ABMで重要となるのが、取引先データの分類です。たとえば、無造作に並べられた大量の野菜の中から欲しい野菜を選別し、購入するのには手間がかかります。しかし、野菜が種類ごとに分類され、棚に並べられていれば、野菜を簡単にすばやく選別/購入することができます。同様に、取引先データを正しく分類することで、特定の取引先に集中して対応したり、営業チームとマーケティングチームが効率よく連携したりできるようになります。
取引先を多角的に分類し、セグメント(属性グループ)ごとの取引先に適した販促活動を実施するのに役立ちます。
ABMでは、[取引先]タブ(または取引先のデータが保存されているカスタムタブ)のデータをもとに、セグメントが作成されます。セグメントを作成する際には、[商談]タブ(または商談のデータが保存されているカスタムタブ)のデータが使用されます。これらのタブを変更することはできません。ユーザーは、R(最新購入日)、F(購入頻度)、M(購入金額)の3つの指標に対するスコアを設定し、指標を使用したセグメントの分類条件を指定することができます。また、セグメントごとにラベルを作成し、取引先の購入行動を表すことが可能です。 ABMでのRFMの設定は、Zoho CRMでの設定方法と同様です。取引先のセグメントを作成するにあたって、設定可能なラベルの上限は8件です。
最新購入日、購入頻度、購入金額の各項目に対して、それぞれ指標を1~5のスコアで設定します。たとえば、以下のように指定します。
最後の購入日が先月の場合、最新購入日のスコアを「2」とする。
商品の購入回数が合計5回の場合、購入頻度のスコアを「4」とする。
購入金額の合計が600万円以上の場合、購入金額のスコアを「4」とする。
設定したスコアに基づいて、対象データのRFM指標が計算されます。
最新購入日
初期設定では、各指標(最新購入日、購入頻度、購入金額)のスコアは、1~5の範囲に設定されています。スコア範囲のスライダーを任意の位置にドラッグして、範囲を設定することもできます(例:1~2、1~3、1~4)。また、スコアを手動で設定するか、システムによる自動設定を許可するかを選択することも可能です。
手動:最新購入日(R)、購入頻度(F)、購入金額(M)の各スコア(1、2、3、4、5)をシステムが把握できるように、条件を手動で設定します。
たとえば、以下のように指定します。
最後の購入日が今月であれば、[最新購入日](R)のスコアを「5」に設定する。先月~過去1年以内であれば、スコアを「4」に設定する。
購入回数が8回以上であれば、[購入頻度](F)スコアを「5」に設定する。5~7回であれば、スコアを「4」に設定する。

決済額が15万円以上であれば、[購入金額](M)スコアを「5」に設定する。8万円以上15万円未満であれば、スコアを「4」に設定する。

自動: システムにより、パーセンタイル法を用いて自動でRFMスコアが算出されます(パーセンタイル法:全体を100とし、全体の値を小さい方から見ていったときに、対象の値が何%目にあたるかを表す方法です。50が中央値で、50の場合はちょうど真ん中の値であることを表します)。スコアを1~5の範囲で設定するために、データ全体が5つ(20%ごと)に分割されます。つまり、RFMスコアの値としては、1、2、3、4、5のいずれかが設定されます。RFMスコアは、0~20、20~40、40~60、60~80、80~100の範囲に応じて、算出されます。
データは、並べ替えられて表示されます。たとえば、[最新購入日]のスコアでは、データは新しい順に表示されます。最近の購入が1週間前、最も古い購入が6か月前の場合、この2つの時間を軸として、その間の範囲が区切られます。また、[購入頻度]については、頻度の高いものから低いものへ、[購入金額]については、金額の高いものから低いものへと並べ替えられます。
セグメントのラベルの条件:セグメントの作成時に分類方法のラベルが使用されている場合、ラベルの条件を変更することはできません。対象のラベルのセグメントに関連付けられているユーザーに対して、注意メッセージが表示されます。
企業属性
企業属性に関する指標データをもとに取引先を分類できます。 取引先を分類するにあたって、業界、売上、従業員数などの企業に関するさまざまな指標データを使用することが可能です。 これらの指標データは、設定されている項目の関連付けをもとに取得されます。また、ラベルを作成する際には、これらの指標データを条件として使用できます。 条件に該当する取引先に対して、対象のラベルが関連付けられます。作成可能なラベルの上限は、5件です。なお、ラベルは、2件以上必要です。
