Zoho CRMのコマンドセンター機能のバージョンが新しくなりました。コマンドセンターの操作画面が更新され、新しい機能が追加されました。
コマンドセンターの設定をより簡単に行うことが可能です。
今回のバージョンの更新に伴い、以前のバージョン1.0に関する設定、ジャーニー、履歴などのデータをバージョン2.0に移行する必要があります。
このページでは、コマンドセンターの各バージョンの違いや、バージョン2.0への移行方法について説明します。
各バージョンの違い
コマンドセンターとは、ビジネスにおけるカスタマージャーニーを管理するためのツールです。コマンドセンターには、経路探索とジャーニー設計の2種類の機能が用意されています。
ジャーニー設計では、FSM(Finite State Machine)と呼ばれる計算モデルをもとに、顧客体験に関する業務プロセスを「ジャーニー」として設定、管理できます。ジャーニー設計の設定要素は、以下のとおりです。
- ステージ:営業プロセスの各ステージを表します
- シグナル:顧客に関する反応のデータを受け取ります
- 遷移:段階間の顧客の移動を表します
- 処理:顧客の反応に対する、組織側の行動です
- 識別情報:プロセスを通じてジャーニーを適用する顧客を識別するための情報です
経路探索とは、実際のデータをもとに、顧客が商品やサービスを購入するまでにたどるさまざまな流れを把握できます。経路探索の設定要素は、以下のとおりです。
- ステージ:経路において顧客がたどる各段階(ステージ)を表します
- シグナル:顧客に関する反応のデータを受け取ります
- 接点:顧客と組織との間で発生したやりとりや関わりを表します
- 識別情報:顧客を識別し、ジャーニーに関連付けるための情報です
バージョンの主な変更内容
用語の変更
この内容は、経路探索とジャーニー設計の両方に適用されます
- 利便性の向上のため、状態(States)はステージ(Stages)に名前が変更されました。
状態(STATES)→ステージ(STAGES)
設定要素の変更
この内容は、経路探索とジャーニー設計の両方に適用されます
- データをより正確に取得するため、実行条件(Triggers)はシグナル(Signals)に変更されました。シグナルとは、さまざまな経路を通じて行われた最新情報を受信、管理するための機能です。
実行条件(TRIGGERS)→シグナル(SIGNALS)
関連情報:シグナルの概要(英語) - APIの実行条件は廃止され、カスタムシグナルに変更されます。
API→カスタムシグナル(CUSTOM SIGNALS)
バージョンの更新に伴う注意事項
⚠ コマンドセンターのバージョン1.0のAPIの実行条件は、2026年3月31日(木曜)に廃止される予定です。
- 接点または遷移においてAPIの実行条件が設定されている場合、コマンドセンター内で同等のカスタムシグナルに変更されます。
- Zohoサービス側では、組織で使用されているAPIの内容を表示するための権限がありません。そのため、Zohoサービス側で外部連携のデータ元のAPIに関する情報を変更することはできません。ジャーニーに関する情報を引き続き取得するには、バージョン1.0が廃止される前にこれらの情報を変更することをお勧めします。
- バージョンの移行後、参照用に変更内容の一覧を画面右上から確認できます。リンクをコピーして、外部連携のデータ元に新しい情報を貼り付けてください。

メモ:APIの実行条件は、バージョン1.0の廃止日まで有効です。実行条件に対してカスタムシグナルと古いAPIの両方が関連付けられている場合、APIとシグナルの両方を通じて遷移が行われます。
ジャーニー設計の各タブの変更内容
ジャーニー設計のバージョン1.0
- 各ステージにおいてタブを設定する必要があります。
たとえば、見込み客のデータに関して、見込み客から送信されたフォームのデータと、Webサイトの訪問者に関して取得した見込み客のデータを取得したいとします。対象のデータは両方とも見込み客であり、「見込み客」と呼ばれるステージで管理、保存します。しかし、バージョン1.0では各ステージにおいてタブを設定する必要があるため、見込み客から送信されたフォームのデータと、Webサイトの訪問者に関して取得した見込み客のデータの2件分のステージを作成する必要があります。
そのため、「見込み客」のステージを複数作成しなけらばならず、データが重複してしまう場合がありました。
バージョン2.0では、この問題は解決されています。
ステージを作成するにあたって、タブとの関連付けを設定する必要はありません。標準タブやカスタムタブなどの複数のデータ元から取得したデータを、1件のステージで一元管理できます。上記の例の場合、見込み客から送信されたフォームのデータと、Webサイトの訪問者に関して取得した見込み客のデータを1件の「見込み客」のステージで管理することが可能です。これにより、データを正確に取得し、把握することが可能です。
ステージとタブとの関連付けの解消により、データの条件(遷移の条件)の設定も更新されました。
- バージョン1.0の遷移の条件には、データ元のステージで設定されているタブの項目を指定する必要があります。

