組織の業界や提供するサービスにかかわらず、品質の高いサポート対応が常に求められます。顧客サポートチームの管理やビジネスの経営を行うにあたって高い顧客満足度を獲るためには、顧客からの問い合わせに迅速かつ適切に対応する必要があります。
組織やサポートチームの規模が小さい段階では、顧客からの問い合わせにすばやく対応することも難しくありません。問い合わせの対応に集中して、顧客満足度の向上を目指すことができます。
しかし、組織やサポートチームの規模が大きくなるにつれて、これまでとは異なる問い合わせの対応方法や管理方法が求められます。顧客の人数が増加することで、顧客からの問い合わせの件数も増加します。顧客からの問い合わせの連絡経路も増え、さまざまな地域の顧客に対応する必要があります。問い合わせの内容も複雑になり、さまざまなサービスや使用方法に関する回答が求められます。
このような段階において、どのように問い合わせを管理すればよいのでしょうか。
一般的な方法として、現在の対応方法や管理方法について問題点を特定して、問題を克服する手法が挙げられます。
しかし、問い合わせの対応業務が複雑化している場合、これらの問題点を特定することは簡単ではありません。組織の従業員やサポートチームの担当者が懸命に対応を進めても、サポート業務に関する全体の各種指標データを把握できていない状態では、顧客の期待に応え続けていくことはできません。
このような場合に、Zoho Deskのレポート機能が役立ちます。Zoho Deskには、顧客サポートや問い合わせに関するさまざまなレポートが用意されています。これらのレポートの各種指標データを確認することで、問い合わせの対応業務の効率化を図ることが可能です。
レポートは[分析]タブから確認できます。問い合わせ、顧客、活動、商品などのさまざまな種類のレポートを表示することが可能です。
このページでは、Zoho Deskで確認できる各種レポートの活用方法やそのメリットについて説明します。
メモ:Zoho Deskには、記述的分析に適したレポートが多く用意されています。必要に応じて、各種レポートをもとに診断的分析を行うことも可能です。
記述的レポートと診断的レポートの活用
今後の問い合わせの対応方法や管理方法に関して方針や目標を定めることは、組織の規模を拡大する上でとても重要です。そして、組織の成長を目指す上でとても重要となるのが、組織で何が起こっているか、そしてなぜ起こったかを把握することです。これらを把握するにあたって、記述的レポートと診断的レポートが役立ちます。
記述的レポートでは、組織で何が起こっているかを客観的に把握できます。
記述的レポートを通じて確認できる主な指標データは、以下のとおりです。
- 問い合わせの件数
- 一次返信時間
- 解決時間
- 一次解決率(FCR)
診断的レポートでは、なぜ起こったかを把握し、理由や原因を特定することが可能です。
診断的レポートを通じて確認できる主な指標データは、以下のとおりです。
- 再開された問い合わせの件数
- エスカレーション率
- 遅延中の問い合わせ
- 顧客満足度
記述的レポートと診断的レポートの主な例は、以下のとおりです。
| |
記述的レポート | |
|
|
|
|
|
| |
再開された問い合わせ |
エスカレーションされた問い合わせ |
|
担当者別の問い合わせ |
顧客満足度の比較 |
各種レポートによる分析の必要性
記述的レポートと診断的レポートを組み合わせて活用する必要性について、例を挙げて説明します。
顧客サポートサービスを提供する組織があるとします。この組織では、年々顧客からの問い合わせが増加し、問い合わせの対応に遅れるようになりました。そこで、顧客からの問い合わせの件数、顧客が不満に思う点、サポート担当者の業務負荷を分析し、対応業務や管理業務を改善しようとしました。しかし、「何が起こっているか」だけを把握し、「なぜ起こったか」を把握していない場合、組織が抱える問題を解決して改善につなげることは困難です。
結果として、顧客満足度に大きな影響を及ぼす可能性があります。
各種レポートの活用
各種レポートを確認するには、[分析]タブに移動します。
問い合わせのレポートでは、一定期間における各問い合わせに関する分析情報を確認できます。優先度別の問い合わせのレポートでは、優先度に応じて問い合わせを分類して確認することが可能です。優先度の高い問い合わせを抽出して担当者に割り当てることで、対応をすばやく進めることができます。
返信時間/解決時間のレポートでは、顧客の問い合わせに対して担当者が返信/解決するまでにかかった時間を確認することが可能です。これらの分析情報を確認することで、改善点や問題点を特定できます。目標の返信時間/解決時間を達成できなかった担当者を識別し、トレーニングを実施することが可能です。
顧客満足度のレポートでは、サポート担当者の対応に対する顧客の評価を把握できます。顧客満足度は、組織にとってとても重要です。顧客満足度が低い場合、顧客が期待するサポート対応の水準に達していないことを表します。顧客満足度の評価とその理由を把握することで、顧客満足度が低い原因を特定し、対処することが可能です。
