SLA(サービスレベルアグリーメント)は、質の高い顧客サービスを一貫して顧客に提供しようとする企業において重要な役割を果たします。これは、IT、金融、医療、接客、物流など、どのような業界でも同じです。各企業は、自社で提供するサービスの要件に基づいて独自にSLAを設定します。これにより、問い合わせの返信時間、解決時間、自動エスカレーションの基準を明確にした上で、顧客にサービスを提供することが可能です。
たとえば、ある銀行の顧客が自分の口座に不審な取引を見つけ、銀行に問い合わせをしたとします。この銀行では、不審な取引に関する問い合わせは、重要度を[高]に設定して取り扱うことにしています。また、SLAにおいて、重要度が[高]である問い合わせは24時間以内に解決することを定めています。銀行の担当チームはこのSLAに従って問い合わせへの対応にあたり、適切な時間内にサービスを提供できるように努めます。
SLAに定めた時間内に顧客への対応が完了しなかった場合は「SLA違反」となります。SLA違反は、まれな発生であれば個別の対処で済みますが、頻発するようであれば根本的な対策を検討する必要があります。
SLAのダッシュボードを表示すると、問い合わせに関するSLAの違反状況がひと目で分かります。このダッシュボードを活用することで、対策が必要な箇所に早く気づき、業務プロセスの改善につなげることができます。
SLAは各部門の業務プロセスに合わせて部門ごとに設定できますが、SLAのダッシュボードでは、組織全体のSLAの状況を包括的に確認できます。各部門のマネージャーは、以下に挙げる重要な指標の動向を確認することで、顧客への迅速な対応と効率的な業務運営を維持し、最終的には顧客満足度を向上させることができます。
- SLAに違反した問い合わせ:SLA違反のあった問い合わせの件数です。
- SLA違反の発生回数:SLA違反が発生した回数です。たとえば、1件の問い合わせでSLA違反が2回発生し、別の問い合わせで違反が1回発生した場合、発生回数は3回とカウントされます。
- 残り時間の平均:ここでの「残り時間」とは、SLAの期限までの残り時間です。つまりこの指標は、問い合わせへの対応が完了した時点で、SLAの期限までに残っていた時間の平均です。たとえば、ある問い合わせの解決期限が午後5時で、対応が実際に完了したのが午後2時だった場合、残り時間は3時間です。この指標を確認することで、SLAの期限より平均でどれくらい早く問題を解決できているのかを把握できます。
- 超過時間の平均:SLAの期限の超過時間の平均です。たとえば、ある問い合わせの解決期限が午後4時で、対応が実際に完了したのが午後4時30分だった場合、違反時間は30分です。この指標を見ることで、SLA違反となったケースでは平均でどれくらいの時間を超過していたのかを知ることができます。
SLAのダッシュボードには、以下の7種類の重要な情報がグラフや表で表示されます。
- SLAに違反した問い合わせ
- SLAの達成と違反(問い合わせの件数)
- SLAの達成と違反(発生回数)
- SLA別/担当者別の違反件数
- 時間別の違反件数
- ステータス別の違反件数
- 経路別の違反件数
SLAダッシュボードでのフィルターの使用
ダッシュボードに表示するデータは、以下のフィルターを使用して絞り込むことができます。
- SLA名
- 違反の種類(一次返信/返信/解決)
- チーム
- 担当者
- 時間
- 過去24時間
- 今日
- 昨日
- 過去7日間
- 過去30日間
- 今週
- 先週
- 今月
- 先月
- カスタム
SLAに違反した問い合わせ
SLAの期限内に解決されなかった問い合わせの件数が表示されます。この情報は、SLA違反に対して根本的な対策が必要かどうかの判断材料になります。状況により、リソース配分の最適化、SLAに定めている期限の見直し、チーム内の協力体制の強化、業務プロセスの改善などの対策が必要になります。
たとえば、ある顧客サポートチームで、優先度「高」の問い合わせは4時間以内に解決するとSLAに定めていたとします。このチームのマネージャーがダッシュボードを確認したところ、優先度「高」の問い合わせでSLA違反が頻繁に発生しており、解決までに平均で6時間かかっていることが分かりました。
このような場合は、優先度が「高」に設定されている問い合わせの内容を調査し、解決に時間がかかる原因を突きとめたうえで、SLAの期限を実情に合わせて変更することができます。
このグラフでは、問い合わせが寄せられた時間ごとに問い合わせの件数が表示されます。各時間の棒にカーソルを合わせると、その時間の問い合わせ件数が表示されます。
SLAの達成と違反(問い合わせの件数)
SLAの期限内に解決した問い合わせと、SLA違反となった問い合わせの件数の割合が表示されます。違反件数が多い場合は、問い合わせへの対応が効率的に行われていないと考えることができます。問い合わせの取り扱い方法を見直し、ボトルネックを解消することで、効率を高められる可能性があります。
SLAの達成と違反(発生回数)
SLAの期限が守られた回数(達成回数)と、守られなかった回数(違反回数)の割合が表示されます。また、SLAの達成/違反が発生した問い合わせの件数を確認することもできます。
各内訳(SLA別/担当者別)
1つの部門で複数のSLAを設定している場合があるので、この表では、SLAごと、または担当者ごとに件数を表示できます。表の上部にある[SLA]または[担当者]をクリックすると、SLAごと/担当者ごとに、SLAの適用回数、違反回数、達成回数が表示されます。
時間別の違反件数
SLA違反のあった問い合わせの件数が1時間単位のグラフで表示されます。このグラフからは、違反が多く発生する時間帯を知ることができます。この情報に基づいて担当者の配置を見直すことで、返信までにかかる時間を短くし、SLA違反の発生を減らすことができます。
たとえば、過去1週間のデータを確認し、SLA違反となった問い合わせが最も多かったのは午後2時台であることが分かったとします。この場合は、担当者を他のシフトからこの時間帯に移すことで違反の発生を抑えられる可能性があります。
違反が多くなっている時間帯に十分な人数の人員を配置することで、SLA違反が起こらない体制を整備できます。
ステータス別の違反件数
このグラフでは、すべての部門のSLAを対象に、どのステータスでの違反が最も多いのかを知ることができます。
ある通信サービス会社を例に考えてみましょう。顧客が通信サービスの有効化を申請すると、その顧客のステータスは[サービスの有効化待ち]になります。
この会社のSLAでは申請から24時間以内に通信サービスを有効化することを定めているので、このステータスが24時間以内に[サービス有効化済み]に更新されなければSLA違反です。
このグラフを使用すると、サービスの有効化の申請でどれくらいのSLA違反が発生しているのかが分かります。このため、必要に応じて有効化プロセスを見直すなどの対策を講じることが可能です。
経路別の違反件数
SLA違反の件数が経路別に表示されます。このグラフは、寄せられる問い合わせの量に合わせてチームや部門への割り当てを見直す際の参考になります。
顧客が使用する経路は、メールやチャットなど、一部の経路に偏ることがあります。このグラフを活用してリソース配分などを見直すことで、一次返信時のSLA違反を防止できます。