セグメントのラベルの設定
企業属性に関する指標データに応じたラベルを作成できます。これにより、各チームの担当者が対象の取引先の分類を理解し、適切に対応することが可能です。セグメントごとに、最大5件のラベルを設定できます。ABMには、標準ラベルが用意されています。これらの標準ラベルを編集したり、削除して新しいラベルを追加したりすることができます。
ラベルを追加するには、以下の手順を実施します。
- [ラベルを追加する]をクリックします。
- ラベル名を入力し、条件を指定します。
- 必要に応じて[+]アイコンをクリックし、条件をさらに追加します。
- [かつ]、[または]を使用して、複数の条件を関連付けることができます。
- ラベルの条件を確認し、[保存する]をクリックします。
- 必要に応じて、上記の手順でラベルをさらに追加します。企業属性に関する指標データに応じたラベルは、5件まで作成できます。
関係分析
関係分析では、各連絡方法や他のZohoサービスでのやりとりをもとに、取引先を分類することができます。分類するにあたって、取引先の行動や反応に関するスコアを設定します。
たとえば、Facebookでの反応に対して5ポイント、発信通話への応答に対して6ポイント、メールの返信に対して6ポイントなどのように、スコアを設定することが可能です。これらのポイントをもとに、取引先の合計スコアが計算されます。合計スコアをもとに、取引先を分類したり、優先度を設定したりすることができます。また、取引先の合計スコアが低い場合、問題点を特定し、取引先への対応を改善することが可能です。たとえば、発信通話への応答がなかった場合、該当の取引先のスコアは低くなります。スコアが低くなった原因として、応答が見込まれる時間帯に発信していないなどの問題点が考えられます。これらの問題点に対処することで、取引先への対応を改善し、取引先の反応を促すことができます。
以下の画像のとおり、各連絡方法や他のZohoサービスでのやりとりをもとに、スコアを計算することが可能です。
ラベルの設定
ラベルを作成し、スコアに基づいて取引先を分類できます。ラベルは、5件以上追加する必要があります。
各ラベルのスコアの範囲は、0~100の間で設定可能です。スライダーを調整して、スコアの範囲を変更することもできます。
レコメンド
レコメンドによる分類方法では、Ziaによって取引先の購入、興味、要件、行動パターンなどのデータが分析され、関連度の高い商品が提案されます。また、似たような属性を持つ他の取引先の行動パターンとの比較によっても、適切な商品やサービスが提案されます。
レコメンド機能により、組織全体の売上、購入数、商談化数、クリック率、クロスセル、アップセルを大幅に向上できます。
さらに、分析内容をもとに、マーケティングの戦略や施策を最適化することが可能です。
ABMのレコメンド機能では、Ziaの自己学習を通じた取引先全体の行動パターンの理解に基づいて、適切な取引先に対して、適切な商品が、適切なタイミングで提案されます。以下では、レコメンド機能を通じて、取引先に適切な商品をおすすめする例を紹介します。
オンライン上で学習プログラムを提供する企業を例に説明します。レコメンド機能を利用することで、特定のコースに登録した受講者に対し、登録したトピックや個人の興味、同じような属性に当てはまる他の受講者の興味に基づいて、同様のコースを提案することができます。また、分析結果に基づいて、対話式の動画、課題、補助教材などの関連資料を提案し、学生の興味をさらに高めることも可能です。たとえば、学生が機械学習の基礎コースに登録した場合、ディープラーニング(深層学習)やニューラルネットワーク、回帰分析などの関連内容を扱う他のコースを提案することができます。
レコメンドの種類
ABMのレコメンドの種類は、以下のとおりです。
初回購入:購入者が初回に購入した内容に基づいて、最適な商品やサービスが提案されます。
2回目購入:購入者が2回目に購入した内容に基づいて、最適な商品やサービスが提案されます。Ziaによって、商品がどのような順序で購入されているかが識別されます。たとえば、以下の順で商品が購入されたとします。
商品1:Java初級コース
商品2:Java中級コース
商品3:Java上級コース
