ジャーニー(カスタマージャーニー)とは、見込み客との最初のやりとりから顧客化までの一連の流れや、既存の取引先による商品の購入までの一連の流れなど、見込み客や取引先がたどるさまざまな流れ(経路)の全体像を表します。ABM(アカウントベースドマネジメント)機能では、分類した取引先のセグメントに関するジャーニーを作成し、セグメント内の取引先がたどる経路を整理できます。組織において、さまざまな接点やチャネル(メールや通話など)を通じたやりとりと、その顧客の反応や状態に応じた対応方法を計画して、その進捗や成果を管理できます。ジャーニーの作成は、専用の設計画面からドラッグ&ドロップの簡単な操作で行えます。また、ジャーニー内でデータ連携や自動化処理を設定することもできます。セグメントに関するジャーニーを作成することで、セグメント内の取引先がたどる経路を把握し、取引先への対応業務の効率化を図ることができます。
このページでは、以下の内容について説明します。
- ジャーニーの概要と設定要素
- セグメントに関するジャーニーの作成方法
ジャーニーの設計画面では、対象のセグメント専用のジャーニーを作成できます。ジャーニーを作成し、セグメント内の取引先がたどる経路を把握することで、商品/サービス購入の阻害要因を特定し、顧客維持率を高めることが可能です。営業チームやマーケティングチームは、ジャーニーの情報をもとに、適切なタイミングで取引先に対応できます。また、ジャーニーの設計画面では、ジャーニーの分析情報を確認することも可能です。マーケティング活動の進捗状況を把握し、必要に応じて調整しながら対応を進めることができます。
ジャーニーの主な設定要素は、以下のとおりです。
状態
状態とは、ジャーニーの開始から終了までの経路における各段階(ステージ、ステップ)を表します。状態の例として、商品の販売サイトへのアクセス、カートへの商品の追加、決済処理の完了、商品の受取などが挙げられます。状態を通じて、取引先がジャーニーの経路内のどこに位置しているかを確認できます。初回連絡、フォローアップ対応、交渉などのやりとりや関わり(接点)が取引先との間で発生すると、該当の接点が識別され、対象の取引先に状態が関連付けられます。各接点において、取引先がどのように反応したかを確認することも可能です。
遷移
ジャーニー内において、取引先がある状態から別の状態に遷移すること、または遷移するための条件を表します。たとえば、オンラインストアでの商品の販売において、取引先の状態が「カートへの商品の追加」から「決済処理の完了」に遷移するには、取引先による決済手続きが必要です。この場合、「取引先による決済手続き」を遷移として設定できます。
処理
メールの送信、項目の更新、フォローアップタスクの作成など、特定の条件を満たす場合に実行する自動処理を表します。具体的には、状態が遷移した際に自動で実行する処理を設定できます。たとえば、取引先が見積書を承認した際に、商品の詳細、数量、受取人の住所を記載した通知を仕入先に送信する必要があるとします。この場合、取引先が「見積書の承認」の状態に遷移した際に、該当の通知を自動で送信するように処理を設定できます。
設定時に選択できる処理は、以下のとおりです。
- 項目の更新
- タグの追加
- タグの削除
- メール通知の送信
- タスクの作成
- データの作成
- データの変換
- Web通知の実行
- 関数の実行
実行タイミング
自動処理を実行するタイミングとして設定する、特定の条件を表します。たとえば、取引先が特定のメールを開封したときや、取引先からの問い合わせを受信したときなどに、自動処理を実行するように設定できます。実行タイミングを設定することで、さまざまな接点においてタイミングよく取引先に対応することが可能です。
接続
前後の状態に関連付けられているタブ間の関連性を表します。ジャーニー内の取引先の反応や情報を把握したい場合や、状態が遷移した取引先を特定したい場合に役立ちます。たとえば、3名の依頼者から、商品デモの依頼をメールで受け付けたとします。依頼者全員にWebセミナーへの招待を送信したところ、Webセミナーの開催後に、3名のうち1名の依頼者が商品を購入しました。この場合、商品を購入した依頼者は、[見込み客]の状態から[取引先]の状態に遷移しますが、これは、2つのタブ(見込み客と取引先)をまたいで状態が遷移します。接続(ルックアップまたは参照関係)を設定することで、経路を追跡して依頼者が次の状態に進むきっかけとなった活動や反応の内容を確認できます。
上記の例では、Webセミナーの参加後、該当の依頼者は決済手続きを完了し、次の状態(取引先)に遷移しています。このように、2つのデータの関連性を把握し、次の状態に進むきっかけになった活動や反応を確認するには、[見込み客]の状態と[取引先]の状態の間で接続(ルックアップまたは参照関係)の設定を行う必要があります。

ジャーニーと取引先を関連付けると、すべての取引先の連絡先担当者に対して、初回の処理(例:キャンペーンメールの送信)が実行されます。その後、処理に反応した取引先に対してのみ、ジャーニーが適用されます。
ジャーニーに状態を追加するには
- ジャーニーを作成するセグメントを開きます。
- 対象のセグメントのページで、[条件の管理]のドロップダウンから[ジャーニーを作成する]を選択します。

- 新しいジャーニーの作成画面が表示されます。[セグメント名]には、ジャーニーに関連付けられているセグメントの名前が自動で入力されます。[ジャーニー名]と[説明]を入力します。

- [続ける]をクリックします。
- ジャーニーの設計画面で、[状態を追加する]をクリックします。

- ジャーニーの設計画面の右側に、状態の追加画面が表示されます。[状態名]と[説明]を入力し、状態に関連付けられているタブの種類を選択して[保存する]をクリックします。

