印刷物からの文字データの抽出
ICR(インテリジェント文字認識)とは、画像や印刷物に記載されている文字を抽出し、デジタルデータに変換するための機能です。
ICR(インテリジェント文字認識)機能のメリット
日々の業務において、印刷物を見ながらシステムにデータを登録することは少なくありません。名刺、申し込み用紙、本人確認書類、請求書、商品ラベル、配送伝票などがその例です。担当者の実際の仕事は、データをシステムに取り込んだ後に始まります。しかし、その前の段階で印刷物の中から必要なデータを見つけ出してシステムに登録するだけでも時間と労力がかかります。
営業担当者の例を見てみましょう。展示会などの会場で見込み客と知り合い、名刺を交換したとします。担当者は、オフィスに戻って見込み客のデータを作成するにあたって、名前、電話番号、Webサイトなど、名刺に記載されているデータをシステムに入力する必要があります。
また、在庫管理業務の例を見てみましょう。商品の在庫を管理するにあたって、管理者は商品名やロット番号など、商品に関するデータを商品のパッケージに貼り付けてあるラベルから読み取り、システムに登録する必要があります。
上記の両方の例において、見込み客のフォローや在庫管理などの業務を開始するには、はじめにシステムにデータを登録する必要があります。しかし、データを取り込むのが煩雑なため、実作業を開始するまでに時間がかかってしまいます。
このような場合に、Zia画像検証のICR(インテリジェント文字認識)機能が役立ちます。ICR機能を使用することで、印刷物からデータを抽出し、Zoho CRMに登録することができます。データの作成業務を効率よく行い、生産性を高めることが可能です。
以下の画像は、ICR機能を使用して抽出した情報をもとに、Zoho CRMでデータを作成する例です。
ICR機能の基本操作
Zoho CRMでICR機能を通じてデータを作成する際の前提条件は以下のとおりです。
- データの抽出元として使用する画像に文字/テキスト形式としてのデータが含まれていない(事前に文字データ抽出用のスキャン処理が行われたものではない)
- データの抽出元として使用する画像の形式が標準的なものである
- 画像上に含まれている文字データの量が多い
Ziaの学習
ICR機能を使用して画像から文字を抽出し、Zoho CRMでデータを作成するには、事前にサンプルの画像をもとにZiaの学習を実施する必要があります。
学習を実施するには
- [設定]→[Zia]→[画像検証]→[ICR(インテリジェント文字認識)]の順に移動します。
- ICRのページで、[新しいルールを作成する]をクリックします。
- 新しいルールの作成画面で、以下の操作を行います。
- ルール名を入力します。
- 対象のタブを選択します。
- 対象のレイアウトを選択します。
- [続ける]をクリックします。

- 画像のアップロードのページで、[画像をアップロードする]をクリックします。

- 画像をアップロードするにあたって、ドラッグ&ドロップするか、ファイルを参照するか選択できます。
- ファイルを参照する場合、[参照する]をクリックしてファイルを選択し、[抽出する]をクリックします。

- Ziaの学習のページが表示されます。Ziaによって文字が識別され、バウンディングボックス(Bounding Box)と呼ばれる手法によって有効なすべての文字の範囲が枠として認識されます。
- 画像内のすべての単語がZiaによって識別されます。項目名と項目の値も対象です。
- Ziaによって識別された範囲が正確な場合、対象の枠をクリックし、レイアウトの項目名と関連付けます。
- 正確でない場合、枠の余白部分をドラッグ&ドロップして文字を覆うようにして、項目と関連付けます。
- 文字と項目の関連付けが完了した後、学習の実施ボタンをクリックします。
- [保存する]をクリックし、ルールを保存します。

メモ
- ICR機能を使用して画像上の文字をもとにZoho CRMでデータを作成するには、ICRのルールの設定(画像の設定)が必要です。
- 組織で作成できるルールの上限は、3件です。
- 対象のタブの1件のレイアウトにつき、2件の画像をアップロードできます。
- 必要に応じてルールを編集、更新、削除できます。
- 精度を高めるため、文字の範囲の枠を調整する際には、角を切り取ったり、隣の文字と枠が重複したりしないようにすることをお勧めします。
- 必要に応じて文字が見やすくなるように画像を拡大、縮小できます。
- 画像をアップロードする際には、ガイドラインを確認し、その内容に従う必要があります。

