優れた製品やサービスを提供している組織でも、業務プロセスの定義が不十分なために、顧客満足度が低かったり、もっと悪い場合は、財務上の損失を出したりすることがあります。コミュニケーションの欠落、不適切なトレーニング、プロセスのマイルストーンに対する不適切な利害関係者の決定など、その理由は、プロセスの小さな問題から大きな見落としまで、さまざまです。同様に、組織で業務プロセスが明確に定義されていても、組織の従業員がそれに従わない場合は、顧客だけでなく従業員までもが深刻な問題に直面することがあります。
例えば、「Zylker株式会社」という会社の例を見てみましょう。経営層による内部調査で、新入社員は新人研修プロセスに不満を持っていることが明らかになりました。最初の数週間は、社員証、椅子、ノートPCなどの職場の必需品を受け取っていない従業員がいたため、問題があることが判明しました。経営層による詳細な調査の結果、新入社員の新人研修に関連する様々な部署(採用担当者、人事部、管理部、システム管理部)間のコミュニケーションに食い違いがあることが判明しました。
数多くの手作業とオフライン作業が関わるこの問題を、どうすれば解決できるでしょうか?業務プロセスに関連する様々な活動と、異なる業務プロセスのマイルストーンを合理化し、記録し、追跡するのに役立つ方法を使用します。
しかしその前に、業務プロセス自体はどのように決めるのと良いのでしょうか?さらに従業員が増えた場合でも、効率的な業務プロセスを確実に維持する方法はあるのでしょうか?つまり、業務プロセスのどのような性質が真に効果性を発揮するのでしょうか?
効果的な業務プロセスは、次の要件を満たす必要があります:
- 包括的である:顧客体験サイクルのすべての側面を、徹底してカバーする必要があります。
- 明確に定義されている:様々な業務プロセスのマイルストーン、実行する活動、各活動を実行すべき利害関係者、各活動の結果に応じて実行するアクション等、すべての重要な領域を定義し、文書化する必要があります。
- 一貫して再現できる:システム内の新しいユーザーが誰でも簡単に従って実行できるように、分かりやすい文書が必要です。この文書は、業務プロセスについて新しいユーザーを教育するための時間と労力を削減できるため、非常に重要です。
業務プロセスがこれらの条件を満たせるようにするため、Zoho Deskの新機能「ブループリント」が開発されました。ブループリント機能は、業務プロセスの定義が不十分なために起こる問題を解決するのに役立ちます。
ブループリントとは
ブループリントとは、実際の業務プロセスをソフトウェアで表現したものです。ブループリントは、単純なフローチャートに似ていますが、より動的で詳細な機能です。複数のユーザーやチームが単一のブループリントの実行に関与することも、単一のユーザーやチームがブループリント全体を実行することも可能です。
各ブループリントは、3つの要素で構成されています:
- 状態: プロセス内のさまざまな段階やマイルストーンです。
- 遷移: 2つの状態間の中間の段階です。ある状態から別の状態に進むために、ユーザーが実行しなければならない活動を定義します。
- コネクター: 異なる状態と遷移との間の関係を定義します。
ブループリントを使用すると、組織内の業務プロセスを確実に明確に定義して合理化し、エラーを無くすことができます。さらに、すべての業務プロセスが、組織の事業計画と一致していることを保証できます。また、プロセスの進捗状況を簡単に把握でき、必要に応じて対処することも可能です。
ブループリントの使用例
旅行代理店のヘルプデスクで、ブループリントがどのように役立つかを見てみましょう。
「Zylker株式会社」という会社(以下、Zylker社)は、個人/団体向けの国内外のツアーを企画する旅行代理店です。ホテルの予約、パスポートの申請/更新、ビザの申請、ツアー日程の作成、高齢者や障害者への特別手配、外国為替の手配など、徹底した旅行サービスの提供を専門としています。
Zylker社のツアーパッケージの1つであるプレミアムパッケージは、カスタマイズ可能な団体向け国外ツアープランです。顧客は、手間をかけずにツアーを計画できます。顧客がプレミアムパッケージに申し込むと、まずZylker社の担当者が顧客先に伺い、参加人数、各参加者の基本的な個人情報、パスポートの有効性、興味のある場所、ツアー日数などの重要な情報を聞き取ります。
