現代のビジネス環境では、テクノロジーの発展により顧客と企業の距離が縮まり、顧客の声が企業にすぐに届くようになりました。顧客が意見を発する場が増え、企業に対する称賛や感謝、不平不満など、さまざまな声が日々多くあげられています。こうした顧客の声を聞くことで、企業は顧客への理解を深めることができます。しかし、顧客を理解するだけではビジネスを成功に導くことはできません。顧客への深い理解はもちろん大切ですが、最も重要なのは、顧客を理解した後にどのようなアクションを起こすかです。
顧客の声はさまざまな形で発せられます。たとえば、不具合に関する苦情、製品の改善を求める提案、最近購入した商品に対する問い合わせ、サービス比較情報の提供依頼、顧客対応への批判などは、すべて顧客の声としてとらえることができます。もちろん、感謝のメッセージも顧客の声のひとつです。このようなさまざまな顧客の声に対し、その内容や状況を十分に理解してそれぞれに適切なアクションを起こす必要があります。
Zoho CRMの顧客の声分析を活用すると、顧客の声を十分に理解し、その理解にもとづいて必要なアクションを起こすことが可能になります。顧客の声分析は、以下の機能に活用できます。
- 自動処理
- 詳細フィルター
顧客の声分析を自動処理に活用する
顧客の声分析は、自動処理の条件に使用できます。対象の顧客の好みや、フィードバックの内容、会話の経緯などにもとづいて処理の内容を変え、一人ひとりに適切なアクションを取ることができるようにします。また、自動処理を設定しておけば、顧客から問い合わせや依頼があったときに迅速な対応が可能になるので、全体的な顧客満足度の向上にもつながります。
たとえば、メールに関するワークフロールールを作成して、特定の印象や意図のメールを顧客から受信した場合に、指定のメールを顧客に対して自動で送信することが可能です。さらに、特定のキーワードが含まれるメールを対象として自動処理を設定することもできます。
利用例:見込み客から、商品の価格に関して否定的に言及されているメールを受信したとします。このようなメールに営業担当者がすぐに対応できなければ失注につながる可能性があります。そこで、メールのワークフロールールを作成し、実行対象のメールの条件として以下を指定します。
・ メールのキーワードに[価格]が含まれている
・ メールの印象が[否定的]である
さらに、自動で実行する処理として、割引クーポンの情報が記載されたメールの送信を設定します。これにより、商品の価格に否定的な印象を抱いた顧客に対して、クーポンメールをすぐに自動配信できます。このように、顧客の声分析にもとづくメールの自動送信により、顧客の懸念点を即座に解消し、顧客満足度を高めることが可能です。顧客のニーズに応じた迅速な対応は、受注率の向上につながります。
メールのワークフロールールを設定するには
- [設定]→[自動化]→[ワークフロールール]に移動します。
- [ルールを作成する]をクリックします。
- 新しいルールの作成画面で以下の設定を行います。
- [タブ]のドロップダウンで、[メール]を選択します。
- [ルール名]と[詳細情報]を入力します。
- [次へ]をクリックします。
- [このワークフローの実行条件]で[受信メール]を選択し、[受信済み]を選択します。
- [次へ]をクリックします。
- 条件の設定欄で、以下の手順を行います。
- [メールの項目に基づいて条件を設定しますか?]に対して、[はい]を選択します。
- 以下の条件を設定します。
- [メールのキーワード]、[次の値を含む]、[価格]
- [メール印象分析]、[次の値と等しい]、[否定的]
- [このルールの適用対象]として、[見込み客]を選択します。
- [どの見込み客にこのルールを適用しますか?]に対して、[すべての見込み客]を選択します。
- 条件の設定を完了します。

- [すぐに実行する処理]の設定欄で[メール通知]を選択します。使用するテンプレートを選択して関連付けます。
- [保存する]をクリックします。
顧客の声分析を詳細フィルターに活用する
顧客のフィードバックは、明確な言葉で表現されるものばかりではありません。顧客が選択した行動や言葉遣いもフィードバックとしてとらえることができます。
顧客の声分析で収集されるフィードバックには、以下の3種類があります。これらのフィードバックは、Zoho CRMに連携されているメール、電話、Zoho Survey、Zoho Desk、Zoho Socialのほか、営業担当者が入力したメモからも収集されます。
- 直接的なフィードバック:企業からのアンケートに顧客が答えるなど、企業の求めに応じる形で提供されるフィードバックです。Zoho Surveyによるアンケートへの回答は、これに該当します。
- 間接的なフィードバック:企業からの求めに応じる形ではなく、顧客との通常のやりとりの中で間接的に提供されるフィードバックです。このフィードバックは、Zoho Socialで管理されるソーシャルメディアでの会話、Zoho Deskでの問い合わせのやりとり、その他のメールや通話などから、Zoho CRMの連携機能を通じて収集されます。
