SLA(Service Level Agreement:サービスレベル契約)とは、サービスの提供者と利用者の間でのサービスのレベルや品質に関する契約を表します。一般的なSLAでは、サービスの提供者が利用者に対して提供するサービスの範囲や内容が定められています。
カスタマーサポート業務においては、SLAの基準に照らして、問い合わせの回答時間や解決時間を管理します。たとえば、ある通信会社が提供するプランにおいて、ネットワークに問題が発生した際には3時間以内に解決する旨が定められているとします。この場合、ネットワーク障害が発生したら、担当者に即座に通知し、必要に応じてエスカレーションを行うなどして、問題を3時間以内に解決する必要があります。
Zoho DeskのSLAでは、問い合わせの返信期限、解決期限、返信期限や解決期限に基づく自動エスカレーションを設定できます。これにより、顧客に対して、基準とされるレベルや品質を満たすサービスを提供することが可能です。このページでは、SLAの詳細や作成方法について説明します。
SLAのメリット
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顧客の期待値を満たすサービスの提供:顧客によって期待されているレベルや品質のサービスを提供することが可能です。
- 優先度に応じた対応:SLAにより、問題の発生時やサポートの依頼時に優先度に応じた対応が可能です。
- サポートのレベルや品質の明確化:SLAにより、返信や解決までの時間や解決プロセスを定義しておくことによって、効率的に問題を解決できます。
- 顧客満足度の向上:SLAでは、問題が発生した際の対応にかかる解決時間や対応方法を詳細に設定できます。問題解決までの時間に関する基準を定めることで、顧客満足度の向上に役立ちます。
- 各種指標データの分析:問題の対応時間や解決時間などのSLAの各種指標データを分析することができます。実際の対応に問題がないかどうかを見直したり、提供するサービスの品質を高めたりするのに役立ちます。
SLAとOLA
Zoho DeskのSLA機能は、顧客向けの取り決めであるSLAだけでなく、組織内部に向けた取り決めであるOLA(Operational Level Agreement:運用レベル契約)の準拠にも役立ちます。なお、SLAとOLAの具体的な違いは以下のとおりです。
- SLA(サービスレベル契約):サービスの提供者が利用者に対して提供するサービスのレベルや品質を定めたものです。問題発生時の対応内容や、解決時間の基準などについても定めることができます。
- OLA(運用レベル契約):SLAを実現するために、サービスのレベルや品質に関して組織の内部で定めたものです。規模の大きい組織などで、複数の部門やチームが連携してサービスを提供する場合に役立ちます。組織内での対応範囲や、問題発生時の組織内での対応手順について定めることができます。
SLM(サービスレベル管理)に関するヒント
サービスの提供者と利用者の間でSLAを定めた後、サービスの提供者はSLM(サービスレベル管理)を通じて、SLAの内容に準拠する必要があります。SLM(サービスレベル管理)とは、SLAで定めたサービスのレベルや品質を満たすための一連のプロセスを表します。SLM(サービスレベル管理)を実施するにあたって、重要となる内容は以下のとおりです。
- サービスの提供者が利用者に対して提供するサービスの内容、レベルや品質の明確な設定
- 実際に提供されるサービスのレベルや品質の定期的な確認
- サービスのレベルや品質の継続的な改善
- SLAで定められているサービスのレベルの管理
- サービスのレベルや品質に関する顧客とのやりとり
SLAの設定例
サービスの問題発生時における解決時間の設定
品質保証期間中に問題が発生した場合、開発チームとサービスチームはその重要度に応じて対応を迅速に行う必要があります。SLAでは、各チームが問題に対応し、解決するまでの時間の期限を設定することができます。また、特定の条件を満たす問題は、専任のチームや担当者にエスカレーションするように設定することで、解決時間の短縮を目指すことが可能です。問題発生時の対応をすばやく行い、顧客満足度を高めるのに役立ちます。
問題発生時における対応の効率化