これらの情報を収集した後、Zylker社の担当者はオフィスに戻り、書類チーム、企画チーム、旅行デスクに情報を共有します。
書類チームは提出された旅程書類を確認し、パスポートの有効期限を確認して、次の手順に進みます。すべての旅行者が有効なパスポートを持っている場合、プロセスは次の段階である、ビザの処理に進みます。一部の旅行者が新しいパスポートを申請する必要がある場合や、既存のパスポートを更新する必要がある場合は、チームは次の手順として、顧客と連絡を取り、パスポートの申請/更新を申請できる日付を確認します。
パスポートの確認が完了した後、書類チームは、顧客の詳細を計画チームに渡します。プレミアムパッケージにはカスタマイズツアーが含まれているため、企画責任者が顧客先を訪問して、ツアーの好みや興味のある場所を確かめます。企画責任者は、収集した情報に基づいてツアープランを作成し、ビザ処理チームに送信します。
ビザ処理チームは、そこからプロセスを引き継いで、ツアーに必要な渡航ビザを確認します。これには、訪問する国の数、各国のビザの種類(標準ビザ、到着ビザなど)等の情報が含まれます。顧客に代わって必要なビザを申請した後、プロセスは旅行デスクに移ります。
旅行デスクは、すべての旅行書類とツアープランが整っているかどうかを確認した後、顧客に連絡して、旅行の種類、食事制限、ホテルの部屋、(複数のルートが利用可能である場合は)希望のルートなど、旅行に関する顧客の好みを把握します。すべての重要な情報を収集した後、旅行デスクはチケットを予約し、目的地の現地パートナー(顧客の到着後すぐにアテンドする担当者)に通知し、ツアーが円滑に進むように調整します。これで、あとは、顧客が荷造りして出発し、実際に休暇を楽しんで来るだけです。
Zylker社のプレミアムパッケージのように、オフラインで作業する複数の利害関係者と、顧客との接点を含む一連の業務プロセスには、ブループリントが大いに役立ちます。活用方法を見てみましょう。
プレミアムパッケージでは、次の手順を実行する必要があります:
- 旅行者情報の収集
- 旅行書類の処理
- ビザの申請
- ツアープランの作成
- 航空券とホテルの予約
- 旅行先での旅行者の受け入れ
- ツアーの実施
Zylker社のプレミアムパッケージのブループリントは、次のように設定できます:
- プロセスの様々な手順は、「状態」として文書化されます。
- Zylker社の担当者が実行する活動は、「遷移」として定義されます。
- 現在の「状態」の結果に基づいて、ある「状態」から別の「状態」への進行は、「コネクター」を使用して定義されます。
- 「遷移」を実行する様々なメンバーやチームが、「遷移」の担当者として割り当てられます。
ブループリントを実行するには
上記の例では、ブループリントは、プレミアムパッケージの申し込みを含むすべての問い合わせに対して、自動的に適用されるように設定されています。その結果、顧客がプレミアムパッケージに申し込むと、その申請はZylker社のヘルプデスクに問い合わせとして記録され、ブループリントが自動的に適用されます。個々の問い合わせの詳細ページでは、ブループリント関連のすべての処理が発生します。
問い合わせの[ステータス]項目は、ブループリントの様々な状態に関連付けられます。したがって、問い合わせの[ステータス]項目はロックされ、手動では変更できません。遷移の担当者が関連付けられている遷移を実行すると、ステータスが自動的に更新され、ブループリントに次の状態が表示されます。後続の遷移が実行されるたび、状態は変化し続けます。
このような利用例では、Zylker社のカスタマーサポート責任者は、問い合わせを確認するだけで、特定の申請の進捗状況を簡単に把握できます。同様に、業務プロセスに関わるさまざまな利害関係者が遷移の担当者として設定されているため、各遷移に責任を持つことができます。
このようにして、このブループリントをヘルプデスクに実装することで、Zylker社はすべての顧客に一貫した顧客体験を提供し、すべての従業員が自分たちが実行する活動に責任を持ち、各顧客に関する進捗状況を簡単に把握できるようになりました。