- 推測によるフィードバック:顧客の反応や行動、購入パターン、営業担当者によってまとめられたメモなどを分析し、その中に隠されている顧客の意図を推測することによって得られるフィードバックです。顧客が企業とやりとりする中で示した主観的な感情や選択した行動の裏に、どのような理由があるのかを推測します。この推測を可能にしているのは、Zohoの人工知能(Zia)です。
上に挙げた各種のフィードバックから得られたデータは、顧客の声分析の出来事、顧客の声分析のキーワード、顧客の声分析の反応、顧客の声分析のデータ種別の4つに分けて保存されます。この4つのデータは、システム的には、顧客データが保存されているタブ(例:連絡先タブ)の関連データ(関連タブ)として扱われます。これらのデータは、システムによって自動的に分析が行われるため、ユーザーがその内容を直接追加や編集することはできません。
顧客の声分析の出来事:顧客に関して発生した出来事や、顧客に対して行った処理などが記録されます。たとえば、見込み客の変換、商談の受注、レコメンドの後の行動、通話の後の行動などが記録され、そのデータが顧客の声分析における出来事のデータとして保管されます。
顧客の声分析のキーワード:ZiaのAIを活用して、顧客とのやりとりの中から着目すべき語句が抽出されます。抽出された語句については、それぞれが示す印象や使用頻度も分析されます。この分析結果からは、全体としてどのような感情を抱いている顧客が多いのかを知ることができます。抽出された語句と、それぞれの語句に関する情報は、顧客の声分析におけるキーワードとして保管されます。
顧客の声分析の反応:メールへの返信、アンケートへの回答、電話への応答など、さまざまな形での反応が記録されます。これらの反応のデータが、感情、意図、印象の分析結果と関連付ける形で保管されます。
顧客の声分析のデータ種別:データ種別は、システムによる処理のために使用されます。内容としては、フィードバックのデータの種類が保管されます。
データ種別以外の関連データは、顧客の声分析の対象として設定したタブにおいて詳細フィルターの条件として使用できます(詳細フィルターの関連タブの欄に表示されます)。たとえば、顧客の声分析の設定でメインのタブとして[連絡先]を選択すると、[連絡先]タブの詳細フィルターで、上記の関連データを条件として使用できます。
Zoho CRMの詳細フィルターは、大量のデータを特定の条件にもとづいて絞り込むことができる便利なツールです。条件に指定できるのは、詳細フィルターが表示されているタブ内の項目値やデータ処理と、対象のタブに関連付けられているタブ内の項目値やデータ処理です。詳細については、
Zoho CRMの詳細フィルターに関するヘルプ記事をご参照ください。
顧客の声分析を使用した条件の設定
顧客の声分析のデータは、詳細フィルターの[フィルター条件:関連タブ]の欄に表示されます。この欄で、以下の表に示すように条件を設定できます。
顧客の声分析の出来事:
以下の表の[値]の欄は、出来事として指定できる顧客の行動やデータ処理を示しています。これらの出来事と、顧客の声分析の反応やキーワードの条件を組み合わせてフィルターの条件を指定します。
たとえば、解約について分析をする場合は、まず、出来事として[解約]を指定して該当する顧客を抽出します。そして、その抽出した顧客を対象に解約の原因となるような動きがなかったかを調べます。詳細フィルターを使用すると、反応の中で使われたキーワード、印象、感情などを条件に指定して解約した顧客のデータを一覧できます。このような一覧から、解約の兆候や原因を明らかにすることが可能です。他の出来事についても、同様に分析を行うことができます。
関連データ |
抽出条件 |
項目 |
項目の条件 |
カテゴリー |
値 |
顧客の声分析の出来事 |
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出来事 |
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解約 |
解約 |
見込み客の出来事([見込み客]タブに対して顧客の声分析が有効な場合に利用可能) |
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商談の出来事(顧客の声分析で商談関連のデータが保存されているタブがメインのタブとして設定されている場合に利用可能) |
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通話の指標データ |
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発生日時 |
過去の期間、未来の期間、特定の日時、次の前/後、次の間にある、次の間にない、今日、明日、明日から、昨日、昨日まで、今週、今月、先週、先月、今年、今年度、今四半期、去年、前年度、次年度、次四半期、空である、空ではない |
数値 |
日、月、年 |
顧客の声分析のキーワード:
キーワードのフィルターでは、顧客や担当者が使用した言葉と、それに関連する印象にもとづいてデータを絞り込むことができます。人が使用する言葉には、その人の好みや心の中の意図が表れることがあるので、購入や取引に関して特定の感情を抱いている顧客をまとめて抽出したいときなどにも、キーワードのデータが役立ちます。
