組織におけるサポート業務のサービス品質は、主に以下の要素に基づいて評価されます。
- 問い合わせ管理の効率性
- SLA(サービスレベル契約)の基準の達成度
- 課題解決に要する時間
- 顧客満足度
- 顧客ニーズへの適応力
これらの要素による評価は、多くの場合、問い合わせを効率的な分類と割り当てによって向上できます。つまり、問い合わせを優先度、ステータス、経路、スキル、役職などに基づいて分類し、適切なチームや担当者に割り当てることで、サポートの業務を効率化し、サポート品質を高めることが可能です。
問い合わせの効率的な分類と割り当てには、Zoho Deskの問い合わせの分類と割り当ての自動化機能が役立ちます。問い合わせの分類と割り当てを手動で行う場合、時間がかかったり人為的ミスが発生したりすることで、解決時間の増大や、サービス品質の低下につながる恐れがあります。Zoho Deskの問い合わせの分類と割り当ての自動化機能を利用すると、問い合わせの分類や割り当ての工程におけるミスや遅延を防止し、組織におけるサポート業務の効率化し、サービス品質を向上できます。この記事では、まず、問い合わせの分類方法と分類基準について説明します。その後、Zoho Deskで問い合わせを自動で分類し適切な担当者に割り当てる方法を紹介します。
問い合わせの分類方法
問い合わせの分類は、適切なチームに割り当てるために、問い合わせをタグ付けしたり分類したりする処理です。この処理は、Zoho Deskの自動化機能を使用することで、問い合わせの作成時、および、問い合わせの編集時や項目の更新時に、自動で実行するように設定できます。なお、問い合わせの分類は、自動でも手動でも行うことができます。
手動での分類:問い合わせを手動で分類するにあたっては、問い合わせの作成時に、問い合わせの分類に必要な項目がすべて入力されるようにする必要があります。たとえば、問い合わせの分類に商品名、サービスの種類、有効期限などの項目の値を使用する場合、これらの項目は、あらかじめ必須項目に設定しておく必要があります。これにより、顧客や担当者が問い合わせの作成時に必要な値を必ず入力するように制限できます。さらに、項目にツールチップ表示や入力規則を設定することで、顧客や担当者が適切な値を入力するように促すことが可能です。
自動での分類:ワークフロールールまたは割り当てルールを使用することで、問い合わせの期限/優先度/ステータスや、担当者のスキルに基づいて問い合わせを分類し、担当者に自動で割り当てることができます。項目の値を使用して条件を設定することで、関連するグループに問い合わせを自動で分類し、指定した担当者やチームに割り当てることができます。
再分類:ワークフロールールを使用すると、問い合わせの作成時だけでなく、問い合わせの更新時(項目値が更新された際)にも、条件に従って問い合わせを自動で再分類できます。たとえば、問い合わせ作成時の優先度が「低」で、その後、対応が進み優先度が「高」に変更にした場合、問い合わせを最新の優先度に基づいて自動で再分類し、対応するチームに割り当てることが可能です。
問い合わせの分類基準
問い合わせの分類の基準となる項目は、組織の要件に応じて異なります。一般的な分類基準は、以下のとおりです。
優先度に基づく分類
組織における問題の緊急性や事業への影響などから定義された優先度に基づいて、問い合わせを分類します。より効果的な問い合わせへの対応が可能になります。たとえば、サービス停止はユーザーが製品を使用できない状況のため緊急の対応が必要であり、優先度「高」の問題といえます。そのため、サービス停止に関する問い合わせは、チームにおける最優先事項として分類し、適切な担当者に割り当てる必要があります。問い合わせの優先度に基づく分類では、「問い合わせ区分」、「優先度」などの項目を使用できます。
ステータスに基づく分類
問い合わせのステータスに基づいて、問い合わせを分類します。ステータスが更新されるたびに、問い合わせが再分類されます。問い合わせ対応の遅延を防止し、状況に応じた対応が可能になります。たとえば、ステータスが「保留中」の問い合わせは対応の遅延を防ぐために、定期的に状況を確認する必要があります。特に、他のチームによる対応待ちの状況では、問い合わせが長期間「保留中」のままになってしまう場合があります。保留中のステータスの問い合わせを、期限に基づいてさらに分類すると、遅延している問い合わせを特定することが可能です。特定された遅延中の問い合わせは、問題解決に適したチームや担当者に自動で割り当てることで、迅速かつ効果的に対応を進めることができます。