- バージョン2.0では、適用対象のすべてのステージで使用されているタブのデータを指定できます。
たとえば、データ元のタブである[見込み客]タブや、遷移先のタブである[商談]タブの項目のデータを条件として指定することが可能です。また、カスタムタブのデータを指定することもできます。

処理の設定の変更
- バージョン1.0では、状態と遷移の両方で処理を設定する必要がありました。

- バージョン2.0では、ステージでのみ処理を設定します。遷移の実行後、ステージが適用されたデータに対して処理が実行されます。処理の種類には、即時、予約、繰り返しの3種類があります。

適用されたステージでの処理
- タブとステージとの関連付けの解消に伴い、処理の関連付けも解消されました。これにより、適用されたステージにおいてデータに対して実行する処理を設定できます。
たとえば、対象製品の作成が完了した際に顧客にメールを送信したいとします。対象製品の作成の完了のステージは、工場での作成待ちの後のステージです。バージョン1.0では、別のステージ(例:顧客の更新)を作成し、さらに別のステージ(例:連絡先の作成)に接続する必要がありました。 - バージョン2.0では、このステージ間の処理の設定をよりスムーズに行うことが可能です。

特定の遷移を経由したデータに対する処理
特定の遷移を経由してステージに適用されたデータに関して、処理グループを作成できます。たとえば、パートナーを通じて取得した見込み客に対して、通常とは異なるテンプレートを使用したメッセージを送信したいとします。この場合、処理グループを作成することで、独自のメッセージを送信することが可能です。
バージョンの主な違いは以上です。バージョン2.0には、新しい機能がさらに追加される予定です。
すべての機能については、以下のスライドをご参照ください。
バージョン2.0への移行
移行の対象となる内容
- 経路探索とジャーニー設計の既存の設定(関連付け、設定、変数、期限、シグナルなど)
- [コマンドセンター]タブで取得、保存されたジャーニーに関するデータ
- ジャーニーに保存されている履歴情報、メモ
バージョンの移行については、データの安全性を確保した上で行われます。バージョンを移行するにあたって、以下の内容をご確認ください。
- この移行の実行者は、組織の管理者です。なお、移行処理はすべて自動で行われます。
データの移行時には、Zohoサービス側で安全性の確認が行われます。 移行時にエラーが発生した場合、移行処理はすぐに停止され、設定内容や履歴情報は保存されます。ジャーニーのデータは、引き続き取得されます。
移行処理は柔軟に行うことができます。都合のよい日時を選択して実行することが可能です。
移行期限:移行処理は、2026年1月末までに行うことをお勧めします。期限を経過すると、すべての組織においてバージョン2.0に自動で移行されます。 -
バージョン1.0から2.0への移行により、データに対するジャーニーの適用は解除されることはありません。また、他のプロセスや自動化処理が無効になることもありません。
ユーザーのステータス別での移行手続き
✅新規ユーザーの場合、バージョン2.0が適用されます。バージョンを移行する必要はありません。
✅既存のユーザーのうち、コマンドセンター機能を使用していないユーザーについては、バージョンの更新が順次自動で行われます。ユーザー側での操作は不要です。
⚠️既存のユーザーのうち、コマンドセンター機能(ジャーニー設計、経路探索のいずれかまたは両方)を使用しているユーザーについては、操作画面上に移行の手続きに関する案内が表示されます。
コマンドセンターの設定を有効にしたり、編集したりしている場合や、新しく作成している場合、バージョンの移行手続きを行う必要があります。
メモ
- 移行処理は、既存の設定のみが対象です。新しいバージョンの公開後に作成された設定は、バージョン2.0の操作画面内に作成されます。
- 移行処理の開始後、一時停止したり、元に戻したりすることはできません。
以下では、移行処理の手続きについて説明します。
移行前のテスト
移行処理によって、既存の要素が新しいものに変更されます。移行処理を行う前に、プレビューを通じてバージョン2.0の外観を確認できます。
設定のプレビュー表示
- 経路探索の設定をプレビュー表示すると、設定の概要が表示されます。このページから、目標や編集にアクセスできます。