- 状態を保存すると、右側の画面に[状態の情報]と[処理]のタブが追加されます。

- [状態の情報]タブには、状態の作成時に入力した状態に関する詳細情報が表示されます。
- [処理]タブには、すぐに実行する処理、時間基準の処理、繰り返しの処理の3種類の処理が表示されます。
- すぐに実行する処理:指定した条件に取引先が一致した場合に、すぐに実行する自動処理を表します。
たとえば、取引先が特定の状態に到達したときに実行する処理を、状態に関連付けることができます。メールの送信、タグの追加、タスクの作成、Webhookの実行、タグの削除など、さまざまな処理を設定することが可能です。

- 時間基準の処理:指定した条件に取引先が一致した場合に、指定したタイミングで実行する自動処理をを表します。
たとえば、指定した条件に取引先が一致した後、特定の日時に取引先に対してマーケティングメールを自動送信するように設定できます。

- 繰り返しの処理:指定した条件に取引先が一致した場合に、定期的に繰り返し実行する自動処理を表します。

- 状態の保存後、新しく作成した状態を設計画面内の任意の位置に配置し、既存の状態と接続します。

遷移を追加するには
- 設計画面で、タブと状態、または2件の状態を接続するための[+]アイコンをクリックします。
- 遷移の追加画面で[遷移名]と[接続]を入力し、遷移の[自動処理]を選択します。

遷移を作成することで、データがある状態から別の状態に遷移するために必要な条件を設定できます。たとえば、「メールの開封」という遷移において、設定した条件や活動を満たす場合にのみ、データの状態が「料金確認」から「デモの依頼」に遷移するように設定することが可能です。
- 遷移を実行するタイミングを選択します(選択必須です)。主な例は、以下のとおりです。
- Webフォームの送信:Webフォームを通じてZoho CRMに取引先データが登録されたときに、遷移を実行します。この実行タイミングは、ジャーニーの開始、またはジャーニーの最初の遷移にのみ設定できます。
- データの作成:取引先データが作成されたときに、遷移を実行します。
- データの編集:取引先データが編集されたときに、遷移を実行します。
- APIの実行(受信処理):外部アプリケーションから遷移を実行する場合、こちらを選択することで、APIのURLをコピーできます。さらに、各APIの実行時に必要なパラメーターを設定することも可能です。文字列、数値、日付、日時、真偽値のデータの種類から、最大6件のパラメーターを選択できます。
- データの承認:取引先データが承認されたときに、毎回遷移を実行します。
- データの却下:取引先データが却下されたときに、遷移を実行します。
- 日付/日時:取引先タブの日付項目または日時項目の値に基づいて、遷移を実行します。
- 必要に応じて、遷移の条件を設定します。これにより、条件を満たす取引先のみが次の状態に遷移するように設定できます。

以下の画像のように、左側の画面の[遷移の情報]タブでは、各ステージで設定されている自動処理や条件などの遷移に関する詳細情報を確認できます。

- 状態の処理と同様に、必要に応じて遷移の処理を設定します。
- [接続]タブで、前後の状態におけるタブ間の関連性を設定します。[参照]、[ルックアップ]、[その他]のいずれかを選択します。

ジャーニーの期限を設定するには
- 左側の画面で、[このジャーニーの期限を設定する]をクリックします。
- 特定の状態に到達した後、期限が切れるまでの日数を指定します。

- [処理を追加する]をクリックし、期限が切れた際に実行する処理を追加します。組織内の他の役職のユーザーに処理を割り当てたり、同じジャーニー内の別の状態に遷移したりできます。

- [保存する]をクリックし、状態の設定内容を保存できます。
遷移を削除するには
- ジャーニーの設計画面で、削除する遷移を選択します。
- 左側の画面で、[この遷移を削除する]をクリックします。
- 以下の画像のように、確認画面が表示されます。
- 遷移を削除すると、遷移に関連付けられている処理もすべて削除されます。
- 遷移の削除後、処理を元に戻すことはできません。
状態を削除するには
- ジャーニーの設計画面で、削除する状態を選択します。
- 左側の画面で、[この状態を削除する]をクリックします。
- 以下の画像のように、確認画面が表示されます。
- 状態を削除すると、状態に関連付けられている処理と遷移もすべて削除されます。
- 状態の削除後、処理を元に戻すことはできません。
期限を削除するには
- 左側の画面の[期限]のセクションで、[-]アイコンをクリックします。
- 確認画面で、[削除する]をクリックします。
ジャーニーを公開するには
ジャーニーの設計画面の右上から、[公開する]をクリックします。
以下では、利用例をもとに、ジャーニーの作成方法について説明します。

利用例
セグメント「データの更新待ち」が作成されており、このセグメントに関するジャーニーを作成します。
前提条件
- セグメント「データの更新待ち」が作成されているとします。
- セグメント「データの更新待ち」が有効であり、ダッシュボードのセグメントの一覧に表示されているとします。
セグメントに関するジャーニーを作成するには
- 対象のセグメントのページで、[条件の管理]のドロップダウンから[ジャーニーを作成する]を選択します。

- 新しいジャーニーの作成画面が表示されます。[セグメント名]には、ジャーニーに関連付けられているセグメントの名前が自動で入力されます。[ジャーニー名]と[説明]を入力します。

- [続ける]をクリックします。
- ジャーニーの設計画面で[状態を追加する]をクリックし、ジャーニーに関連付けるタブを入力します。
- 遷移の条件を入力し、遷移に関連付ける処理を選択します。
- 同様に、状態、遷移の条件、自動処理を続けて追加します。
- 必要に応じてジャーニーを下書きとして保存し、後から作成することもできます。ジャーニーの作成の完了後、[公開する]をクリックします。

結果
セグメント「データの更新待ち」に関するジャーニーが作成されました。このジャーニーの設計画面から、このセグメントに関するジャーニーの分析情報を確認できるようになります。