顧客の声分析の概要
顧客の声分析では、分析のカテゴリーごとにダッシュボードやグラフが表示されます。表示された情報に基づいてデータを読み解くことで、顧客対応において改善が必要な点を把握できます。このページでは、ダッシュボードに関する以下の点を説明します。
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パート1:顧客の声分析のカテゴリーの概要
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パート2:顧客の声分析で使用する表/グラフの種類
パート1:顧客の声分析のカテゴリーの概要
顧客の声分析のダッシュボードには、5つのカテゴリーがあります。カテゴリーごとに、目的に合わせた情報が表示されます。
たとえば、「競合他社に関する分析」のカテゴリーでは、顧客がどのような競合他社について言及しているかや、競合他社に対する顧客の印象を確認できます。その後の業務における判断や対策の参考にできます。具体的には、競合他社と比較して「価格」や「顧客サービス」に関して否定的な意見を述べた顧客に特別プランを案内したり、サポート担当者に対するトレーニングを実施したりすることで、状況を改善させることができます。
これらの分析は、リアルタイムで更新されるため、最新の情報をもとに対策を検討し、実施できます。
番号
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カテゴリー名
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説明
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1
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顧客の反応(例:メールの返信)をもとに印象について分析できます。15以上のダッシュボードがあり、ひと目で顧客の主な印象
(肯定的、中立的、否定的)を知ることができます。特に、否定的な印象への対策を検討する際に参考にできます。
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2
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顧客の印象に基づいて顧客のタイプを分類できます。20以上のグラフがあり、商品/サービスに関する印象キーワードから、顧客を「推奨者」や「批判者」といったタイプに分類できます。 タイプに応じた対応を行うことで、対応の効果性を高めることができます。
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3
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顧客による競合他社に関する言及について確認し、分析できます。肯定的な見方であろうと否定的な見方であろうと、競合他社に関する顧客の言葉にはヒントがたくさんあります。どの競合他社が最も多く言及されているか、またその理由をつかむことで、商談対応や今後の販売戦略に活かすことができます。
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4
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アンケートの回答から検出された印象に関する分析情報を、複数のアンケート間で比較できます。アンケート回答でよく言及されているキーワードから印象を検出し、複数のアンケート間で比較することが可能です。その情報をもとに顧客へのアプローチを改善できます。
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5
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クロスセル/アップセルとして提案された商品/サービスについて分析できます。25以上のグラフがあり、印象キーワードやAIによる分析を通じて、どのような商品/サービスがクロスセル/アップセルにつながりやすいかを把握できます。
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パート2:顧客の声分析で使用される表/グラフの種類
顧客の声分析のダッシュボードには、多くの表/グラフが用意されています。さまざまな情報を視覚的に確認でき、戦略や対策を立てる参考にできます。顧客の声分析のカテゴリーで使用される表/グラフは次のとおりです。
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円グラフとドーナツグラフ
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折れ線グラフ
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棒グラフ(単一、集合、積み上げ)
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コホート図
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象限グラフ
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ウォーターフォールグラフ(滝グラフ)
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ゲージグラフ(ダイヤルグラフ、メーターグラフ)
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異常値の検出ダッシュボード
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ワードクラウドと表