- 同様に、ジャーニー設計の設定をプレビュー表示すると、ジャーニーの設定の概要が表示されます。状態や遷移をクリックし、処理やシグナルがバージョン2.0でどのように動作するか確認できます。また、目標や識別情報などの新しい要素を確認することも可能です。

メモ:プレビューは、表示専用画面です。内容を編集するには、バージョン2.0に移行する必要があります。
設定のプレビューを表示するには
- [設定]→[コマンドセンター]の順に移動します。
- ジャーニー設計または経路探索の画面を開き、プレビュー表示する設定にカーソルを合わせて、バージョン2.0でのプレビュー表示の操作ボタンをクリックします。
- バージョン2.0の操作画面のプレビューが表示されます。
- プレビュー表示の画面から移行処理を開始するには、[編集する]→[はい、移行します]の順にクリックします。

移行の種類
移行の種類には、一括移行と個別移行の2種類があります。
一括移行では、一度にすべての設定内容をバージョン2.0に移行できます。ジャーニー設計と経路探索の両方の設定を一度に移行することが可能です。また、各機能を個別に移行することもできます。
両方の機能の設定を一括して移行するには
- [設定]→[コマンドセンター]の順に移動します。
ジャーニー設計と経路探索の両方が移行可能です。 - [バージョン2.0に移行する]をクリックして、[すべてのジャーニー設計と経路探索を移行する]を選択します。
- バージョン2.0の移行確認ページで、[はい、移行します]をクリックします。
すべてのジャーニーを移行するには
- [設定]→[コマンドセンター]→[ジャーニー設計]の順に移動します。
- [バージョン2.0に移行する]をクリックして、[ジャーニーのみ移行する]を選択します。
- すべてのジャーニーの移行の確認画面で、[はい、移行します]をクリックします。
すべての経路探索を移行するには
- [設定]→[コマンドセンター]→[経路探索]の順に移動します。
- [バージョン2.0に移行する]をクリックして、[経路探索のみ移行する]を選択します。
- すべてのジャーニーの移行の確認画面で、[はい、移行します]をクリックします。
個別移行では、コマンドセンターの設定を個別に移行できます。
設定を個別に移行するには
- 対象の設定にカーソルを合わせて、[バージョン2.0に移行する]をクリックします。
- 確認画面で、以下の操作を実行します。
- [プレビュー]をクリックして、移行する前に内容を確認します。
[バージョン2.0に移行する]をクリックして、設定の移行を開始します。

移行に関する表示アイコンの一覧
- (移行中):移行処理が行われていることを表します。
- APIエラー:APIの実行条件が設定で使用されていることを表します。APIの実行条件は、2026年3月31日(木曜)に廃止される予定です。
- 2.0バッジ:バージョン2.0への移行が完了していることを表します。
- [バージョン2.0に移行する](ボタンがグレーで表示されて操作できない):エラーがあるため新しいバージョンに移行できないことを表します。エラーがある場合、Zohoサービス側に通知が送信され、解決処理が行われます。
バージョン2.0でのジャーニーの表示
新しいバージョンへの移行対象者の場合、[コマンドセンター]タブで[コマンドセンター2.0を表示する]ボタンをクリックすると、取得したジャーニーのデータが新しいバージョンの画面で表示されます。
