多くの組織が顧客管理(CRM)システムを導入していますが、各組織の業務プロセスはそれぞれが持つニーズによって大きく異なります。新規顧客の受け付け、商品の配送管理、問い合わせへの対応など、各組織が実施している業務はさまざまであり、まったく同じ業務プロセスを持つ組織は二つとありません。組織の形態、業種や業界、業務の目的、対象とする顧客などの違いから、業務プロセスは大きく異なってきます。
業務プロセスがさまざまであるため、たとえ顧客情報が共通システムで一括管理されていても、そのシステムが特定の業務プロセスに合わなければ、そのプロセスでは顧客情報を個別に管理せざるを得ません。こうなると、同じ顧客情報を、マーケティング、営業、顧客サポートなどの各部門がそれぞれの業務プロセスに合わせて別々のシステムで管理する事態に陥ることもあります。
既存のシステムで対応できない業務プロセスだからといって、そのたびに他のシステムの使用を許していると、全体の進捗や業績が把握しにくくなり、改善や効率化を行うことができなくなります。また、業務プロセスごとにシステムや手法が異なると、プロセス間の連携が難しく、顧客に一貫したサービスを提供できなくなり、顧客満足度の低下を招く恐れもあります。
結果的には、次のような問題が生じます。
- 各業務プロセスを連携させて最適化することができない
- チーム間で円滑なコミュニケーションを行うことができない
- 顧客の情報が共有されず、状況を把握できない
こうした問題の解決に必要になるのが、カスタマイズ可能なシステムです。さまざまな業務プロセスに合わせてシステムをカスタマイズすることで、特殊なニーズに柔軟に対応しながら、全体の連携を図ることができます。
Zoho CRMには、幅広い業種や用途に対応するよう、いくつかのタブが標準で用意されていますが、これらは一般的な業務を想定しているため、上記のような問題の解決にはあまり有用ではありません。特殊な業務プロセスやニーズに対応しなければならない場合、進捗や業績をZoho CRMの標準タブで管理することに不便が出てくる場合もあるでしょう。また、顧客からのニーズは常に変化します。1つのシステムで多様な業務プロセスに対応し、変化するニーズに応え続けるためには、システムがカスタマイズ可能であることが重要な鍵となります。
このような考えから、Zoho CRMには、カスタムタブ(独自のタブ)を作成する機能が用意されています。カスタムタブを活用することで、各組織が自分たちのニーズに合わせてCRMシステムをカスタマイズできます。
カスタムタブの活用によって、Zoho CRMを、一般的なシステムから、自分のニーズに合った自分専用のシステムに変えることができます。特殊な業務であっても、入力項目やレイアウトをカスタマイズし、柔軟に対応することが可能です。
カスタムタブの利用が推奨される理由
同じCRMシステムを使用している組織でも、その業務内容はさまざまであり、実施しているプロセスや、抱えているニーズはそれぞれに異なります。その中には、通常のCRMシステムでは対応できないケースもあるでしょう。たとえば、製品に対する要望やカスタマイズ要件を登録したい、サービスの導入プロジェクトの進捗を管理したい、委託業者との契約状況を把握したい、といったニーズは、CRMシステムで対応する業務としてはあまり一般的ではありません。そうした特殊なニーズに対応するために利用されるのがカスタムタブです。ユーザーが、CRMシステムの中に、自分のニーズに合わせて新しいタブを作成できます。
複数チームでの協力が必要な業務では、カスタムタブへのアクセスを複数のチームに許可できます。データの更新はリアルタイムで反映されるため、どのチームも最新の状況をすぐに把握できます。また、これまでに、どのチームと、どのようなやりとりがあったのかを調べることも可能です。
さらに、必要なデータをすべて1つのカスタムタブにまとめ、分かりやすく整理して保管しておくこともできます。カスタムタブを利用してさまざまなニーズに柔軟に対応することが、売上と顧客満足度の向上につながります。
カスタムタブを利用することによって、以下のことが可能になります。
- 特殊な業務への対応が必要になった場合に、Zoho CRM内に専用のタブを設け、そこで作業を効率的に進めることができます。
- 必要となる情報に合わせてタブの項目やレイアウトを独自に定義できます。さまざまな情報を、漏らすことなく正確に収集できます。
