マーケティングメールを配信するのに、一度に多くのメールを配信したいと思うのは当然です。ですが、そのためには配信元として信頼を得る必要があります。配信したメールは、相手のメールサービス側に到達すると、受信トレイにメールが振り分けられる前に配信元ドメインの信頼性が検証されます。では、検証はどのように行われるのでしょうか? メールサービスは、さまざまな手段で、配信元ドメインの信頼性を検証します。スコア(例:0~100)を割り当てるものもあれば、ランク(例:低、中、高)を付けるものもあります。メールサービスが配信元ドメインの信頼性を検証する際に、参考にする情報は次の通りです:
- メールの配信数
- メールの件名と内容との整合性
- 迷惑メールへの分類数
- 迷惑メールトラップにかかる割合
- 不達(バウンス)率
- 苦情数
- 登録解除率
マーケティングメールを配信する前に、信頼できる配信元ドメインを使用しているかどうかご確認ください。信頼できるドメインでない場合、到達率の悪化につながります。メールの配信数を増やしたり、新しい配信元ドメインを使用する場合、まず配信元ドメインの信頼性を高める(ウォームアップする)ことをお勧めします。配信元ドメインのウォームアップを行うことによって、配信したメールが迷惑メールとみなされてしまう可能性を下げ、到達率を高めることができます。ただし一朝一夕ではできません。数週間はかかります。
配信元ドメインをウォームアップする方法について見ていきましょう。
ウォームアップの必要条件
- SPF、DKIM、DMARCなどの方法によるメール認証の設定が適切に行われていること。配信元ドメインの認証に関しては、こちらをクリックしてご確認ください。
- 配信元ドメインの「WHOIS」データ(ドメインの登録者情報)を認証していること。
- Gmail受信者にメールが配信されない場合の原因とその解決方法に関する詳細を確認するため、GoogleのPostmaster Toolsを設定していること。
- 配信リストの整理(クリーニング)が完了していること。配信リストで反応が良い受信者を抽出して配信リストに追加するか、新しい配信リストを作成してそれらの受信者を追加しておくこと。この配信リストを、ウォームアップ中に使用します。
配信元ドメインをウォームアップする方法
必要条件を満たしたら、配信元ドメインのウォームアップを開始できます。ウォームアップとは、メールの配信数を徐々に増やしながらドメインの信頼性を高める手法です。受信者がメールを開封したり、クリックしたりすると、配信元ドメインの評価が上がります。ウォームアップが終了するまでに、配信元ドメインはメールサービスの信頼を得て、計画通りのメール件数を配信できるようになります。
たとえば、ウォームアップでのメール配信数は以下のように増やしていくとよいでしょう。
日数 | メール配信数 |
1 | 50 |
2 | 50 |
3 | 100 |
4 | 100 |
5 | 200 |
6 | 200 |
7 | 400 |
8 | 400 |
9 | 800 |
10 | 800 |
11 | 1,600 |
12 | 1,600 |
13 | 3,200 |
14 | 3,200 |
15 | 6,400 |
16 | 6,400 |
17 | 12,800 |
18 | 12,800 |
19 | 25,600 |
20 | 25,600 |
21 | 51,200 |
まず、いつもメールを開封してリンクをクリックしてくれるような、反応が良い受信者にメールを配信することから始めましょう。反応が良い受信者に配信したメールは、開封/クリックされる確率が高いため、配信元ドメインの評価が上がります。ウォームアップの最初の2週間は、反応が良い受信者にのみメールを配信することをお勧めします。3週間目から、徐々にその他の受信者にもメールを配信していきましょう。
到達率の問題の回避
ウォームアップ中に、到達率の低下などの問題が発生した場合、メール配信を一時停止し、問題を特定、解決しなければなりません。メール配信の中断を避けるためにも、発生する可能性のある問題とその解決方法について押さえておきましょう。
メールが迷惑メールとして分類される
メールサービスまたは受信者がメールを迷惑メールとして分類すると、配信元のドメインの評価が下がります。配信メールが迷惑メールとして分類されないようにする方法は、以下のとおりです。
件名の設定
- 「」や!などの強調記号を多用しない
- 句読点を多用しない
- 「現金」「ボーナス」「安い」といった言葉を使用しない
- 「$」「#」「@」といった特殊文字を使用しない
- 偽装した「Re:」(返信)や、「Fwd:」(転送)を使用しない
到達率を上げるため、最適なメールの件名を作成する方法については、
こちらをクリックしてご確認ください。
迷惑メールとして判断される言い回しの回避
メールサービスの受信サーバーでは、受信トレイにメールを振り分ける前に、メールの内容の適切性を判定しています。メールの内容に迷惑メールと思われる言い回しが含まれている場合、受信サーバーはメールを拒否するか、迷惑メールフォルダーに振り分けます。メールでの使用を避けるべき、迷惑メールとして判断される言い回しは次の通りです:
- 儲かる
- 無料
- 今だけ!