経路別の分類
受信した経路に基づいて、問い合わせを分類します。経路別のチームに割り当てることで、問い合わせへの対応業務を効率化できます。1つの経路で多くの問い合わせを受信する場合は、割り当て対象のチームや担当者を細分化して設定することで、より迅速に対応できるようになります。
担当者のスキルに基づく分類
担当者のスキルを管理し、対応に最も適した担当者に問い合わせを割り当てることで、より迅速な問題解決が可能になります。たとえば、特定の言語や商品に関する専門知識を持つ担当者がいる場合などに役立ちます。設定には、組織でスキルを設定して各担当者に関連付ける他、問い合わせの詳細として、最適な担当者やチームを判断するために使用する項目を追加しておく必要があります(例:商品の種類、地域、言語、問い合わせ区分)。
役職に基づく分類
組織における役職に基づいて、問い合わせを分類します。組織内に、特定の問い合わせ内容に応じた専門の役職が存在する場合に役立ちます。たとえば、組織内にプリセールス担当者、サポート担当者、製品トレーナーといった役職がある場合、製品デモの依頼はプリセールス担当者に、製品の使い方に関する問い合わせはサポート担当者に、導入支援に関する問い合わせは製品トレーナーに割り当てると、問い合わせを効率的に管理できます。
問い合わせの割り当て方法(3通り)
問い合わせを適切な担当者とチームに割り当てるには、問い合わせの分類の処理が欠かせません。さらに、分類に基づく担当者の割り当てを、問い合わせの作成時にすぐに実行することで、担当者による対応を迅速化し、対応漏れのリスクも軽減できます。なお、問い合わせの割り当ては、チームの管理者や上位の担当者が手動で行うこともできますが、時間がかかり、人為的ミスが発生するリスクもあります。また、顧客がさまざまな経路を通じて問い合わせを送信する場合や、1日に受信する問い合わせの件数が膨大な場合には、手動で管理するのは困難です。
そのため、問い合わせの割り当てを自動化することで、割り当てにかかる時間や労力を節約し、問い合わせ対応業務を効率化できます。Zoho Deskの問い合わせの自動割り当て機能には、次の3通りの方法があります。
ワークフロールールによる割り当て
ワークフロールールを設定することで、指定した条件に一致する場合に、指定の担当者やチームに問い合わせを自動で割り当てることができます。
たとえば、請求関連の問い合わせを請求管理部門に割り当てる場合は、「問い合わせが作成された時」の実行タイミングで、「問い合わせ区分」項目の値が「請求関連」と等しいという条件に一致する場合に、問い合わせを「請求管理チーム」に自動で割り当てる処理を設定できます。
同様に、実行タイミングを「問い合わせが編集された時」や「問い合わせの項目が更新された時」として、条件を作成することも可能です。問い合わせデータの編集時や、「問い合わせ区分」項目の値が「請求関連」に更新された場合に、問い合わせを「請求管理チーム」に割り当てる処理を設定できます。
割り当てルールによる割り当て
割り当てルールを設定することで、問い合わせの作成時または問い合わせの項目の更新時に、指定の担当者やチームに問い合わせを自動で割り当てることができます。割り当てルールには、指名割り当てルールと順繰り(ラウンドロビン)ルールの2種類があります。たとえば、指名割り当てルールでは、上記のワークフロールールによる割り当てと同様に、問い合わせの「問い合わせ区分」が「請求関連」という条件に一致する場合に、問い合わせを自動で「請求管理チーム」に割り当てる処理を設定できます。順繰り(ラウンドロビン)ルールでは、「負荷に応じた割り当て」、「名前順」、「スキルに応じた割り当て」のいずれかの割り当て方式を選択可能です。「負荷に応じた割り当て」方式では、担当者が対応する問い合わせ件数の上限を設定することで、担当者間の負荷を分散できます。
Ziaによる割り当て
AIアシスタント「Zia」(ジア)に問い合わせ項目の値について学習させて、過去のデータをもとに適切な項目値を予測するように設定できます。この機能と割り当てルールやワークフロールールを組み合わせて利用すると、Ziaによって自動で予測された項目値に基づいて、問い合わせを適切な担当者に自動で割り当てることが可能です。たとえば、Ziaによって「問い合わせ区分」項目の値が予測され「請求関連」という項目値が自動入力された場合に、問い合わせを「請求管理チーム」に割り当てることが可能です。また、問い合わせの担当者をZiaによって直接予測することもできます。