担当者のパフォーマンスのレポートでは、問い合わせに対する各担当者の対応に関する分析情報を確認できます。完了した問い合わせの件数、問い合わせの返信/解決時間、顧客満足度、SLAの違反、再開した問い合わせの件数など、さまざまな指標データを確認することが可能です。一定の水準に達していない担当者を識別し、トレーニングを実施できます。
上記のように各種レポートを活用することで、顧客サポート業務の品質を高めることが可能です。
その他のレポート
対応方法や管理方法に関して方針や目標を定める上で、分析情報は欠かせません。各種レポートを通じて分析情報をもとに問題を特定し、対処することで、組織の成長につなげることができます。
上記のレポートの他にも、Zoho Deskにはさまざまなレポートが用意されています。以下では、上記以外の主なレポートについて説明します。
担当者の対応状況のレポートでは、担当者の勤務時間に関する分析情報を確認できます。担当者の勤務時間は、出退勤の時間をもとに計算されます。管理者は、問い合わせが多い時間帯に対応可能な担当者を把握することが可能です。特定の時間帯に問い合わせが集中する場合、このレポートをもとに担当者の対応状況を把握し、担当者を該当の時間帯に割り当てることができます。顧客の問い合わせに効率よく対応することが可能です。また、問い合わせの返信や解決に関する目標時間の達成にも役立ちます。
経路別の問い合わせのレポートでは、各経路から受け付けた問い合わせの件数を確認できます。管理者は、問い合わせの件数が多い経路を特定し、各経路に対する担当者の割り当てを調整することが可能です。各経路に対する担当者の割り当てを調整することで、チームの生産性を高め、問い合わせの対応をスムーズに進めることができます。
問い合わせの担当者/ステータス別の経過時間のレポートでは、各問い合わせの現在の対応状況を確認できます(例:未完了、対応中、保留中、確認待ちなど)。一定のステータスに滞留している時間が長い問い合わせがある場合、管理者は該当の問い合わせの詳細を確認し、滞留している原因を特定して対処することが可能です。
問い合わせとSLAのレポートでは、SLAの違反状況に関する分析情報を確認できます。SLAに違反している問い合わせ、違反の種類、違反してからの経過時間などの詳細を確認することが可能です。管理者は、SLAに違反する頻度や原因を分析し、問題を特定して対処できます。問い合わせの解決時間の短縮を目指すことが可能です。
担当者が提示した解決方法が適切ではなかった場合、顧客によって問い合わせが再開されることがあります。再開された問い合わせのレポートでは、顧客によって再開された問い合わせに関する分析情報を確認できます。管理者は、再開の原因となった問題や、再開された問い合わせの担当者を確認することが可能です。これらの分析情報をもとに、管理者は担当者のパフォーマンスを効率よく評価できます。必要に応じて担当者のトレーニングを実施し、問い合わせの再開率を低減させることが可能です。
上記の標準のレポートに加えて、組織の要件に合わせて独自のレポートを作成することもできます。
たとえば、自己解決度のレポートを作成し、[ナレッジベース]や[コミュニティ]などのタブからユーザー自身によって解決された問い合わせの件数を分析することが可能です。担当者やサポートチームに連絡せずに、これらのデータを参照して自己解決が行われた問い合わせの種類を分析できます。また、自己解決に貢献したデータやタブを把握することも可能です。これらの詳細を把握することで、自己解決に役立つ情報のパターンを特定し、自己解決率の向上につなげることができます。
独自のレポートの使用例
各種レポートを活用することで、組織で有益な分析情報を確認できます。しかし、各種レポートの分析情報を確認するだけでは、組織やサポートチームが抱える問題を解決できません。
各種レポートを通じて組織やサポートチームが抱える問題の原因を特定し、対処することが重要です。
SLAを例に説明します。担当者は日々多くの問い合わせに対応するために、すべての問い合わせにおいてSLAを常に意識することはできません。その結果、SLAの違反が発生し、顧客満足度の低下につながる可能性があります。この場合に、SLAの違反に関する独自のレポートを作成することで、SLAの期限にまもなく達する問い合わせを特定できます。管理者は、このレポートをもとにワークフローを設定し、SLAの期限に関して担当者に通知を送信することが可能です。
このレポートを活用することで、管理者はSLAの期限が近い問い合わせを効率よく管理できます。また、SLAに関する通知を送信し、担当者に対応を促すことが可能です。
レポートによる問題の特定と対策
各種レポートを活用することで、組織やサポートチームの抱える問題を特定できます。業務フローを見直したり、人員の配置や割り当てを変更したりすることで、特定した問題に対処することが可能です。また、記述的レポートと診断的レポートを組み合わせて活用することで、組織で何が起こっているか、なぜ起こったかを把握し、問題の特定と対処を繰り返し行うことができます。チームの生産性を高め、顧客満足度の向上につなげることが可能です。