- 関連するデータをすべてZoho CRM内のタブで一元的に管理できます。表計算シートなどのファイルや他のシステムがたくさん乱立してしまうのを回避でき、データの整理や検索が容易になります。
- 事業の拡大に伴って要件が増加したり複雑化したりしても、タブを変更することで、新しい要件に柔軟に対応できます。
カスタムタブでは、Zoho CRMの標準機能だけでは対応が難しい業務プロセスに対しても、柔軟なカスタマイズによって適切に対応することが可能です。
利用例
以下に、カスタムタブの利用例を紹介します。
1. 製品のカスタマイズ要件の管理:カスタムタブを作成して、顧客からのカスタマイズ要件を管理します。物流管理ソフトウェアを提供しているある企業は、顧客管理のためにZoho CRMを利用しています。この企業では、顧客が利用する輸送手段(トラック、鉄道、飛行機、船舶など)に応じてソフトウェアの仕様を個別に変更する必要があります。そこで、[カスタマイズ要件]というカスタムタブを作成して、顧客から伝えられた要件を効率的に管理しています。
2. ソフトウェアの導入サポート:自社が販売するソフトウェアの導入サポートに関する情報をカスタムタブで管理し、必要なサポートを効果的に提供します。あるソフトウェア開発会社では、業務の進捗管理用のソフトウェアを多くの企業に販売しています。新規に導入する企業からはサポートの依頼も多いため、依頼内容を効率的に管理する方法が必要とされます。そこで、[導入サポート]というカスタムタブを作り、サポートの依頼や対応状況などを適切に管理し、一貫したサポートを効果的に提供できるようにしました。
3. イベントの管理:イベントの計画から実施までを、参加者や日程表などの情報も含めてカスタムタブで管理します。あるイベント運営会社は、さまざまな業界の顧客を対象に、イベントの開催を支援するサービスを提供しています。この会社では、効率的な顧客関係管理のために以前からZoho CRMを利用しています。一方、イベントは年間を通じて多数開催されるため、各イベントの計画から実施までを効率的に管理する必要があります。そこで、[イベント]というカスタムタブを作成して、イベントの準備状況を確認できるようにし、日程表、参加者、主催者などの情報をまとめて管理できるようにしています。
4. 教育サービスの提供:教育サービス用に作成したカスタムタブを使って、講習内容、受講者、成績などを管理します。ある教育サービス会社は、サービスの提供に必要な情報をZoho CRMを使って管理しています。また、講師、受講者、教育プログラムなどを効率的に管理するためにカスタムタブを利用しています。カスタムタブにデータを整理して保管することで、講師の一覧や、プログラム別受講者の一覧をすぐに表示できます。さらに、プログラムの企画、編成、実施などの状況も細かく管理し、講師と受講者の双方に円滑にサービスを提供しています。
5. 保険金請求の処理:カスタムタブを利用して、契約者からの保険金請求を管理します。ある自動車保険会社では、事業の拡大に伴って増加した契約者の管理のためにZoho CRMを利用しています。契約者数が多く、保険の種類も多岐にわたるため、契約者からの保険金請求を効率的に処理する方法が必要です。そこで、[保険金請求]というカスタムタブを作成して、契約者からの保険金請求を記録し、管理しています。このタブでは、迅速な処理のために、担当者への割り当てや、手続きの進捗管理も行っています。これにより、保険金の速やかな支払いが可能になりました。
カスタムタブによって得られるメリット
- CRMシステムを自分の業務プロセスに合わせてカスタマイズできます。
- 業務プロセスを自動化し、手動作業の削減と生産性の向上を実現できます。
- 情報を分かりやすく整理して保管しておくことで、業務の意思決定に必要な情報に、早く、簡単にアクセスできます。
- 特殊な業務のニーズにも対応できるので、追加で他のシステムを購入する必要がなくなり、コストを抑えられます。
- 事業が拡大してニーズが変化しても、タブを変更することで、柔軟に対応できます。
カスタムタブを活用してCRMシステムの機能を最大限にいかすことで、事業を大きく成長させるチャンスが生まれます。カスタムタブによってCRMシステムの可能性をさらに広げましょう。