- 非公開
- アダルト系のワード
迷惑メールとして判断されやすいURLの回避
迷惑メールとして判断されやすいURLとしては、短縮URL、ブラックリストに登録されているURL、ブラックリストに登録されたページへのリンクが含まれているURLなどがあります。 そのため、配信メールの内容には以上のようなURLが含まれないようにする必要があります。メールの内容にURLを記載する場合、受信者にメールを配信する前に、テストアカウントに配信することをお勧めします。リンクが無効でないことと、リンク先ページのコンテンツを確認することで、迷惑メールに振り分けられるような設定になっていないかどうかを事前に確認し、必要な修正対応を行うことができます。
配信元ドメインの信頼性が低下している
配信メールが迷惑メールに分類されたり、件名が不適切であったり、ブラックリストに登録されたURLを含む内容があったりした場合、配信元ドメインの信頼性が低下します。信頼性が低下してしまった配信元のドメインをメール配信に使用した場合、配信メールは、メールサービスの受信サーバーで拒否されてしまいます。そのため、このような状況では、ウォームアップを一時停止して、問題を特定する必要があります。問題を解決してからウォームアップを再開してください。
一時的なメール配信の停止
受信者側のメールサーバーが、一定期間、メールの配信を拒否することがあります。停止の原因となった問題が解決されるまで、メールは配信されません。たとえば、ウォームアップ中に、配信メールの件数を急激に増やした場合、受信サーバーは配信元からのメールを拒否するようになります。このような事態を回避するため、メールの配信数を減らす必要があります。その直後の配信数は、拒否された時の配信数の半分以下にしてください。メールの配信数は、徐々に増やすことが大切です。
一時停止後のウォームアップ再開での配信失敗
ウォームアップ中に、1日あたり25,000通のメールを配信しているとします。また、配信結果をみると、到達率に問題があったため、メールの配信をいったん停止したとします。何週間後かにウォームアップを再開するにあたり、25,000通のメールを同じように配信すると、配信が適切に行われない可能性があります。受信者側のメールサービスは、配信されたメールの配信元ドメインに関するメールの配信履歴や評価を確認します。一定期間、配信に使用されていなかったドメインから急に25,000通ものメールを配信すると、メールサービスによって迷惑メールだと疑われます。そのため、メールの配信が拒否される場合があります。メール配信が拒否されないよう、1日あたり50通程度のメール配信から始めて、徐々に配信数を増やしてください。
配信元ドメインのウォームアップにおけるその他の注意点やポイント
ウォームアップ中は、ウォームアップ終了後に多くのメールを配信するときにも増して、配信したマーケティングメールの開封率、クリック率、不達率を注視する必要があります。配信元ドメインがブラックリストに登録されていないかを常に確認しましょう。配信元ドメインをウォームアップ中にメールを配信する場合、受信者に合わせた配信時間を設定したり、配信内容に関連性の高い適切な登録者にのみ配信するなど、慎重にメールを配信してください。過去に反応が良かったマーケティングメールを参考にして、メールを作成して配信するのも良いでしょう。件名を決めるのにあたっては、
A/Bテストを使用してその結果を反映させるのも有効です。
配信元ドメインのウォームアップは、2~3日で完了するものではありません。数週間はかかるものです。配信元ドメインのウォームアップにおける一番の近道は、適切な内容と配信方法で、配信数を徐々に増やすことです。ある程度時間がかかることを想定して、準備と対応を進めましょう。