データセンターのサーバーで問題が発生した場合、該当のデータセンターの利用者に多大な影響を及ぼします。そのため、組織の担当者は、該当の利用者に対してサービスの一時利用停止に関するお知らせや予定復旧時間についてすばやく連絡し、復旧対応を進める必要があります。SLAでは、このような重大な問題が発生した際の解決期限を設定することができます。また、関連するチームや部署の担当者間への通知方法を設定することが可能です。共同して問題に対応することで、解決時間を短縮することができます。たとえば、優先度の最も高い問題が発生した場合、顧客や関係者に即座に通知を送信し、2時間以内の問題解決を目指すようにSLAを設定することが可能です。
これにより、問題が発生した際の顧客への対応をすばやく円滑に進めることができます。
在庫管理業務の効率化
在庫管理業務に関してSLAを設定することで、在庫の発注から納品までにかかる時間を短縮し、在庫管理業務をより円滑に行うことができます。たとえば、ソフトウェア/ハードウェアの販売、ライセンスのアップグレード、機器の配置などに関する課題の解決期限を設定することで、組織の商品やサービスの納品業務や在庫管理業務を円滑に行うことが可能です。在庫の確認や追加などの業務をタイミングよく進めることができます。
また、管理者は、SLAで定められている期限が守られているかどうか定期的に確認することができます。SLAの内容を定期的に確認することで、問題や課題を特定し、対処することが可能です。
顧客の分類による優先度の設定
顧客が購入したライセンス数、顧客の業界、対象サービスなどの内容に応じて顧客をカテゴリーに分類し、優先度を設定することで、顧客の対応を円滑に行うことができます。
たとえば、分類した顧客の各カテゴリーに対して、返信時間や解決時間などのSLAを設定することができます。顧客からの問い合わせに対して優先度を設定するのに役立ちます。また、SLAを定期的に確認し、返信時間や解決時間の期限が守られていない場合は、問題や課題を特定し、対処することが可能です。
Zoho DeskのSLAの概要
Zoho Deskでは、組織の要件に合わせてSLAを単体で作成したり、サポートプランや契約に関連付けたりすることができます。重要度や優先度などのさまざまな条件に基づいて、問い合わせの返信時間や解決時間に関するSLAを作成することが可能です。問い合わせがZoho Deskに取り込まれ、SLAの条件を満たすと、該当の問い合わせに対してSLAが自動で適用されます。小規模の組織やスタートアップ企業の場合、SLAを単体で作成することで、提供するサービスのレベルや品質を保持することが可能です。
中規模以上の組織では、提供するサービスの種類が多く、顧客の種類や要件も異なる可能性があります。そのため、SLAをサポートプランや契約に関連付けることをお勧めします。これにより、さまざまな顧客の要件に合わせてSLAを設定することが可能です。
SLAの作成
管理者権限を持つユーザーは、SLAを作成できます。SLAを作成する前に、以下の点をご確認ください。
留意事項
- SLAの作成は、部門ごとに行います。
- SLAは[問い合わせ]タブに対してのみ適用できます。
- SLAを単体で作成し、すべての取引先に適用したり、適用する取引先を指定したりできます。
- サポートプランを通じて、SLAを契約に関連付けることができます。
- 問い合わせが作成/更新されると、次の順番で自動化処理が適用されます:指名割り当てルール→ワークフロールール→SLA→順繰り(ラウンドロビン)ルール(名前→負荷→スキル)→ブループリント→通知
SLAの作成手順
SLAの作成は、部門ごとに行います。そのため、SLAを作成するにあたって、SLAを適用する部門を選択する必要があります。
SLAを適用するタイミングの選択
設定した条件が満たされると、問い合わせに対してSLAが適用されます。SLAを適用できるタイミングとして、以下のいずれかを選択できます。
- 問い合わせの作成:各経路での問い合わせが作成されたとき
- 問い合わせの更新:問い合わせのいずれかの項目が編集/更新されたとき
- 項目の更新:優先度、ステータス、カテゴリーなどの特定の項目の値が更新されたとき
- 顧客の返信:顧客による問い合わせへの返信が行われたとき
- 担当者の返信:担当者による問い合わせへの返信が行われたとき
- 非公開のスレッド:問い合わせに関するメールをやりとり(送信/受信)したとき
