下では、Zoho CRMのプロセス管理機能の活用範囲や特長を説明します。
Zoho CRMのプロセス管理機能は、活用範囲に基づいて、「業務プロセス管理」と「顧客体験管理」の2つのカテゴリーに分類できます。
Zoho CRMの「業務プロセス管理」と「顧客体験管理」の比較
「業務プロセス管理」は、組織内の定型業務を標準化し、自動化して運用コストを削減するための機能が含まれます。営業への問い合わせの管理、商談の進め方、見積書の承認、採用などの各業務プロセスでは、通常、従業員による業務の進め方についての体系化された手順があります。これらの手順の徹底や改善に役立つのが、「業務プロセス管理」です。
一方、「顧客体験管理」は、カスタマージャーニーとして、顧客とのすべての接点を見える化するために利用できます。その上で、顧客体験の価値を最大化するために、各段階で顧客を導き、顧客の購入意欲を高めるための最適な方法を考えるのに役立ちます。
カスタマージャーニーの目的は、顧客によって異なります。購入である場合もあれば、疑問点に対する回答を得ることである場合もあります。どのような目的であっても、最終的には、顧客体験の価値を最大化し、顧客の満足度を向上するために、各段階で顧客に適切に対応することが重要です。それぞれの顧客の目的達成のために、組織として実行する必要のあるプロセスが、「顧客体験管理」です。
とはいえ、「業務プロセス管理」と「顧客体験管理」は、互いに重なりやすい部分もあります。たとえば、組織内の営業サイクルは、顧客体験管理の一要素として機能する可能性があります。つまり、顧客体験を最適化する上で、組織内の営業プロセスの一部に従わなくてはならない場合があります。結局のところ、「業務プロセス管理」や「顧客体験管理」を通じて目指す目標は、顧客の獲得、維持、課題解決であるためです。ただし、「業務プロセス管理」と「顧客体験管理」は本質的に異なります。「業務プロセス管理」は、組織内のプロセスや従業員の視点から設計されています。一方、「顧客体験管理」は、顧客の視点から設計されています。「顧客体験管理」では、商品やサービスの購入にとどまらず、リピート購入(維持)や顧客のファン化(熱心な推奨者への変化)を目指します。長期間にわたって顧客に満足してもらうために必要なプロセスとその改善に取り組むことができます。
例をもとに説明します。航空業界の例を考えてみましょう。空港では、すべての乗客が確実に飛行機に搭乗できるように、一連の手続きや手順が実行されています。多くの人や物が集まり、複雑に移動する空港では、このプロセスが整っていなければ、混乱が生じてしまうでしょう。このプロセスには、具体的に、チェックイン、手荷物の預け入れ、保安検査、出国審査(国際線の場合)、搭乗、手荷物の受け取りなどの手順が含まれます。このプロセスは、現在、世界共通のものです。
このプロセスの一連の流れにおいて、航空会社は、各手順で手続きを担当する人員を配置し、それぞれの役割を割り当てる必要があります。また、プロセスの実行に必要なツール、設備、知識を配備する必要もあります。これらは、「業務プロセス管理」の視点から見た場合に必要な対応です。
一方、このプロセスを、「顧客体験管理」の視点、つまり乗客側の視点から考えてみましょう。航空会社のフライトを利用した乗客満足度は、さまざまな要素によって左右されるでしょう。たとえば、航空券を予約した後の予約確認メール(またはSMS)の内容、搭乗日前のリマインダーの内容、チェックインカウンター/保安検査/搭乗ゲートでの対応、案内経路の分かりやすさと案内スタッフの有無、空港スタッフの対応の質、フライトが遅延した場合の連絡の方法やタイミング、機内サービスの質、搭乗後のアンケート(意見・要望や感想を伝えるための機会)の有無などです。
これらの要素はすべて、フライト体験に対する乗客の満足度に影響します。「顧客体験管理」の機能を利用することで、このような要素を管理して改善できます。
また、保安検査や機内での食事提供のプロセスは、「顧客体験管理」に含まれると考えることも可能です。一方で、「業務プロセス管理」の視点から考えると、組織内の担当部門においてはコンプライアンスを遵守し、機内の乗客の安全や食品の衛生を確保する必要があります。Zoho CRMの「顧客体験管理」機能を利用すると、顧客第一という考えで、最初の接点から購入、そして購入後に至るまでのすべての顧客体験を可視化できます。組織内の業務プロセスから、各接点における顧客体験価値の最大化へと焦点を移して、一貫性のある顧客体験を提供するのに役立ちます。
「業務プロセス管理」と「顧客体験管理」の利用
「業務プロセス管理」の機能を利用すると、問い合わせのエスカレーション対応や商談の承認レビューなどのさまざまな社内プロセスを自動化し、効率化できます。各プロセスで必要な手順を明確化し、徹底することが可能です。また、データを自動で検証したり、定型業務を自動化したりできます。「業務プロセス管理」の具体的な機能としては、ブループリント、承認プロセス、レビュープロセスがあります。
一方、「顧客体験管理」機能を利用すると、見込み客や顧客との一連の接点とやりとりを通じて、優れた体験と価値を提供できるよう、顧客体験を見える化し、営業活動を効率化できます。たとえば、顧客に対して、問い合わせのエスカレーション状況に関するメール通知や、購入後のフォローアップメールなどを自動送信することが可能です。顧客体験のそれぞれの段階で、顧客のニーズを満たす営業活動を行うことが可能です。「顧客体験管理」の具体的な機能としては、コマンドセンター(ジャーニー設計と経路探索)とケイデンスがあります。
「業務プロセス管理」の機能
ブループリント:組織内のさまざまな業務プロセスを管理し、徹底させることができます。業務の標準化や自動化、作業の抜け漏れやミスの防止が可能です。
- 承認プロセス、レビュープロセス:データの作成/編集内容の承認や、データの項目値のレビューに関するプロセスを効率化できます。
「顧客体験管理」の機能
- コマンドセンター
- ジャーニー設計:見込み客や顧客との一連の接点とやりとりの流れを設計し、管理できます。見込み客や顧客に対して優れた体験と価値を提供するために、対応プロセスを最適化できます。
- 経路探索:見込み客や顧客が実際にたどった経路を分析し、効果的な顧客接点を把握し、購入を阻害する要因を特定できます。また、分析結果に基づく改善により、ジャーニーを最適化できます。
- ケイデンス:メール送信、通話予約、タスク作成による定期フォローアップを自動化できます。また、最初のフォローアップにおける顧客の状態や反応に応じて、後続のフォローアップ処理を自動で実行できます。
まとめ
「業務プロセス管理」と「顧客体験管理」の相違点は、以下のとおりです。
相違点
| 業務プロセス管理
| 顧客体験管理
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1.目的
| 組織内の業務プロセスの自動化、効率化、徹底
| 顧客体験の見える化、自動化、最適化
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2.視点
| 組織内のユーザー
| 見込み客、顧客(パートナー、仕入先なども可)
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3.メリット
| 必要な手順を明確化することで、ユーザーが定められたプロセスに従って業務を実行するよう徹底できます。
データの自動検証により、ミスや抜け漏れを防止できます。
繰り返しの作業を自動化し、定型業務を効率化できます。
| 接点とやりとりの流れを見える化し、顧客体験価値を最大化できるように改善できます。
経路を分析し、効果的な顧客接点や阻害要因を特定できます。
フォローアップを自動化し、顧客対応業務を効率化することが可能です。
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4.機能
| - ブループリント
- 承認プロセス
- レビュープロセス
| - コマンドセンター(ジャーニー設計、経路探索)
- ケイデンス
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