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サンキーダイアグラム
以下では、これらのグラフの見方を例を挙げながら説明していきます。
円グラフとドーナツグラフ
円グラフは、全体の割合を100%として、その中の各要素の構成比を扇形の大きさで表したグラフです。要素には、金額や件数/回数など、さまざまなデータを利用できます。
比較するそれぞれの要素について全体に対する割合がひと目で分かるため、データの割合を比較するグラフとしてよく使用されます。どのような要素の占める割合が大きい/小さいかを視覚的に把握できます。
ドーナツグラフは円グラフの派生形です。表現内容は円グラフと同様ですが、中心に穴の開いたドーナツのような形で表されます。各要素の構成比を反映する形でドーナツが区切られて表示されます。顧客の声分析では、印象(肯定的、中立的、否定的)別の顧客の割合を表す際などに使用されます。
折れ線グラフ
折れ線グラフは、時間の経過に伴う値の変化を表したグラフです。縦軸は値の大きさを、横軸は時間を表し、一定期間ごとの値の変化がひと目で分かります。顧客の声分析では、商品やサービスに対して、肯定的、中立的、否定的な印象を持つ顧客数の増減を表す際などに使用されます。
たとえば、最初の月に肯定的な印象を持った顧客が約100人、3か月目には400人以上に増え、6か月目には再び100人にまで減少したとします。このような推移を見やすく表示できます。同様に、否定的な印象を持った顧客や中立的な印象を持った顧客数についてもグラフに表すことで、対策を立てる参考にできます。
棒グラフは、棒の高さでデータの大小を表すグラフです。比較に適したグラフで、横軸にカテゴリー/区分名、縦軸に数値を表示します(逆の場合もあります)。
棒グラフには、情報の種類や比較対象などに応じて単一、集合、積み上げという3つの種類のグラフが使用されます。顧客の声の分析における、この3種類のグラフの使用例を挙げます。
a) 単一棒グラフ
2つのアンケートのうち、どちらで肯定的な意見が多かったかを比較する際に使用します。
b) 集合棒グラフ
複数のアンケートの中で、あるキーワードに言及した顧客数の推移を、キーワードごとに比較する際に使用します。たとえば、「売上」、「広告費」、「人件費」というキーワードに言及した顧客数を毎月比較するとします。「売上」について言及した顧客数は青で、「広告費」について言及した顧客数は赤で、「人件費」について言及した顧客数は黄色でというように、キーワードごとに異なる色で表示されます。キーワードごとに顧客数が色分けされて月ごとに表示されるため、複数のキーワードについて、言及した毎月の顧客数を簡単に比較できます。
c) 積み上げ棒グラフ
1つの棒を区切る形で、複数のデータを積み上げて表示します。合計値の比較や推移を確認しながら、それぞれの棒が表すデータの内訳(カテゴリーや区分ごとの値)も把握したい場合に使用します。たとえば、「売上」について言及した顧客数の合計と、その印象の種類別の内訳を把握したいとします。この場合、「肯定的」な意見で「売上」について言及した顧客数、「中立的」な意見で「売上」について言及した顧客数、「否定的」な意見で「売上」について言及した顧客数を1つの棒グラフの中で積み上げて表示します。月ごとに表示されるため、「売上」のキーワードに言及した毎月の顧客数と、その種類別の内訳を簡単に比較できます。
コホート図は、一定期間にわたる顧客の行動の変化を理解するのに役立つ図(表)です。コホート図を使用すると、一定期間にわたって似たような行動パターンを示す顧客をグループ化し、一定期間における顧客の行動の変化や傾向について確認することができます。
たとえば、あるアンケートで300人の顧客が自社の商品に否定的な言及をしたとしても、数字だけではその原因は分かりません。この数字だけでは何に問題があるのか、次に何をすべきなのかはっきりしません。問題が、マーケティングにあるのか、営業にあるのか、サポートにあるのか、絞り込まなくては対策を立てることができません。
では、否定的な言及をしたこの300人の顧客のうち、いつ購入した顧客が多いかが分かる場合はどうでしょう。
コホート図を使用すると、購入したタイミング別に、否定的な言及をした顧客の数を確認できます。たとえば、購入したタイミングが、150人は去年、100人は2年前、50人は3年前だとします。この場合、最近購入した人ほど否定的な印象を持っている人が多いという傾向を把握できます。そこで、購入日が新しい顧客に対してほど、サポートやフォローに問題があると仮説を立てて、その改善に努めることができます。このように、Zoho CRMにおけるコホート図では、一定期間の顧客行動に関する統計データを元に、顧客定着率を上げるための改善点を知ることができます。
別の例を挙げてみます。ある期間内に顧客が言及した上位10件のキーワードについて分析するとします。そのキーワード10件に対して言及された回数が、購入後の経過期間を1か月ごとに区切って表示されます。また、言及された回数が多いほど濃く表示されます。
たとえば購入後1か月目に「返品」という否定的なキーワードの言及回数が多い場合、購入直後のタイミングで使用方法のフォローをするなど、改善のタイミングと方法の参考にすることができます。
象限グラフは、表示領域を縦と横に半分ずつ区切り、全体で4つの象限(領域)に分けたグラフです。データがどの象限に属するかによって、意味合いが変わります。
Zoho CRMにおける印象分析の象限グラフでは、横軸に購入後の経過期間、縦軸に売上が表示されます。右へ行くほど期間が長く、上に行くほど売上が多いことを示します。あわせて、顧客が使用したキーワードが印象ごとに色分けされてグラフ上の各象限に表示されます。
もう少し具体的に、「返信」というキーワードを挙げて説明します。顧客がこのキーワードを「返信が遅い」というように否定的な意味で言及していた場合、キーワードは否定的な印象を表す色で表示されます。このキーワードが、購入後の経過期間が長く、売上も多いことを示す右上の象限に位置している場合、深刻度が高いと判断できます。