- コメント:問い合わせにコメントが追加されたとき(公開、非公開、顧客のコメントを含む)
メモ:
SLAの適用タイミングを複数選択した場合、問い合わせに関して該当する処理が行われる度に、返信時間や解決時間がリセットされます。そのため、SLAの適用タイミングとしては、必要なタイミングのみを選択する必要があります。
たとえば、適用タイミングとして[問い合わせの更新]を選択すると、問い合わせに関するさまざまな更新が行われるたびにSLAが適用されるため、SLAの適用頻度は高くなる可能性があります。したがって、この適用タイミングを選択すると、SLAが頻繁にリセットされます。一方、適用タイミングとして[項目の更新]を選択し、対象の項目として[優先度]を指定すると、問い合わせの優先度が更新された際にのみSLAが適用されます。
したがって、この適用タイミングを選択すると、優先度の更新時にのみSLAがリセットされます。必要なタイミングのみにSLAをリセットすることで、返信時間と解決時間を適切に管理できます。
取引先の関連付け
組織によっては、取引先に関連付けられている問い合わせに対してのみSLAを適用したい場合があります。
たとえば、見込み客と取引先の両方からの問い合わせに対応する場合、取引先に関連付けられている問い合わせにSLAを適用することで、既存顧客である取引先への対応を優先的に行うことができます。これにより、既存顧客の問題解決までの時間を短縮し、顧客満足度の向上につなげることが可能です。見込み客からの問い合わせに関しては、他の専用の部門やチームに割り当てることで、組織全体の業務の効率化を図ることができます。担当者の業務量を調整したり、SLAで定めた各種期限に準拠したりするのにも役立ちます。
問い合わせの作成日時からの返信時間/解決時間の計算
この設定を有効にすると、返信時間や解決時間を計算するにあたって、問い合わせの更新日時の代わりに問い合わせの作成日時が使用されます。
SLAの対象の設定
SLAの対象に関して、以下の内容を設定します。
- 返信時間:SLAの適用後、担当者が問い合わせに返信するまでの時間です。たとえば、顧客からの返信を受信してから1時間以内に編集するように設定することができます。[最初の返信のみ]の設定を有効にすると、返信時間の目標を最初の返信に対してのみ適用することが可能です。その場合、その後の返信には返信時間の目標は適用されません。[最初の返信のみ]の設定を無効にすると、すべての返信に対してこの返信時間の目標が適用されます。
- 解決時間:問い合わせが解決、完了するまでの時間です。日、時間、分のいずれかの単位で目標値を設定できます。
メモ:
- 問い合わせは、[ステータスの種類]が[完了]である(緑のドットアイコンが表示されている)ステータスに設定された場合にのみ、完了したものとして処理されます。[ステータスの種類]が[未完了]である(黒のドットアイコンが表示されている)ステータスに設定した場合は、完了状態を示唆するようなステータス名であったとしても、完了として処理されません。
- すでにSLAが適用されている問い合わせに対して、SLAが新たに適用されると、それまでの返信時間と解決時間はリセットされます。SLAが新たに適用されてから最初に送信された返信が、一次返信として識別され、一次返信までの時間が計測されます。
- 営業時間:対応時間として、カレンダー時間または営業時間のいずれかを設定できます。営業時間を選択することで、営業時間外や休日を除いた日時が対応時間として指定されます。SLAの適用やエスカレーションについても、選択した営業時間をもとに行われます。
- エスカレーション:SLAの返信時間や解決時間の期限に近づいた場合や、期限が過ぎた場合に、他の担当者に問い合わせをエスカレーションできます。エスカレーションを行うにあたって、通知先の担当者と通知のタイミングを選択します。解決時間の一定時間前、期限ちょうど、解決時間の一定時間後のいずれかをタイミングとして選択できます。
- 担当者への通知のテンプレート:SLAに違反した際に、選択したユーザーに対してメール通知を送信します。通知を送信するにあたって、いずれかのエスカレーションのメールテンプレートを選択できます。