以下の表に挙げる条件を使用して、たとえば、特定の感情を抱いている顧客はどれくらいいるのか、どのような考えを持つ顧客が多いのか、担当者はどのような言葉を使っているのか、どのような競合製品が引き合いに出されているのか、またそれを引き合いに出している顧客にはどのような特徴があるのかを分析できます。
関連データ |
抽出条件 |
項目 |
項目の条件 |
値 |
顧客の声分析のキーワード |
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キーワード
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-
次の値と等しい
-
次の値と等しくない
-
次の値を含む
-
次の値を含まない
-
次の値で始まる
-
次の値で終わる
-
空である
-
空ではない
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<キーワードを指定> |
キーワードの意図 |
-
次の値と等しい
-
次の値と等しくない
-
空である
-
空ではない
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キーワードを使用した担当者 |
<組織内の担当者を選択> |
キーワードを使用した人の種類 |
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キーワードからの印象 |
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キーワードの種類 |
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顧客の声分析の反応:反応のフィルターでは、さまざまな反応から読み取れる感情や印象を使って分析を行うことができます。たとえば、特定の感情を条件に指定して、その感情を抱いている顧客の多さを調べることができます。また、顧客が付けた評価の点数を条件にすることもできます。低い点数を付けた顧客を抽出して対応策を検討したい場合などに便利です。
関連データ |
抽出条件 |
項目 |
項目の条件 |
値 |
顧客の声分析の反応 |
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感情
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-
次の値と等しい
-
次の値と等しくない
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空である
-
空ではない
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反応の意図 |
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次の値と等しい
-
次の値と等しくない
-
空である
-
空ではない
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反応の種類 |
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印象 |
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アンケートのNPS(顧客推奨度)スコア |
次の値と等しい、次の値と等しくない、次の値より小さい、次の値以下、次の値より大きい、次の値以上、次の間にある、次の間にない、空である、空ではない |
<数値を指定> |
|
|
反応の日時 |
過去の期間、未来の期間、特定の日時、次の前/後、次の間にある、次の間にない、今日、明日、明日から、昨日、昨日まで、今週、今月、先週、先月、今年、今年度、今四半期、去年、前年度、次年度、次四半期、空である、空ではない |
数値、年、月、日 |
顧客の声分析のデータをフィルターの条件に指定するには
顧客の声分析のデータをフィルターの条件に使用できるのは、メインのタブとして設定されているタブでのみです。
- フィルターを適用する対象データのタブに移動します(例:[連絡先]タブ)。
- 画面の左側に、詳細フィルターが表示されます。
- [フィルター条件:関連タブ]の欄に移動します。
- この欄の下の方に、[顧客の声分析の出来事]、[顧客の声分析のキーワード]、[顧客の声分析の反応]のチェックボックスが表示されます。
- 希望するデータを選択し、条件を設定します。必要に応じて、各データ内の項目を追加して条件を指定することもできます。
- [フィルターを適用する]をクリックします。指定した条件に合致するデータが一覧表示されます。
- 一覧に表示されているデータの一部または全部を選択して、そのデータを対象に一括処理を実行できます。
- なお、フィルターを適用した一覧を頻繁に使用する場合は、そのフィルターの条件を保存しておくことができます。