逆に、「返信が早い」というように肯定的な意味で言及していた場合、キーワードは、肯定的な印象を表す色で表示されます。また、肯定的、否定的なキーワードだけでなく、「返信対応は普通」というような中立的なキーワードも4つの象限に分類されて表示されます。
重要度が高い右上の象限に、肯定的な意見と中立的な意見が多いようであれば、それほど心配はいりません。しかし、同じ「返信」でも否定的な印象が多い場合、できるだけすぐに問題点を洗い出し、改善に努める必要があります。その他の象限、たとえば売上が少なく購入して間もないことを示す左下の象限に否定的な印象のキーワードが多かった場合も、今後のためには対策が必要です。早期に対応を行うことで、売上や契約期間を伸ばすことが可能です。表示されているキーワードを参考に、問題点を改善すると良いでしょう。
ウォーターフォールグラフ(滝グラフ)は、一定期間や特定カテゴリーにおける数値の増減を、棒を積み重ねる形で表したグラフです。最終的な増減だけでなく、途中経過や集計項目別の内訳も確認可能です。たとえば、3か月間の契約者数の変化を、ウォーターフォールグラフ(滝グラフ)を使用して確認するとします。
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1か月目:50人
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3か月目:70人
この情報だけだと、1か月目の50人から3か月目の70人へと、20人の契約者が増えたように感じます。事実、20人の増加に間違いはありません。ですが、それだけでは大事な情報を見落としてしまいます。これでは、契約者数の増減の内訳や、期間途中での変化を把握できません。契約者数の推移は、実は以下のようなものかもしれません。
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1か月目の50人の契約者のうち、2か月目の最初の週に30人が契約解除しました。つまり、この時点の契約者は20人です(50-30=20)。
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その後、2か月目に20人の契約者が増えました。これで契約者は40人になりました(20+20=40)。
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このうち、3か月目に10人が契約解除しました。つまり、この時点で契約者は30人です。
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その後、3か月目に40人の契約者を獲得しました。これで契約者は70人になりました(30+40=70)。
この契約者数の増減は、通常のグラフでは分かりませんが、ウォーターフォールグラフ(滝グラフ)では一目瞭然です。契約者数がただ順調に伸びていったわけではなく、実は契約解除者が多くいたことが分かります。もしこの3か月間で誰も契約解除しなかった場合、100人を超える契約者を獲得していたことも分かります。このように、ウォーターフォールグラフ(滝グラフ)で契約者数が特に減っている時期を把握して原因を調査し、改善のための対応を取ることができます。
Zoho CRMの顧客の声分析のダッシュボードでは、ウォーターフォールグラフ(滝グラフ)を利用して顧客の動向を分析できます。推進者と批判者の増減とその時期を把握できるため、その時期に行った施策の有効性や対応の改善点を分析し、今後の改善につなげることが可能です。
ゲージグラフは、設定した範囲内における現在の値を、目盛りで表したグラフです(ダイヤルグラフやメーターグラフとも呼ばれます)。目標までの差異をひと目で把握するためのグラフとしてもよく用いられます。たとえば、100件の商談受注が目標の場合、グラフには、0から100までの目盛りが表示され、針が現在の値を示します。現在の値が75の場合、3/4まで進んでいることが直感的に把握できます。また、グラフを色分けすることで、現在の状況の良し悪しを、色を通じて一目で判断できます。
このように、目標に対する実績のような進捗状況を分かりやすく表示する手段として、ゲージグラフ(ダイヤルグラフ、メーターグラフ)はレポートやダッシュボードで頻繁に使用されます。
Zoho CRMの顧客の声分析のダッシュボードでは、アンケート、メール、問い合わせなどで全体的に肯定的な印象を示した顧客数が目盛りの針で示されます。肯定的な印象を示した顧客数が目標値に対して不足している場合に改善を試みる、といった使い方ができます。
異常値の検出とは、いつもとは違っていたり、大部分のデータとは異なっていたりするデータを検出することです。検出した異常値を通知するよう設定することで、異常が発生したときにすぐに詳細を確認することができます。たとえば、受注件数の急激な減少が発生したときに、異常値として通知し、要因の調査や対策の検討を進めることが可能です。
Zoho CRMの顧客の声分析のダッシュボードでは、競合他社について言及したり、自社について肯定的/否定的に言及したりする顧客数の増減を測定し、異常があれば通知することができます。
ワードクラウドとは、言及されたキーワードを、その頻度に比例する大きさで自動的に並べたものです。雲(クラウド)のように、キーワードが多くなるほど、縦横に並んだキーワードのまとまりも大きくなります。メール、アンケート、問い合わせなどに含まれた重要なキーワードと印象をすばやく把握できます。Zoho CRMの顧客の声分析のダッシュボードでは、各キーワードにカーソルを合わせることで、そのキーワードに言及した顧客数などの詳細を確認できます。また、キーワードをワードクラウド形式でなく、表形式で表示することもできます。表形式の場合、各キーワードの件数や順位などの詳細情報を確認することもできます。
サンキーダイアグラムとは、時間の経過における量の変化を矢印の太さで表現したグラフです。さまざまな種類のフローを視覚的に把握できます。