- エスカレーション時の処理:問い合わせをエスカレーションするにあたって、問い合わせを他の担当者に割り当てなおしたり、問い合わせの優先度を変更したりできます。こちらの項目から、エスカレーション後の担当者と問い合わせの優先度を選択します。
メモ:
- SLAに追加可能な対象の上限は、10件です。
- 返信のエスカレーションは2段階まで、解決のエスカレーションは4段階まで設定できます。エスカレーション時の処理は、エスカレーションの段階ごとに設定可能です。
SLAを作成するには
- [設定]()→[自動化]→[エスカレーション(SLA)]の順に移動します。
- [新しいSLA]をクリックします。
- SLAの作成画面で、SLAの名前と説明を入力します。
- SLAの実行タイミングの選択欄で、いずれかの内容を選択します(例:問い合わせの作成、顧客からの返信、問い合わせの更新など)。
- [非公開スレッド]を選択した場合、返信の種類(受信または送信)を選択します。
- [コメント]を選択した場合、[担当者のコメント](公開または非公開)または[顧客のコメント]を選択できます(複数選択可)。
- 必要に応じて、[取引先に関連付けられている場合にのみ実行する]を有効にします。
- 必要に応じて、[問い合わせの作成日時から返信時間と解決時間を計算する]を有効にします。
SLAの実行タイミングで[問い合わせの作成]を選択した場合、この内容は表示されません。
- [次へ]をクリックします。
- [対象を追加する]をクリックします。
- 対象の条件の選択欄で、項目と値を選択し、条件を設定します。
[+]アイコンをクリックすると、条件をさらに追加できます。
- 返信期限と解決期限の設定欄で、返信期限と解決期限を入力し、単位(日、時間、分)を入力します。
- 営業時間の欄で、ドロップダウンからカレンダー時間または営業時間を選択します。
ドロップダウンには、Zoho Deskアカウントで作成されているすべての営業時間が表示されます。
- 必要に応じて[返信のエスカレーション]を有効にします。1段階目(レベル1)のエスカレーションの欄で、以下の操作を実施します。
- エスカレーションのタイミングを選択します。期限前、期限通り、期限後のいずれかを選択することができます。
- エスカレーション先の欄でエスカレーション先の対象の種別(担当者、役職、チーム、顧客など)を選択し、エスカレーション先の対象を選択します。複数のユーザーを選択することができます。
- 担当者への通知テンプレートを選択します。
- エスカレーション時の処理の欄で、エスカレーション後の問い合わせの新しい担当者を選択します。
- 問い合わせの優先度を選択します。高、中、低のいずれかを選択できます。
- 必要に応じて[2段階目のエスカレーションを追加する]をクリックし、上記の手順12の内容を実施します。
- 必要に応じて[解決のエスカレーション]を有効にし、上記の手順12の内容を実施します。
- [保存する]をクリックします。
SLAと取引先の関連付け
SLAと取引先を関連付けるにあたって、以下の2種類の方法があります。
- SLAと取引先を直接関連付ける
- サポートプランや契約にSLAを関連付けて、SLAと取引先を間接的に関連付ける(契約が作成され、契約が取引先に関連付けられたとします。また、契約にサポートプランが関連付けられ、このサポートプランにはSLAが設定されているとします。この場合、サポートプランを通じて、SLAが該当の取引先に間接的に関連付けられます)
SLAと取引先を関連付けるには
- 画面上部のメニューで[顧客]タブをクリックします。
- 左下の[取引先]タブをクリックします。
- 取引先の一覧ページで、対象の取引先を選択して詳細を表示します。
- 取引先の詳細ページで、画面左側のウィジェットから(SLAと契約)アイコンをクリックします。
- SLAと契約の情報欄で、[新しいSLA]をクリックします。
- ドロップダウンから対象のSLAを選択します。
- [保存する]をクリックします。
SLAの無効化/削除
必要に応じてSLAを無効にしたり、削除したりできます。
SLAを無効化/削除するには
- SLAの一覧ページで、対象のSLAにカーソルを合わせて、(無効にする)アイコンまたは(削除する)アイコンをクリックします。
- 確認画面で、[OK]をクリックします。
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