留意事項
- ICR機能では、Ziaによってテキスト、および人間の顔のみが識別されます。他の対象物は識別されません。
- 識別の対象となるのは、名刺のようなカード形式の画像のみです。一覧表、記入用紙、パンフレットなどのさまざまな形式の印刷物からテキストや手書きの文字を取り込む機能については、現在開発中です。
- 画像から取り込んだ値は、対象のタブのレイアウト内の項目にのみ関連付けることができます。サブフォームの値と関連付けることはできません。

精度について
画像上の文字からデジタルデータへの変換精度は、モデルの学習と使用状況に基づきます。事前学習用にアップロードした画像に加えて、データの作成用にアップロードした画像でもZiaの学習は行われます。
精度を高めるには、以下の点に留意してください。- Zia画像検証でICRのルールを作成している
- アップロードする画像のレイアウトが、学習用にアップロードした画像と同じレイアウトである
- 画像の形がカード形式である
上記の要件とICRのガイドラインを満たしている場合、画像上の文字をデジタルデータに変換する精度が高くなります。画像からのデータの作成
画像からデータを作成するには
- 対象のタブに移動し、データの作成ボタンの隣にあるドロップダウンをクリックします。ICRのルールを設定していない場合、以降の手順を実行できませんのでご注意ください。
- 画像からのデータの作成ページで、データを抽出する画像をドラッグ&ドロップします。または、ファイルを参照して選択します。
- [続ける]をクリックします。Ziaによってデータの抽出が開始されます。
- データの抽出と並行して、抽出されたデータの種類や内容に応じて項目との関連付けが行われます。

- 抽出の精度に応じて、Ziaによって行われた関連付けを維持したまま次に進むこともできます。ただし、画像内のすべての文字がZiaによって抽出されるため、レイアウトにない項目のデータも画像から抽出される場合があります。抽出されたデータが不要な場合は、選択を解除できます。
- [続ける]をクリックします。
- 該当の画像が要件を満たさない場合、新しい画像で試すこともできます。
既存のデータの補完/更新
画像から抽出したデータをもとにデータを作成するだけでなく、既存のデータの補完/更新を行うこともできます。
既存のデータの補完/更新を行うには
- 対象のデータの詳細ページに移動して、データを抽出する画像をクリックします。
- プレビュー画面の右上にあるボタンをクリックし、画面からのデータの補完を開始します。
- Ziaによって画像内の文字が識別されます。抽出されたデータと既存のデータを確認し、[続ける]をクリックします。
- 関連付けの完了後、データの編集ページが表示されます。補完の対象の項目が強調表示されます。
- [保存する]をクリックして、変更内容を保存します。

メモ
データの補完は、標準のデータ一覧でのみ可能です。キャンバス表示には対応していません。
利用例
保険の申し込み書類の管理
自動車保険を取り扱う会社があるとします。この会社では、顧客から保険の申し込み書類を受け取った後、申し込み書類に記載されているデータを抽出してZoho CRMにデータを登録し、顧客のデータを管理します。ICR機能を使用することで、申し込み書類からのデータの抽出と登録業務を簡単にすばやく行うことができます。
サービス利用者の登録
オンライン教育サービスを提供する会社があるとします。この会社のサービスを受けるには、利用者はWebサイトの専用フォームから登録する必要があります。フォームで運転免許証などの本人確認書類をアップロードする項目を設定し、ICR機能を使用することで、アップロードされた書類から名前などのデータを抽出することが可能です。
見込み客の登録
展示会で見込み客と名刺を交換したとします。この場合、ICR機能を使用することで、名刺に記載されている内容をもとにZoho CRMで見込み客のデータを作成できます。名刺のデータをZoho CRMに手動で入力する手間を省くことが可能です。
以上をまとめると、Zoho CRMのICR機能を使用する主なメリットは以下のとおりです。
- 見込み客や顧客のデータを手動で入力する時間を節約できる
- 業務の生産性を高めることができる
- 準備工程を効率化し、実作業に集中できる
- 印刷物と画面を交互に見る手間を省くことができる