この場合、「Java中級コース」を最後に購入した取引先に対して、「Java上級コース」がレコメンドとして表示されます。
リピート購入:購入者が繰り返し購入した商品やサービスが識別され、これに基づいて、該当の商品やサービスの繰り返しの購入が提案されます。たとえば、食料品販売店の場合、顧客による購入頻度の高い商品が識別され、該当の商品の再購入が提案されます。商品の定期購入を促すのに役立ちます。
クロスセル:複数の商品/サービス間の関連性が識別され、これに基づいて、商品やサービスが提案されます。たとえば、オンラインストアで新しいスマートフォンを購入しようとしている顧客に対して、商品の選択後に、ケースやイヤホンなどの他の関連商品が表示されます。該当のレコメンドの種類は、スマートフォンを購入する場合、その関連商品にも興味がある可能性があるという考えに基づいています。これは、クロスセルの例であり、関連製品をおすすめすることで購入を促し、売上の増加につなげられる可能性があります。
セット商品:スマートフォン、ケース、イヤホンなど、同時に購入される商品が、Ziaによって識別されます。同時購入される頻度の高い商品は、セット商品として見なされます。セット商品の一部が選択された場合、残りの商品の一括購入が提案されます。
ラベルの設定
レコメンドの種類や購入確度のデータをもとに、取引先を分類するためのラベルを作成できます。初期設定では、[見込みあり]と[見込みなし]の2種類のラベルが用意されています。
見込みあり:強い興味を示しており、反応ややりとりの回数が多く、購入確度の高い取引先を表します。
見込みなし:あまり/全く興味を示しておらず、反応ややりとりの回数が少なく、購入確度の低い取引先を表します。
ラベルは、5件まで追加できます。なお、ラベルは2件以上必要です。
ABMのレコメンドの設定は、Zoho CRMのレコメンドの設定と同様です。
レコメンドの対象のタブ:商談、商品やサービスなど、レコメンドの対象となる情報が保存/管理されているタブです。
レコメンドの基準となるタブ:顧客やユーザーなど、レコメンド情報を伝える相手のデータが保存/管理されているタブです。たとえば、取引先に対して商品のレコメンド情報を表示したい場合、該当の取引先に関するデータがこのタブに保存されている必要があります。
取引データのタブ(関連付けタブ):レコメンドの対象のタブと、レコメンドの基準となるタブについての情報が保存/管理されている、相互の関連付けタブです。受注した取引データがZiaによって識別され、商品のレコメンド情報が適切に表示されるようにするには、このタブが必須です。
たとえば、[商談]タブは、[商品]タブと[連絡先]タブの関連付けタブとして機能します。[商談]タブには、購入された商品や購入日、特定の商品を購入した取引先の種類、取引先が購入した可能性のあるその他の商品、取引先グループが好む商品の種類など、さまざまな情報が保存されています。これらの情報をもとに、商品のレコメンド情報が表示されます。
期間:一連のプロセスにおける完了の状態を表します。たとえば、購入日、サブスクリプションの更新日、商談の完了日などが挙げられます。これらの情報をもとに購入頻度が識別され、繰り返しの購入やセット商品などのレコメンド情報が表示されます。
レコメンドの関連データを取得できるのは、ルックアップ項目または関連リストを通じて、対象のタブと相互に関連付けられているタブからのみです。該当のタブは、初期設定で指定されています。そのため、レコメンドの設定を手動で行う必要はありません。
ラベルを作成するには、以下の手順を実施します。
- レコメンドのページで、[ラベルを追加する]をクリックします。
- ラベルの設定画面で、ラベル名を入力します。
- 各種設定のセクションで、レコメンドの種類を選択します。
- レコメンドの種類に関連付ける商品やサービスを選択し、購入確度のスコアを設定します。
購入確度のスコアは、取引先が商品やサービスを購入する可能性を数値で表したものです。
- [保存する]をクリックし、ラベルの設定内容を保存します。
- 必要に応じて、ラベルを編集/削除できます。これらの操作を行うには、対象のラベルにカーソルを合わせて[編集する]または[削除する]アイコンをクリックします。
1.初回購入、2回目購入、リピート購入、クロスセルにおいて、選択できる商品は、10件までです。
2.追加できるセット商品は、2件までです。各セット商品には、2件の商品を追加できます。
3.ラベルを編集/削除できるのは、1日に2回までです。